acrossB ―イ・ソンウCEO

ソウル大学コンピューター工学科を卒業後、経済学科修士を修了した。 その後、サムスンSDS戦略企画室の新事業担当部長、物流事業部門の新事業開発グループ長を務め、IT基盤の多様なプロジェクトを遂行し、現在はacrossBのCEOを務める。


-貴社はどのような会社で、どのようなサービスを提供していますか?

2020年5月に設立され、3年と少しが経ったチームです。acrossB(アクロスビー)は、Eコマースブランドが海外グローバルマーケットに進出した際、国境を越えるクロスボーダーを確立する物流全体を効率化するビジネスを行っています。

なので私たちのお客様であるEコマースブランドが物流の複雑さを管理するために使うエネルギーを減らし、その代わりにEコマースブランドが力を入れるべき販売戦略を立てたり、市場を分析したり、商品を開発したり、より本質的なことに集中できるようにして、そのブランドが成長することを私たちは目指しています。

 もう少し具体的にどのようなサービスプロットを提供しているのかを説明すると、まず、クロスボーダー物流領域を私たちは3つに分けて表現しています。

1つ目は「マルチストア販売チャンネル」、楽天などの販売チャンネルのことですね。2つ目に「マルチキャリア」といって、ヤマトなどの配送業者のことです。 その次に、「マルチ倉庫」です。各地域にある様々な倉庫を指しますが、この3つを同時に管理することはプロセスがかなり複雑です。

私たちはこの3つの領域の情報を一度に管理できるプラットフォームを「ワークパッド」という名前で提供しています。

そのため、お客様は、当社のワークパッドを使用して、様々な国の複数のストアから一括で情報を取得し、それを配送するための様々な作業に利用できます。私たちの顧客は希望する配送業者を指定し、請求書番号を発行し、最後に各倉庫に必要な情報を指示することができます。これにより、全体のプロセスを効果的に管理できるようにしています。

このワークパッドには、内部の物流専門家や代表者はもちろん、皆さんが物流において豊富な経験を有しています。そのため、Eコマースブランドが作業に不便を感じるような状況、例えばギフトの処理や一括で情報を変更する必要がある場合など、複雑かつ繰り返し行われる業務を自動化したり、注文情報から国境を越える際の通関問題など、実際に発生する可能性のある問題に対処するノウハウが組み込まれています。

ワークパッドは、これらの問題が発生する前に注意を喚起し、事前に対策を講じるためのアラームを発信しています。これにより、物流全体から発生する問題状況を最小限に抑え、スムーズな業務遂行をサポートしています。

このようなことをする理由は、私たちの顧客はブランドであり、ブランドの顧客は最終消費者です。私たちのサービスによって、より早く配送することができ、より多くのものを提供できるようになれば、顧客の顧客である最終消費者の満足度も上がると私たちは期待しています。つまり、物流の好循環を期待できるサービスを提供しています。

ワークパッドというプラットフォームに加えて、私たちは保有する多岐にわたる物流ノウハウを基に、物流コンサルティングも提供しています。海外進出を検討している際には、適切な物流プロセスの設定や調整に関するコンサルティングを行っております。

アメリカや日本などの主要拠点国には、当社が所有するフルフィルメントセンターや協力しているパートナーセンターがあります。これにより、製品を事前にこれらの拠点にバルクで保管し、現地での迅速な配送を可能にしています。

様々な配送条件に基づいて、最適な配送サービスを効果的にセットアップするためのソリューションも提供しています。これにより、クロスボーダー物流全体にわたる最適な配送サービスを包括的に提供しております。

そして、こういったものを提供する私たちのチームは現在30名ほどです。事業開発チーム、物流を担当して運営するチーム、次にワークパッドを開発して企画するチーム、そしてデータを分析チームがあります。

-会社が設立されたきっかけを教えてください。

当社が設立された背景には、物流と呼ばれる広範な産業領域が非常に広がっており、極めて労働集約的であることがありました。このため、一人一人が手作業で多くの業務を担当し、利害関係も非常に入り組んだ複雑な産業状況で働いていました。このような複雑性は、配送業者、販売者、製造業者など、さまざまな関係が絡み合い、デジタル変換が進むのが遅れている特性を持つ産業であることを示しています。

この物流の特性と、これに対峙する中でEコマースが急速に変化し続け、オンラインが基盤となっていることから、この産業においてアンバランス感を感じました。

非常に速度も速く、オンラインが活性化されているEコマース領域を見ていると、その領域で何かすることがあると見ましたし、特に私たちが住んでいるアジア諸国のブランドがこのEコマース領域で非常にうまくいっていることにとても大きな影響力があると思ったからです。

そこから、このアジアのEコマース領域を支え物流の効率化の必要性を感じ、代表と志を同じくする元同僚や学生時代の後輩と一緒に起業することになりました。

―貴社が提供しているサービスの強みや特徴があれば教えていただけますか?

私たちにとって「自動化」と「最適化」の2つが最も重要なキーワードです。

そのため、先ほどの物流プロセス全体において、協業しなければならないパートナーも非常に多様であり、パートナーごとに持っているシステムが全て異なる状況になっています。

販売チャンネル、倉庫、配送の各分野でシステムが異なるので売り手の方が毎回そのフォームに合わせて、各分野のシステムフォームに合わせて一つ一つエクセルでダウンロードし手作業で行っている場合が多いです。

このため、私たちは「ルールエンジン」と呼ばれる開発用語を使用していますが、これは、顧客ごとにあらかじめ設定された条件に基づいて、特定のアクションや販売を行うためのルールを設定できる仕組みです。

具体的には、特定の条件が満たされれば自動的に検証や情報修正が行われ、フォームが迅速に生成される仕組みです。これにより、従来手作業で行っていたタスクがボタン一つで瞬時に実行でき、情報が即座に処理され、フォームが手に入るようになります。私たちはこれにより、作業の迅速化と利便性向上に焦点を当てています。


このように自動化をし、効率化することが私たちワークパッドの最初のレイヤーです。

また、週の売上や出荷状況などが気になりますよね。しかし、これらの情報を管理するのは非常に難しく、正確に把握するためには配送会社や倉庫のシステムにアクセスする必要があります。これを一目で確認できるように、販売数量や出荷状況、在庫量などを一元的に表示するレポーティング・ダッシュボードを構築しています。このように蓄積された多くのデータを統合し、月別、週ごとに一目で理解できるように視覚化することを2番目のレイヤーと見ています。

さらに、より高い品質の意思決定を可能にするために予測と最適化を行う3番目のレイヤーまでがシステムの全体構造です。  現時点では2番目のレイヤーまでを高度化している段階であり、ユーザーに一次元高い価値を提供する3番目のレイヤーとしては漸進的に拡張して開発する予定です。

-御社のサービスの活用事例を具体的に教えてください。

最初に挙げるポイントは、私たちが創業した初期から協力してくれているある顧客です。当初、私たちがシステムを導入する前は、この顧客に関わる関係者が多く、多様なシステムが存在し、多くの手続きが必要でした。例えば、エクセルでの作業が特に多く、実際に計測してみると、26個ものファイルが必要でした。

毎日、26回ものエクセル作業が必要だったことは非常に手間がかかるものでしたが、私たちのシステムを導入することで、不要なエクセル作業を除いて大幅に減少したとのフィードバックをいただいています。現在、エクセルファイル様式を自動生成してくれたり、他のシステムと連動してすぐに情報を送ってくれるなどで既存の作業を効率的に進めることができるようになりました。

次に、もう一つお話させていただきます。私どものお客様の中には、アメリカ、日本、ヨーロッパなど様々な地域で販売しているブランドがあります。

このように運営規模感が大きなお客様で、在庫情報を一元的に把握するのが難しい状況でした。しかし、私たちと連携しながら、倉庫に散らばる在庫情報をまとめて一元的に確認でき、不足や過剰な在庫などの状態を一目で把握し、それに基づいた意思決定が可能な機能を提供しています。これにより、特定のアイテムが過剰な場合にはプロモーションを強化すべきか、不足している場合には迅速な提供を検討すべきかなどの判断が容易になることを期待しています。

-日本市場をどのように見ているのか、日本市場に進出する理由があれば教えてください。

弊社の顧客は、日本のEコマース市場で非常に人気を博しています。日本の消費者の購買パターンなどを分析する中で、日本市場とその消費者層が非常に魅力的であると認識しました。現在、他のアメリカや海外のパートナーとの対話も進めており、日本市場には非常に魅力的な機会が広がっていることを確認しています。日本の消費者に対する関心が非常に高いです。

現在、日本に進出を検討しているECブランドも存在しています。また、私たちのチームは日本のブランドがグローバル市場で非常に力強い存在であると考えています。 特に食品やリビング小物、そしてファッションや趣味の分野では、日本のブランドが強みを持っており、これらのアイテムは海外市場でも大変人気があります。

非常に隠れているイーコマースブランドも多いと考えており、これらがグローバル市場に興味を持った際に、我々が再検討できる可能性があると考えています。そのため、現在はこれらのブランドとのパートナーシップ構築を検討しています。

海外から日本に進出を考えているブランドや、日本での強みを持つブランドが海外で展開したいと考える際に、物流の面でお手伝いできればと考え、進出の期待が高まっています。

今後、来年の上半期には日本の現地法人を設立し、同時にパートナーネットワークを形成する計画を進めており、これによりさらなる国際展開をサポートできるようになる予定です。

-最後に、今後の展望やビジョンについてお聞かせください。

私たちの計画は多岐にわたりますが、まずは来年は、既存のノウハウを基にサービスを高度化し、先程お話ししたように、日本とアメリカでお客様のニーズに応えるサービスの提供を初めていくことを一次的な計画としています。

全体を俯瞰すると、acrossBはEコマースブランドのグローバル市場進出と成長を目指しています。物流プロセスの効率化に留まらず、現地でのローカライズをよりサポートできる様々なサービスを計画しています。ITを駆使して自動化し、可視化することで、より多様な環境でお客様がビジネスを展開できるようになり、一緒に成長できることを期待しています。これにより、複雑な海外進出や物流プロセスをワンストップでサポートする体制を整えています。

この分野には多くの可能性が広がっており、新しいアイデアが次々と浮かび上がる面白い産業分野だと考えています。私たちは常に新しい機会を見つけつつ、準備を進めていきます。


acrossB ―イ・ソンウCEO

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