株式会社LUNASOFT パク・ジンヨン代表

 2016年3月からLUNASOFT(ルナソフト)の代表を務めている。LUNASOFT創業前の十数年間、cafe24(カフェ24)の子会社のPIMZ(ピムズ)でマーケティング業務を総括。Eコマース市場での長年の経験と深い理解を持っている。LUNASOFTの事業領域はチャットボット、通知トーク、相談トーク、ERP(全社的資源管理)、CRM(顧客関係管理)、 Eコマース専門企業。現在展開している主なサービスは、NAVERトークトーク、Kakaoお知らせトーク、Kakao i、Kakao相談トーク、CTI、 LUNA TALK(ルナトーク)、 Trisara(トリサラ)、Re:Load(リロード)。


顧客とECショップの苦悩を解決するLUNASOFTのパク・ジンヨン代表にKORITがインタビューをしました。

―LUNASOFTはどのような会社ですか?

2016年3月に設立されたLUNASOFTは、Eコマース企業を対象にオンラインショップと顧客間の非対面コミュニケーションサービスを提供する技術ベースのスタートアップです。簡単に言えば、オンラインショップに会員登録をしたり、商品を注文したりするときに顧客が受け取る 「商品が発送されました」、「注文を受け付けました」 などのメッセージをSNSベースで通知サービスを提供している会社です。

KakaoTalkのようなSNSチャットボットを通じて AIと配送、返品などの問い合わせに対する会話ができ、エージェントとリアルタイムチャットも可能です。韓国でネットショッピングをしたことがある消費者なら、一度はLUNASOFTに触れたことがあると確信しています。

規模の大きい企業であれば、自社の開発者が独自の相談サービスをプログラミングし、大規模な専門相談人材を用意することもできるでしょうが、中小・中堅事業者(SME)のオンラインショップではそのような体系を整えることは難しくなります。

しかし、オンラインショップの規模が小さくとも、顧客の流入が活発である可能性はあります。LUNASOFTは、中小・中堅規模の企業も、顧客とスムーズにコミュニケーションをとり、ビジネスを継続できるサービスを開発・提供しています。

LUNASOFTからKakaoTalkに届いたお知らせメッセージ。下のボタン(マーク部分)を押し相談を開始することができる。

―サービスを開始するきっかけはなんでしょうか?

LUNASOFTを創業する前の十数年間、韓国の代表的なEコマースプラットフォーム企業であるCafe24の子会社PIMZでマーケティング業務を総括していました。オンラインショップ企業の代表たちとコミュニケーションをとるのが主な業務の一つだったので、自然に彼らが感じている苦悩について詳しくなりました。

KakaoTalkの通知トークサービスができる前は、オンラインショップはテキストメッセージで注文、配送に関する内容をお知らせしていました。しかし、SNSメッセージに比べてテキストメッセージはきちんと確認していない顧客が多く、 リンクが挿入されているとフィッシングやスパムメールなどと誤認されるという問題も生じ始めました。その時思いついたのがKakaoTalkに注文情報を転送するシステムでした。

韓国で国民的メッセンジャーと呼ばれるプラットフォームを通じて注文関連情報を送信すれば、利用者がより簡単に情報を確認できると考えました。また大量に発送しても長さに制限がないため、コストも下げることができ、事業者の立場としてはメリットが多くありました。事業性があると思い、2016年に創業することになりました。

―LUNASOFTにはどのような強みや特徴がありますか?

LUNASOFTの事業は大きく3つに分けられます。bizメッセージ(Kakaoお知らせトーク/相談トーク)、 bizチャットボット(Kakao i/NAVER トークトーク)、 マーケティングサービス(Reload(リロード):顧客がオンラインショップで商品を見て、 「戻る」 ボタンを押して出て行こうとすると、 AIがこれを認識して商品紹介ページをもう一度表示する顧客離脱防止サービス)です。

そこに統合コールセンター 「CTI システム」、前述のすべての相談チャンネルを統合して管理できるソリューションである 「LUNA TALK (ルナトーク)」をサービスしています。LUNA TALKでは、顧客相談履歴から交換、返品データと統計を提供し、すべてのCSの現状を一目で把握できます。中小規模のオンラインショップも顧客管理効率を向上させることができる 「All in One Service」と言えます。

CS統合管理画面。電話、Kakao相談トーク、NAVER トークトークからの相談状況を一括で確認することができる。

LUNASOFTは特にファッションのEコマース分野で大きな影響力を確保しています。韓国内上位100のファッション分野のオンラインショップのうち80%がLUNASOFTのbizメッセージサービスを使用しているためです。zigzag(ジグザグ)、Brandi(ブランディ)、ohora(オホーラ)、andar(アンダール)、XEXYMIX (ゼクシーミックス)、NAIN (ナイン)、DINT (ディント)、SAPPUN (サップン)、SOVO (ソボ製靴)、66girls(ユクユクガールズ)、HOTPING (ホッピン)などのオンラインショップが主な顧客であり、コスメ、食品、スポーツ、ライフスタイルなど様々な産業群のブランドもLUNASOFTのサービスを利用しています。

業務提携を結んでいる企業と顧客会社を合わせると、現在、 7,000社以上のパートナー企業と一緒にビジネスを行っています。KakaoTalk bizメッセージ公式ディーラー社であり、NAVERショッピングのチャットボットである 「NAVER トークトーク」のビルダー社です。

―これまでどのような戦略で会社を成長させてきましたか?

3人での創業でした。けれど自信はありました。最も信頼できる有能な人々とチームを作り、 10年間Eコマース業界で働いた経歴も大きな競争力だったためです。もちろん事業初期には新しい会社であるがゆえ、Kakaoと事業提携を進めることは難しかったです。何度も困難な状況を経験しました。しかし、諦めることができず、まず金融分野で私たちと同様の事業を進めている 「biztalk(ビズトーク)」という企業の提携会社としてスタートすることにしました。KakaoTalkの2次提携会社になったのです。 

2016年10月、KakaoTalkのお知らせトークサービスをローンチし、ついにKakaoもLUNASOFTの技術力を認め、翌年の2017年3月、KakaoTalk bizメッセージ公式ディーラー社に選ばれました。

LUNASOFTのサービスを利用する顧客会社を募集する際には、私が管理していた会社のオンラインショップの代表たちが大変力になってくれました。LUNASOFTが開発したサービスを提案した際、即座に肯定的な回答をくださった方が多く、そのおかげで韓国の上位100店舗のうち80%がLUNASOFTのサービスを使うほど急速に市場での地位を固められたのだと思います。

長年積み重ねてきた専門性と研究開発能力を基に、事業に取り組んだ結果、NAVERともパートナーシップを構築することができました。技術力と成長の可能性を高く評価され、NAVERからシリーズA投資も受けました。LUNASOFT初の外部からの資金調達でした。以来、現在までSoftBank Ventures(ソフトバンクベンチャーズ)をはじめとする主要ベンチャーキャピタル(VC)からシリーズB投資をはじめとする追加投資を調達し、新しい技術研究開発にさらに集中しています。 

3人でスタートした会社ですが、現在では110人を超える従業員がいます。LUNASOFTを成長させている主役たちです。平均年齢は30代で、若者が多く、フラットで自律的な組織文化を作ることに力を注いでいます。自由な雰囲気の中で気楽にコミュニケーションをとると、業務効率が良くなるという信念を持っています。

最善を尽くしている従業員に常に感謝し、より快適な環境で勤務し、個人と会社の両方に利益になる成果を出すことができるように、自律出勤制、自由な休暇の使用など、最高の福利厚生を提供しようという努力も続けています。

―日本市場をどのように見ていますか?

日本のEコマース市場は韓国より3.5倍程の大きさです。Amazon Japan、楽天などの大企業がありますよね。しかし、注文、配送、返品、CS 管理システムなど、Eコマースインフラストラクチャの分野では、デジタルトランスフォーメーションをより必要としているように見えます。

日本では宅配便の再配達率が高いことが知られていますが、これを解消できるリアルタイム顧客コミュニケーションチャンネルも必要でしょう。Eコマースに事業の焦点を当てているLUNASOFTにとって、事業性が大きな市場だと考えています。特に韓国のようにオンラインショップからメッセージを送るという形の市場が形成されていない状況なため、さらにそうでしょう。

日本の若年層はオンラインショッピングに精通しており、 SNSの利用も非常に活発です。電子メールで情報を送信する代わりにLINEなどのメッセンジャーを通じて情報を伝達すれば、日本のEコマース事業者はもちろん、消費者の利便性も大幅に向上します。

―次の計画や目標は何でしょうか?

まず、LUNASOFTは海外でサービス領域を広げていく計画です。その始まりがまさに日本市場への進出です。日本進出検討は昨年から行われていますが、当時LUNASOFTの戦略的投資家(SI)だったNAVERが自社Eコマースプラットフォームであるsmart store(スマートストア)の日本市場ローンチを検討していました。

その時、NAVERから「LUNASOFTが日本でCS関連の役割を果たしてほしい」という提案をいただきました。すでにNAVERショッピングチャットボットの公式ビルダー社としてパートナーシップを構築していたことから、LUNASOFTの技術力を高く評価したようです。

日本には韓国のKakaoのように全国民が愛用するメッセンジャー「LINE」があります。ここにAIチャットボットサービスを連動する計画です。現在、関連技術も開発中です。NAVERとLINE、SoftBank Venturesから直・間接投資を受けた状況なので、日本市場進出への力を持っています。

現地パートナー社の発掘には、LINEとYahoo Japanの合弁法人である Zホールディングスがサポートに入ります。Zホールディングスを通じて日本最大のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」や「楽天」、さらに 「ヤマト」、「佐川」 など宅配会社にもサービス対象を拡大する計画です。

日本市場への定着に成功すれば、LINEのシェアが 80% 以上に上る東南アジア市場への進出も可能だと期待しています。どこでも経験できなかった洗練されたソリューションを提供し、市場をリードし、グローバル販売チャネル基盤を確保します。

当社が開発したEコマースプラットフォームも成長させる計画です。今年LUNASOFTは、物的分割を通じて株式会社Green&Grey(グリーンアンドグレー)を設立し、女性ファッションプラットフォーム 「cellook(セルック)」を立ち上げました。顧客の好みやスタイル、性別、年齢などを考慮して製品をおすすめするパーソナライズシステムをもとにしたサービスです。

特に他のファッションプラットフォームとは異なり、各ブランド別のsmart storeと連動しており、NAVER PAY(ネイバーペイ/Npay)での決済が可能で、それぞれ異なるブランド製品を購入してもNAVERポイントに統合することができます。Eコマース市場であるNAVER smart storeの影響力が大きくなっている状況なので、顧客の利便性の向上はもちろん、smart storeを運営するブランドの自社全体の売上増大にも役立っています。

女性ファッションプラットフォーム 「cellook」ロゴマーク

cellookにはLUNASOFTの顧客会社のほとんどが出店しています。パートナー企業と一緒に成長するLUNASOFTの努力が実を結んだ結果だと思います。韓国にはすでに多くのファッション専門プラットフォームがありますが、cellookは持続可能なビジネスのため、オンラインショップの成長により集中しよう思っています。

消費者だけでなく、オンラインショップ事業者のサポートもしながら、共生していくという点がcellookの差別点であり、これをもとに韓国市場で競争力を備えていければ日本市場への進出も期待できると思っています。


株式会社LUNASOFT ーパク・ジンヨン代表取締役

会社HP:www.lunasoft.co.kr

住所:ソウル特別市江南区テヘラン路325 URBAN BENCH  12階、14階

お問合せ:Tel.02) 1644-4998 / Fax.02) 6008-8228