【そのとき投資】ファイザーワクチンは100%、スタートアップの箱で運ばれた
【そのとき投資】ファイザーワクチンは100%このスタートアップのボックスで運ばれた…新鮮食品通販からコールドチェーンパッケージ会社にピボット、s.lab asia
TBT(ベンチャーキャピタル)チーム長のハン・ソユン氏
@そのとき投資(私はその時、投資することを決めました)では、現役の投資家がなぜこのスタートアップに投資したのかを共有します。
断熱ボックス素材を持ってきて生鮮品のクロスボーダー(通販+逆通販)をするという創業者のユニークさと実行力に投資。
s.lab asia(以下、s.lab)初投資時、私はTBT合流前だった。当時投資を決定したイ・ラム代表は「Cafe eseo(イソ)で会ったイ・スア代表は真空断熱材を持ってきており、クロスボーダーをするのにこの素材で断熱ボックスを作りサバや果物を運ぶ生鮮品のクロスボーダーをしたいと語った。
イ・スア代表は、世界中の物品が世界中の消費者に自由に出会えるようにクロスボーダー物流システムを構築するという大きなビジョンを抱き、スタートアップらしく非常に実質的に東南アジアのいくつかの国から輸出入通関、配送を自ら直接行い現場のペインポイントを見つけ出した。宅配ボックスサイズの冷凍・冷蔵物流をするために世界中数多くの各国のライセンスを獲得し、断熱ボックスのための特許を出すなど、革新の想像力と優れた実行力を持つ創業者であるため、投資を決定した」と話した。
私はTBTに合流の後、GripCompany(キム・ハンナ代表)のセッティングと投資を誘致し、スタートアップがどれほど切実に投資誘致をするのか、彼らが必要とするものが何なのかを学び、本格的にVC投資に対する感覚を身につけていた。この時、他の多くのポートフォリオ会社の事後管理をどのようにするかを悩んでいた中で、s.labが迅速な資金調達が必要な状況であることを認知するようになり、TBT初の後続投資を検討するようになった。
s.lab asiaの初投資当時は合流前だったため、相対的に会社への理解度が不足しており、すぐに当時投資報告書を見て事業を理解し、投資以降会社にどのような変化があったかを内部資料を通じて検討した。TBTは、s.lab初の機関投資家として、初期の小さな会社であったs.labの後続投資の検討のための実査を直接行った。
私はいつも会社の経営陣に最も近い位置で、財務情報を提供する仕事をしてきたので、初期会社の実査は自ら直接行っていた。実査を行う過程は、事業だけでなく、会社内部の経営状態まで理解し、経営者としての創業者を見ることができる過程でもある。
既存の書類と資料を通じて会っていたs.labとの初対面は非常に印象深かった。システムを再び作り直さなければならない部分が多く見られ、売上は投資以降、むしろ減少し、資金は不足していた。この時までは、私の役割の本質は実査であり、実査自体だけで見れば、私の厳格な基準上、経営管理部分の不足から事業と管理のバランスが不足していると判断したため、後続投資を躊躇しており、イ・ラム代表に、この現状を報告した。
初投資時からs.labの事業に大きな興味を持ち、投資検討に多くの手助けをし、出会って以降イ・スア代表のメンター役を務めていたGripのキム・ハンナ代表から電話がきた。イ・スア代表に会い、現在不足している管理の部分をGripCompanyをセッティングして管理したのと同じように手助けしてあげてほしいと話した。
何よりも会社の資金状況上、なんとしても資金調達を早いうちに行われなければならなかったため、唯一の機関投資家であるTBTの後続投資決定はs.labの立場としては死活問題だった。夕方、イ・スア代表に会ってかなり長い時間話をしたが、本人が見逃し、不足していた管理上の盲点について素早く受け入れるところに可能性を感じ、心が動いた。実査する過程で必ず確認しなければならない事実関係を、手加減なくイ・スア代表と疎通を行いながら、整理していき、補完すべき部分を一緒に点検した。
この時本当に印象的だったのがイ・スア代表の眼差しだった。長い話を交わす中でs.labのビジョンと自分の計画について語る際、とてもキラキラとした幸せな眼差しで話しており、当時、こんな瞳が実際にあるんだ、と驚く体験をしながら、惚れ込むように聞いていた。
しかし、TBT投資後に売り上げが減少したのは別問題だった。この質問に対してイ・スア代表は選択と集中を行った、と説得した。限定的な資源をより競争力のある事業に注力するために、悩んだ末、売上のボリュームは大きく増やすことができるが、収益性の悪い流通部分を縮小し、s.labだけのコールドチェーンを作るため物流にのみ集中することにしたという。
それはs.labの未来のための正しい選択であり、結局その選択が現在のs.labを作った「GreenieBox(グリニーボックス)」を誕生させることになった。
コールドチェーンという非常に大きな市場で、非常に小さな会社であるs.labはすでに市場に進出する事業的、技術的資源を持っていた。GreenieBoxはすぐに市場に出て革新を見せる余地が十分にあり、TBT設立以来初の後続投資を行った。また、TBTの投資にとどまらず、イ・ラム代表は投資家を探して紹介し、私はTBTオフィスの一部を使うことができるように内部的に議論して、s.labが追加投資誘致を無事に終えることができるように投資家たちへの実査対応を直接出向いて進めた。
こうして、紆余曲折を経てシリーズA、30億(約3億円)の投資誘致を終えることができた。
シリーズAが終わるとすぐにコロナが広まった。
シリーズAを終えて、幾らも経たないうちに、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)が世界を覆い始めた。東南アジアベンダーを確保し、東南アジアへのコールドチェーン物流に事業を集中させていた段階には、大きな悪材料だった。空路が塞がれ、輸出も難しくなり、物流大乱が起きて落ち着く兆しが見られなかった。
到底海外には行けない状況になるとイ・スア代表は相談をしたいと言った。コロナ禍が落ち着くまで韓国内に目を向けることができる事業を構想すると言い、GreenieBoxを多様化して食材だけでなくワクチンのような医薬品まで運ぶことができるGreenieブランドを作ると話した。最初の投資を決定する際、s.labの主事業は流通業であり、戦略的にピボットしたのがコールドチェーン特化物流会社だったが、ここでもう一度世の中のすべての物を入れて運ぶことができるコールドチェーンボックスを作り出す会社に進化した。
当時イ・スア代表は初対面で語ったビジョンを現実に実現した製品を作り出した状態であり、韓国唯一の国際安全輸送協会(ISTA)研究室認証まで貰った状況だった。すでにGreenieBoxは発砲スチロールよりも高い断熱性を持っており、再利用まで可能で、発砲スチロールと完璧に代わることができる革新的な製品であることを知っていたので、今回も積極的に支持した。
イ・スア代表は医薬品輸送規制や新型コロナによるワクチン拡散など医薬品輸送市場が開かれることにチャンスを感じs.labが持っているGreenieBoxの技術を高度化し、超低温であるマイナス70度から常温まで、すべての温度範囲のワクチンを入れることができるGreenie MEDI(メディ)シリーズを短期間で発売した。
すでにs.labは以前からMEDIボックス用の高度化研究を同時に進めてきており、FDA医薬品輸送基準による医薬品用パッケージング認証機関等級であるISTA 7Eを自社のGreenie研究所で取得していた。ちなみに、ISTA 7E等級を取得した研究所は全世界で16ヶ所しかなく、韓国内の民間研究所では、唯一獲得している。
ついに韓国内にもファイザーを皮切りにワクチンが供給され始めた。s.labのGreenie MEDIはファイザーワクチンのような超低温を維持できる唯一の運送容器であり、市場比較テストの結果、他社に比べ圧倒的な性能で政府をはじめ、製薬、医薬卸売、医薬品専門運送会社の注目を集めた。
しかし、これまでGreenie MEDIとエコのR&Dや量産化の過程で多くの資金が投入されており、いざGreenie MEDI商用化のための生産資金がなかった。生産のために再び迅速な投資を受けなければならず、既存の投資家と新規投資家から投資を受け、Greenie MEDIを製作し供給できる資金を確保した。
そうしてGreenie MEDIは世界に売り出され、ファイザーワクチンの100%、モデルナとアストラゼネカの60%の運送を担当し、韓国内の新型コロナワクチンのコールドチェーン輸送容器市場シェア1位を達成した。
再利用コールドチェーンパッケージ、ソフトウェアで物流トラッキングまで発展
Greenie MEDIを通じてs.labは技術力と商品性を立証した。s.labはワクチンだけでなく、医薬品、新鮮食品まで、すべてのコールドチェーンパッケージが必要な品々をs.labの「Greenie」に入れるために、Greenie MEDI以前からフード専用のGreenieエコを発売した。
Greenieエコは3年の間、再使用が可能で、Greenieエコ1つの使用で、発泡スチロール約156個に代われるだけでなく、断熱材を包んだプラスチックはリサイクルプラスチックで作られ、寿命を終えたGreenieエコのプラスチックは再び新しいGreenieエコとして、再誕生できる環境にやさしい輸送容器だ。s.labは発泡スチロールを代替するだけでなく、資源循環が可能なGreenieという革新のハードウェアを保有することになった。
ついにソフトウェアを作る時が来た。2年前イ・スア代表は物流トラッキングの環境は遅れており、革新が必要だと、ソリューションを企画したいと話した。私はIT会社にかなり長く勤めた経歴から、海外から戻ってきて休んでいる有能な企画者の友人がおり、その人にs.labのソリューション企画を助けてほしいと頼んだ。そのように4ヶ月間超集中し、GreenieBoxにIoTを付け、物流トラッキングが可能なデジタルトレンフォーメーションソリューションを企画してみせた。
ハードウェアが完成した当時、企画したソリューションの本格的な開発のためにイ・スア代表は開発チームを素早く組織した。s.labが製造会社から物流テック会社に再び跳躍する準備をした。イ・スア代表は、2021年、ソリューション開発とハードウェア製品群の多様化および工場建設のために新規投資誘致を開始した。
私は、市場のエコなESGの課題に直面し、今年から施行される生物学的制裁保管、輸送管理強化法規で市場でのs.labの位相は変わると確信した。そしてTBTはs.labに2回目の後続投資をし、初の1社への3回の投資を行うことにした。また、同ラウンドで一番早く投資した後、他の投資家たちはs.labに自信を持って投資を決定し、150億(約15億円)の投資誘致に成功した。
s.labが運が良かったのだという人もいる。もちろん運も良かった。しかし、最悪の悪条件の中で市場を見て、持っている資源を最大化し、新しい未来を描き、生き残ることができるのは運ではない。投資家として創業者の絶え間ない事業の変化に疑問がないといえば嘘になるだろうが、イ・スア代表の市場を見る目と速い決断力は厳しいスタートアップシーンでs.labが生き残れる理由であり、本人の意思決定をなんとしても実現させる実行力は投資家として、今は漠然とした期待感まで持たせる。
TBTはs.labの初の機関投資家であり、財務的投資家として一緒にジェットコースターに乗ったように会社の喜怒哀楽を共に経験した。考えてみると、最初の投資を除き、TBTのs.labに対する後続投資はs.labの危機の瞬間であり、同時に、毎回危機を乗り越え跳躍する瞬間だったようだ。いつのまにか、初投資から3年以上の時間が経過し、s.labは今や、世界のすべてのものを詰めて世界のどこにでも運んでいく世の必需品として徐々に私たちの生活に入りこんでいる。
朝鮮日報のニュースレター、「ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)」です。
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