株式会社ライオニス -ホ・ソンウク代表

大学卒業後、Bain&Companyで経営コンサルタントとして勤務。今後、社会に大きな影響力を与えるビジネスは、インターネットであると判断し、韓国のNAVER(ネイバー)に入社、事業計画と海外進出業務を行う。NAVER社としてワークスモバイルジャパン株式会社(現、LINE WORKS株式会社)の創立メンバーとして日本に進出、3年でビジネスチャットサービスLINE WORKSで市場シェア1位を達成。LINE WORKSビジネスの成功の経験を生かし、世界の優れたITソリューションを日本企業に紹介する事業のため、株式会社LIONICE(ライオニス)を創業。


₋LIONICEについて紹介をお願いいたします。

まずは「LIONICE」という会社名は「LION」と「ICE」の合成語から来ており、日本語の表現に寄せて「ライオニス」と読みます。

私たちは、日本企業に向けて高品質なIT製品を提供する販売事業を展開しており、同時に海外IT企業が日本市場に進出する際の日本支社、またはベンダーとしての役割も果たしている企業です。

詳しくは、優れた海外ITソリューションを調達、販売会社に提供する供給元として基本的に機能し、直接販売や、パートナー販売などを含め、いろんな役割をすることもあります。

海外のIT企業にとって、日本市場は極めて魅力的ですが、その進出にはコンサルティングを含む実質的なパートナーシップが欠かせません。海外から進出する企業にとって、このプロセスは非常に複雑だと言われています。

このような背景から、日本進出のコンサルティングサービスが増加しています。しかしながら、成功には商品やサービスが日本市場に適応するための支援が不可欠です。私たちは、単なるパートナー関係を超え、商品やサービスのローカライズをサポートし、製品によってはパートナーシップ契約を締結する場合もあります。その後のマーケティング活動やパートナーの育成など、様々な形で海外企業の日本進出を成功へと導きます。

₋LIONICEが提供するサービスの強みについて教えてください。

会社を作る際に考えましたが、何よりも「価値」が重要であると思っています。 

特に企業としては利益を上げることに価値をおいて働く必要があり、そこで、ITソリューションの価値について考えると、生産性やコストの面で30%以上の投資収益率(ROI)が期待できることを基本前提としています。

具体的な例として、現在弊社が提供しているサービスには、GoogleドライブやDropboxに類似した「DirectCloud」というオンラインストレージサービスがあります。従来のサービスでは、通常はユーザーごとの課金ことが一般的ですが、弊社のサービスではユーザー数無制限に設定しています。

一般的なサービスでは、利用人数が増加すればするほど企業にとって負担が増える傾向がありますが、Directcloudをご利用中の企業様はご心配なく引き続きご利用いただけます。特に、コスト的な側面でに大きく寄与する可能性があります。また、日本の情報システム担当者が要求している多岐にわたる監視内容やログなどの付加的な機能の提供もしています。

30%以上の ROIを提供することをルールとしたことで、実際に既存サービスよりも半額以下にできるケースも非常に多く存在しています。

₋ホ・ソンウク代表が日本に来られたきっかけは何でしょうか?

NaverのBtoBサービスであるLINEWORKSの日本進出のため、2015年に日本に来ました。当時、私はNaverの所属でメール事業を担当する部署に所属していました。

Naverは、韓国でGmailと同様の特徴を有しています。Gmailが多くの人に利用されていることから、様々なB2Bサービスが生まれました。同様に、韓国ではNaverメールの加入者が全国インターネット利用者数を超えており、ほとんどの韓国人はNaverメールを利用しています。この大きなユーザーベースを基に、B2Bサービスの展開が可能となっています。そこで、私たちはメールサービスをB2Bとして展開し、これを通じて海外進出の機会を模索することとなりました。

海外進出のためサービス本部を独立させ、新しく「ワークスモバイル」として法人を設立しました。当時、私はこのサービスを通じて日本市場に進出する夢をもって、同時に海外での経験も積むことを強く望んでいました。そのため、積極的に参加を志願し、2人のチームメンバーを連れて計3人で日本に進出することになりました。

最初は出張ベースで日本に滞在し、市場調査から着手しました。日本市場での成功には、日本のユーザーに受け入れられる特定のサービス機能が不可欠であるとの認識とともに、販売促進のためには信頼性のある販売パートナーが欠かせないと考えました。そのため、パートナーシップ構築に向けた契約交渉を開始しました。

その後、法人の設立に取り組み、営業管理や人事管理など、事業立ち上げ段階におけるあらゆる側面にわたる業務を手がけました。この一連のプロセスを通して、海外企業が日本に進出する際に必要な業務に関して、あらゆる側面を網羅する形で「日本進出 A to Z」を経験しました。

₋LINEWORKSがここまで成功した要因を教えてください。

様々な要因があると思いますが大きく2つを挙げると「謙虚な姿勢でいれたことで、日本に特化した商品を作れる柔軟性を持っていたこと」、「パートナーを中心にビジネスモデルを組んで、パートナーと一緒に成長できるモデルを作ったこと」だと思います。

1つ目はNaverとして韓国で成功した経験をそのまま日本に持ってきていたらここまでの成功は難しかったと思います。過去の経験を捨てたからこそ成功できたと思います。

Naver自体はLINEを日本で成功させた経験がありますが、私たちの本部自体は、正直なところ日本について詳しくなかったです。唯一私が日本に行く前に勉強し、少し日本語が話せるような状態でした。

しかし、日本に詳しくなかったからこそ、謙虚になれたのだと思っています。詳しくないことを率直に認めて、日本の方々からたくさん日本を学ぶべきだという思いでスタートしました。

最初にITソリューションセールを行いましたが、ソリューション販売代理店50社をリストアップし電話やメールなど、本当にコールドコールをしながら様々な方にアポを取っていました。

このような経験を積み重ねて、結果的に日本を更に理解し、日本に特化した良いサービスを作ることができたと思います。

2つ目について、日本のITソリューション市場がパートナー中心であることです。海外から進出してきた場合、流通網などがなく、作る、売るという両面で不利な状況です。 

当然ながら、製品を製造し販売して利益を上げるためには、顧客の声が極めて重要です。そして、その中で顧客の声を最も良く知っている存在がセールスパートナーだと肌で感じました。実際に商品の企画や価格設定、マーケティングの事業構築を進める際には、積極的にパートナーの意見を取り入れ、共に企画を練り上げ、お互いにWin-Winとなるように多くの努力を重ねました。

この2つのことが、LINEWORKSが日本で成功できた要因だと思っています。

₋現在の会社を創業されたきっかけを教えていただければと思います。

LINEWORKSのために日本に来て、市場調査を行い、多くのパートナーと出会ったと話しましたが、その時に出会ったパートナーの中で、手厚くサポートやアドバイスを頂いたパートナーが株式会社サテライトオフィス(東京都江東区)です。 

日本でのビジネスを立ち上げる中で、毎週ミーティングをしていました。サテライトオフィスの原口社長に意見やアドバイスを求め、商品構成のフィーチャービジネスモデルを含め、今後のビジネス展開に関していろんなアドバイスを頂きました。実際にLINEWORKSの最初のセールスパートナーとして契約し、最初の顧客もサテライトオフィス経由で決まりました。

日本でビジネスをする中で原口社長とは個人的にも親交を深め、非常に親密な関係を築いてきました。そして、LINEWORKSが成長し、シェア1位になるなど様々な成果が出て時に次のステップをどうすればいいのか、そんな悩みを抱えて原口社長に相談したことがあります。

その際に原口社長は「韓国はITソリューションの品質が良くて速度が速い」ということを挙げ、「LINEWORKSのような良いソリューションを日本に持ってきたように、世界の良いソリューションを日本に進出できれば、サテライトオフィスには顧客ベースがあるので、こちらでが売ってあげるから一緒にやってみたらどうだろうか」と提案を頂き、ジョイントベンチャーの形で投資を受けて現在のライオニスを設立しました。

そして、最初は当然のことながら韓国のソリューションのソーシングから始めました。次第に韓国だけでなく、アメリカやインドのサービスが日本に入ってくるときにも、ライオニスを通して販売するケースが出てきました。アメリカやインドのサービスもソーシングしてサテライトオフィスを通じて販売する中で、今度はその海外企業が韓国に進出する際の支援をすることになり、事業が軌道に乗った段階です。

₋代表自身も海外企業として日本進出を成功させた経験がありますが、日本市場で苦戦した点や、韓国市場と異なる点はありますか?

日本の企業様はサービスの検討から本導入までかなりお時間をいただくことです。

特に製造業がすごく強い日本は、製品の完成度も高いです。そのため、ITソフトウェアソリューションにおいても、商品やサービスに対する完成度については期待値が非常に高いと感じていました。

韓国の場合は、B2Cサービスに強みがあることも要因のひとつですが、「SaaSサービスの完成品がどこにあるのか」「永遠のオープンデータだ」という意見があります。SaaSサービスにおいて完成品はなく、サービスの企画からリリースまでのスピードが最も重要視されています。

しかし、日本は完成度の基準が非常に高い日本市場は挑戦が難しいと感じました。韓国では「トライアルだからやってみましょう」という柔軟な感覚がありますが、日本では全ての検討事項がすべてクリアにならないとトライアルの申し込みすらしない傾向があります。

LINEWORKSの場合は、日本の市場ならではの特徴を素早く受け入れて、日本国内の意見に合わせて製品を修正していくことができたと思います。この柔軟性を生かし、長期的に 日本市場のニーズに合致するサービスになったと思います。

また、導入に関する決裁フロー・稟議に関しても、韓国では代表の決裁が最も重要視されますが、日本ではプロダクトに関わる担当者社員の合意から始まり、経営陣、代表と全体的なコンセンサスが必要でどうしても時間を要するケースが多いですね。

 -海外から見た際に日本市場の魅力的な部分を教えて下さい。

日本のユーザーは「既存のサービスを入れ替えない」特徴がと思います。そのため、既存サービスに似たサービスで参入することは非常に難しいです。しかし、裏を返せば 一度お客様に選ばれたら、サービスを中断せずに使い続けてくれるのです。非常に魅力的な部分であると思います。

また、日本では「価値が提供されたら、それに見合ったコストを払う」というのは当たり前になっていますよね。日本の方は当たり前だと思っていることなので実感することはないかもしれません。個人的な感想ですが、他国の場合は可能であればお金を払わないようにしようとする場合が多かったです。そういった中で、日本は正当な価値を支払うという考え方が根付いているので、ビジネスする上で非常に魅力的だと思います。

最後に、今後の展望やビジョンについてお聞かせください。

海外から日本に進出を考える際、ライオニスは優れたソリューションベンダーとして最初に思い浮かぶ存在でありながら、ライオニスに相談することが不可欠とされる企業であることが現在のビジョンです。

同時に、お客様となる日本企業や販売代理店に対しては、販売代理店が求めるあらゆるソリューションが一括して揃っている場所として、ライオニスを覚えていただく企業になることを目指しています。

プロダクトを作る側はライオニスに日本に進出を任せることができるし、お客さんの立場からすると、ライオニスに来れば、良い製品を見つけて導入をしたり、売りたいソリューションを見つけたりすることができるのです。

そのためにこれからも素晴らしい製品やソリューションをたくさん見つけ出す毎日を歩んでいきたいと思っています。


株式会社ライオニス

HP:https://www.lionice.co.jp/