A-Labs - 代表 パク・ウン

世界旅行をきっかけに、世界の様々な事業に関心を持つ。多数の事業開発・運営を経験後、韓国科学技術研究院AIロボット研究所の研究員として勤務。その後、資源循環技術を活用した環境ビジネスに注目。「人類史に残るような意味のある挑戦をしてみたい」という思いから、2021年にA-Labs法人設立。二酸化炭素を産業原料に転換する設備を開発している。


-地球規模の大きな課題を解決する仕事がしたい

私は高校生の時から、自分で事業を起こすことに興味があり、何か大きな社会的課題に対して、解決策を提示していくような仕事に憧れを持っていました。

弊社A-Labsを設立する前までのキャリアの中では、小さな事業をたくさん開発・運営していました。2017年から、韓国科学技術研究院AIロボット研究所の研究員として勤務する機会に恵まれ、そこで新しい知識やスキルを得ると、学生の頃から漠然と考え続けてきた「大きな課題を解決したい」いう気持ちが確固たるものになり、いつしか「人類史に残るような意味のある挑戦をしたい」という、より大きな夢を持つようになりました。

当時は、ちょうど国連が発表した持続可能な開発目標(SDGs)への理解が世界的にだんだん浸透している時期でした。持続可能な社会を実現するためには、様々な分野で対策を講じることが必要ですが、私は、そこで喫緊の課題であるはずの環境分野についての対策が、最も遅れていることを知ったんです。

この地球規模の環境問題に挑戦することこそ、自分の人生を賭ける価値があるのではないか。

そう考えた私は、2021年にA-Labsを設立しました。

-年々深刻さを極める地球温暖化と、注目されるCCUSの概念

弊社A-Labsは、「二酸化炭素を産業の資産に」をモットーに、自然と産業が共存していける社会を目指し、二酸化炭素を資源化する設備を開発している韓国発の環境テックスタートアップです。

まず、弊社の事業内容と商品について具体的な説明をする前に、環境問題を語る上で欠かすことのできない「CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)」の概念について、簡単に説明させてください。

CCUSとは、二酸化炭素排出量を減らすことに加えて、二酸化炭素を分離(Capture)・回収(Utilization)・貯留(Storage)し、さらに二酸化炭素を化学製品や燃料などに変換して利用していこうという考え方です。

これまでも地球上では、さまざまな形で二酸化炭素が排出されてきましたが、森林や海洋などに吸収されることで、バランスが保たれていました。ところが、20世紀後半頃から、世界各国で産業活動が盛んになり、二酸化炭素の排出量が急増しました。その結果、自然界での吸収量を大幅に上回るペースで大気中の二酸化炭素が増え、二酸化炭素濃度が高まっていきました。

このようにして起こった二酸化炭素濃度の上昇が昨今、地球上で起こる様々な気候変動や地球温暖化の進行に繋がっています。

そのため、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量を減らさなければ、今後50年以内に全人類の3分の1は、サハラ砂漠の最高温部と同じくらいの灼熱にさらされ、住む場所を失うであろうと警告する研究結果もあり、地球温暖化は深刻さを極めています。

そういった地球規模の問題を解決すべく、我々はこのCCUSの考え方を元に、二酸化炭素を資源化する設備の開発をしています。

-今すぐ設置可能なA-Labsのモジュール型炭素資源化設備

弊社は現在、建物に設置するだけで二酸化炭素を削減するモジュール型炭素資源化設備を開発中です。

冒頭で申し上げた通り、単に二酸化炭素を回収・隔離して廃棄物として処理するのではなく、資源循環技術を用いて、環境的・経済的な利点を最大化した設備を目指しています。

現在、韓国国内の大企業と試作品を現場実証実験中であり、これから製品化の準備に入ります。この製品1台で少なくとも松の木を200株を植える以上の効果があることも確認されていて、環境問題解決の一助になる製品であると自負しています。

製品化が叶ったら、ぜひ日本やアメリカでも販売したいです。

A-Labsの製品

-市場に「参入する」のではなく、市場を作っていくという感覚

A-Labsを創業し活動してみて、実感していることなのですが、環境テック市場は、既に完成した市場の中で居場所を確立していくというよりは、「市場を作っていく」という感覚に近いんですね。

地球規模の問題を解決するわけですから、前例はあってないようなものですし、一国の取り組みだけですべて解決されるものでもないので、気にしなければならない事も想像以上に多いです。

例えば、世界各国の経済状況や、政治的利害関係による問題をクリアにする必要がありますし、環境問題を解決するためのインフラを構築するための経済的・時間的ハードルの高さがネックになることも多々あります。

でも一筋縄ではいかない問題だからこそ、それを解決できた時の喜びは格別なものでしょうし、やはり人生を賭けるにふさわしい意味のある仕事だと思います。

-環境ビジネススタートアップ市場、日本では「ブルーオーシャン

近い将来、日本への進出を考えています。

日本は先進国の中でも、本当に多くの環境政策が試行されている国です。

普段生活する中で、自国の環境政策について特別に意識されることはないかもしれませんが、環境問題に関する政府や企業の意識も高く、技術力の高さも世界トップレベル。国を挙げての環境問題への取り組みが積極的に行われています。

一方、韓国の環境政策は、まだ理想とは程遠く、技術力も不足していて、現在、日本やアメリカの後を一生懸命追いかけているような状態です。

しかし、韓国では、いろいろ不足していることが多い中でも、環境問題に興味を持ち、それを解決しようと事業を始めるスタートアップ企業が多い印象です。日本市場では、環境問題に積極的に取り組む企業のほとんどが大企業であり、スタートアップ企業は、正直あまり見かけません。

そういう意味で、日本市場は「ブルーオーシャン」です。

そこに進出し、韓国スタートアップ企業独自の視点で、市場を開拓していくことは、日韓双方の環境スタートアップ市場にとって、とても大きな意味があるのではないかと思います。

せっかく日本に進出するのであれば、我々A-Labsが、大企業でなくても環境問題を解決していけるということを証明していきたいですね。

-完全脱炭素社会の夢を実現するため、日本でもパートナーを見つけたい

我々の最終的なゴールは、完全なる脱炭素社会を実現すること。

これは環境問題に向き合う人なら、誰もが夢見る未来です。

具体的には、植物やバイオ技術の活用はもちろん、様々な分野の技術を連携して、循環経済モデルを提示できる技術とビジネスモデルの開発が必要です。しかし、先ほども申し上げたように、環境問題というのは、今日明日で解決できる問題ではありませんし、一国の一企業だけで解決できる規模でもありません。二酸化炭素資源化の技術は、まだまだ発展途上であり継続的な研究と開発、運用が必要です。

私たちA-Labsと一緒に美しい地球を守り、持続可能な未来の基盤を築いてくださるパートナーを日本でも探していきたいと思っています。



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