株式会社IDK2 ―ヤン・スンジュンCEO

Samsung、Yahoo、UBS、Citi GroupなどTechおよび金融部門でエンジニア、CTOとして約15年勤務。2015年2月にIDK2を設立。データ分析ツール「HEARTCOUNT」を提供しており、韓国と日本に50社余りの企業顧客リファレンスを保有。1年前に始めた個人顧客対象サービスは現在6000人余りが利用している。「努力のいらない分析(effortless analytics)ですべての実務者が熟練したアナリストになる(everyone is an analyst)」をキャッチフレーズに、データの質問から関連する分析レポートの生成までの作業を自動化し、様々な企業のデータ分析及び活用を支援している。また、韓国内1位のデータコミュニティ「データヒーロー」も運営中。


-IDK2について教えてください。

 IDK2は、個人や企業の実務者のデータ活用を支援するデータ分析製品とサービスを提供する2015年2月に設立された会社です。現在はHEARTCOUNTというデータ分析ツールを韓国と日本で個人と企業を対象に提供しています。

個人の場合は無料サービスとして提供しており、教育コンテンツを一緒に提供し、データ活用が難しい就活生や個人事業主を対象に無料のデータツールを提供し、成長と交流の場を提供し、より便利で親切なブランドイメージと強固なコミュニティ構築に集中しています。また、高級分析機能を加えた有料プランHEARTCOUNT Premiumサービスも提供しています。

企業のお客様の場合、企業の実務者がデータを日常の業務に積極的に活用できる全社的なデータプラットフォームを提供し、企業のデジタル変革に取り組んでいます。

-会社名はなぜ「IDK2」なのか?

   IDK2 という社名は、「I Don’t Know What I Don’t Know」の頭文字で、「I Don’t Know」を2回繰り返していることから「2」をつけました。情報が溢れる現代社会において、私たちは普段から多くのデータを保有していますが、それによって正確に得られる情報が何なのか、また自分が今何が分からないのか分からないという状況が頻繁に置きますよね。 IDK2の使命には、このような複雑なデータの秩序と構造を簡単に見つけられるようにサポートし、ユーザー自身がデータに関する情報を簡単に把握できるような製品とサービスを提供するという意味が込められています。

-創業のきっかけは何ですか?

ほとんどの企業がデータ活用に苦労しているからです。すべての企業がデータベースによる意思決定を強調していますが、扱いにくいという技術的な障壁の前で、企業は投資をするほどの価値を見いだせていません。

データが手段ではなく目的として機能していた時代に、データ活用ツールの導入に関する企業のアプローチは、ユーザー中心ではなくトップダウン方式でしたが、これはほとんど失敗してきました。私自身も、このようなアプローチによって持続的な変化ができなかったことを実際に何度も経験しました。

このような根本的な理由は、初めの段階から実際の仕事をする人々がどの方向に進むべきかを指し示してくれるデータ活用ツールが存在しないからです。

そこで、こうしたツールが不足していることから、企業や個人レベルでデータ活用がうまく行われていないという問題意識から起業することを決めました。少ない努力で迅速に問題を理解し、解決できる効果を実感できるサービスを提供したいと思いました。

つまり、実務者自身の業務の結果として生じたデータを、主体的に精密に理解し、改善することができる必要があると考えています。そこで、分析行為よりもデータを実用的に活用することに集中できるツールを通じて、実務者がデータ活用の主体となる「実務者のためのデータツール」を作りたいと考えました。

ユーザー主導のデジタル変革になるためには、Analyticsのようなデータ活用ツールもユーザーエクスペリエンスに焦点を当てる必要があります。この場合、データを分析する作業は、データを使う人にとって、費用以上の価値や利益をもたらす体験を提供するデータツールを作ろうと考えました。

-強みや特徴を教えてください。

地上波テレビのように一方向に情報を提供する伝統的なダッシュボードやBIツールは、主に主要指標のような反復的で頻繁な質問に対する回答を提供する役割を果たし、今もこのように動作しています。

しかし、組織内で発生する様々な状況に対応するための数多くの質問は、現在のデータツールでは処理することが困難です。例えば、商品群、年齢層、曜日、時間帯別に先月の売上を比較したり、今月の売上の変動要因を把握する作業は、従来のデータツールでは面倒で不可能な場合が多いです。これらの作業が難しい理由は、実務者が主体的にその作業を行うことができない環境に置かれているからです。そのため、HEARTCOUNTのデータツールは、実務者が直面した問題に対して主体的に答えを探すのにかかる時間と労力を大幅に削減することができます。HEARTCOUNT ABIでは、経営指標をマクロ的に確認するBIと、指標から誘発された多数の質問に対する定量的な答えを求める分析機能を世界初、有機的に統合しました。

また、これまでの分析ツールは、人が自分で仮説を立ててその結果を見て確認する方法に使われてきました。しかし、これには実務者の時間と仮説を考える際の知識に限界があり、当然の結果しか得られないことがあります。

HEARTCOUNT独自のHypothesis-Free分析技術により、機械がすべてのケースの数で仮説を立てずに分析し、有用な結果を自動的に提示するSmart Discovery機能も当社の強みです。

さらに、データリテラシー教育にも力を入れており、韓国1位のデータコミュニティである「データヒーロー」を運営中です。これにより、データ活用が難しい個人事業主や就活生を対象に無料のデータツール、成長と交流の場を提供します。

-活用事例を教えてください。

 HEARTCOUNTは特定の産業に限定されないHorizontal Enterprise Softwareです。主に金融、教育、流通/Eコマースなどの分野で経営指標(KPIなど)や運営効率を改善するためのデータプラットフォームとして活用されています。

例えば、金融分野の場合、損害保険関連事業で活用されることもあり、自動車保険などの損害額を最適化するために、保険金請求タイプ別に適切な補償額と過剰な補償パターンを把握します。また、補償額が増加しているなどの新しいトレンドを事前に把握し、補償額の漏洩を防ぐためにも活用されます。

流通/Eコマース分野の場合、全国にチェーン店を持つレストラン事業での活用事例を例に挙げると、店舗の生産性/収益性を高めるための実行可能なインサイトを見つけるためにデータを分析します。このケースでは、従業員の高い離職率を防ぐための採用基準や環境的要因などのインサイトを把握し、運営指標を改善するために活用されました。

-日本市場をどう見ており、日本に進出することになった理由は何ですか?

 日本は現在、国家レベルでデジタル転換を推進している状況ですよね。IMD World Digital Competitiveness Rankingによると、日本のデジタル競争力は64カ国中29位(シンガポール4位、韓国8位)と評価されており、比較的低いランキングの主な原因としてデータ分析能力の差が指摘されています。

このような状況の中で、韓国市場と異なりながらも似ている点が多い日本市場でのHEARTCOUNT製品とデータリテラシー教育コンテンツは、日本の実務者のデータスキルの溝を埋めることに実質的な貢献ができると思います。韓国と異なる部分を持つ日本の文化や特性をよく把握し、ローカライズ戦略を立てたので、日本は勝算のある市場だと思います。

データ能力の強化と問題解決のための最高のツールとしてブランド化されるまで、中長期的な観点から個人を対象に無料ツールとコミュニティの構築に努力すれば、良いビジネスチャンスが自然に生まれると信じています。

-今後の計画やビジョンについて教えてください。

最近、生成型AIが世界的に大きな注目を集めており、データ分析にも適用されることが多いです。韓国では産婆術とも呼ばれるソクラテス式問答法(Socratic Method)が示唆するところが大きいと思います。しかし、会社の未来に関わるような重要な質問に対する答えを、ただ機械が提示した通りに受け入れて適用することは、非常に難しいと言えます。人間は、他者によって提示された答えをすぐに受け入れるのではなく、自分で検討した上で、自分が望む正解を探す方法で知識を生産します。

このように、HEARTCOUNTのデータツールは、各社のビジネス状況や質問に合った有用な定量的な事実を発見できるように、ユーザーの疑問点に対して機械が過度な解釈や主張をしない代わりに、定量的で正確な事実を答える形式でデータを提供します。ユーザーはこれらの答えの中でまた新しい疑問が発生し、機械が回答する形式のインタラクションを繰り返し、最終的にユーザーが望む答えを多くの質問とデータの中から見つけ出し、知識を生産することができるようになります。これがデータ分析・活用の自動化技術が進むべき方向だと個人的に思っています。ちなみに本機能は今年中にリリースを目指し、現在開発中です。

IDK2はデータ分析ツールを通じてナレッジワーカーの生産性を高め、データ活用ツールによる幅広い生産性向上を追求しています。また、2028年までにアジア最高のデータコミュニティを構築したいと考えています。そのため、日本と韓国のナレッジワーカー4千万人のうち10%である400万人をコミュニティメンバーとして確保したいと考えています。短期的には2025年までに各国で6万人ずつ、合計12万人のコミュニティメンバーを確保することが目標です。個人ユーザーが活用できる優れたデータツールとして定着するためには、学び、つながり、問題解決が重要な要素だと思います。これをベースに、日本と韓国を中心軸としたアジア最高のデータコミュニティを作りたいと考えています。

当社のキャッチフレーズは「努力のいらない分析(effortless analytics)ですべての実務者が熟練したアナリストになる(everyone is an analyst)」です。このため、数多くのデータに関するお問い合わせから関連する分析レポートの生成までの作業を最大限自動化することに研究開発力を集中しています。


株式会社IDK2 ―ヤン・スンジュンCEO

HP:https://www.heartcount.io/ja