旅行業界の完全DX化を目指す|KAFLIX CLOUD シン・ジョンミンCEO
株式会社KAFLIXCLOUDは、2022年7月に沖縄県那覇市に設立。レンタカー基盤のCLOUD ERPシステムとキオスク端末によりレンタカー市場の完全DXに成功した韓国の技術を基に、独自のノウハウで日本展開している。今年、10月にはFVM(フクオカベンチャーマーケット)に登壇。11月に行われた「Resortech EXPO 2022 in Okinawa」では総合グランプリ獲得、2022年~2023年にかけて行われる「Okinawa startup program」では最終採択企業として選定され、設立年から日本国内で注目を集めている。
ー御社はどのような経緯で日本に設立されましたか?
KAFLIX CLOUDの親会社である韓国のKAFLIX(カフリックス)は6年程前からリアルタイムのレンタカー予約サービスを展開をしています。
6年前、韓国のレンタカー予約はアナログ方式で、予約をする際には電話を使用し、ホームページが存在していても、ほとんどがお問い合わせ機能にとどまっていました。
KAFLIXは、レンタカー会社とユーザーの双方の利便性を追求し、世界初のリアルタイム予約が可能なSaaS基盤のERPシステム及び、それにつながるキオスク端末を開発しレンタカー業界のDX化を進めてきました。
現在、韓国における登録台数は、4万2,000台以上に上り、取引額は4000憶ウォン、マーケットシェア率は80%を誇る会社として成長してきました。
そして2021年、ポストコロナを見据えてグローバル展開を構想し世界各地を回ってみると、現在の日本のレンタカー業界が、6年前の韓国と同じようにアナログシステムであることに気が付きました。そこで韓国でこれまで培ってきた経験をもとに日本のレンタカー市場のDXを目指し、日本進出することとなりました。
ー御社が提供するサービスについて教えてください。
KAFLIX CLOUDのコア技術は3つあります。1つ目は「SaaS基盤のERPシステム¹」です。航空券やホテルの予約では既にERPシステムを導入している場合が多く、ユーザーが直接アプリやサイトを通じてリアルタイムで予約をすることが可能です。しかし、レンタカー市場にはこれまでERPシステムを導入した例はなく、弊社が日本で初となります。
¹EPRシステム:「Enterprise Resource Planning」の略で「統合基幹業務システム」を指す。
これまで、レンタカーを予約する際、車両タイプの選択はできるものの、色や具体的な車種を指定することはできず、利用当日にならないと利用する車両の詳細が分からないということが当たり前でした。そしてレンタカー会社は、予約が入ると手動で予約処理を行っている場合が多く、手書きのホワイトボードで整理をしている会社も存在しているのです。
しかし、EPRシステムを導入することで、ユーザーは当日に乗車する車を予約の段階から、色や車種の指定ができ、レンタカー業者は現在の予約システムに配置していた人材の1/3程度で運営をすることが可能になります。
2つ目は、EPRシステムと繋がっている「キオスク端末」です。現在、日本の旅行業界は前例のないほどの深刻な人手不足問題に直面しています。レンタカー業界も例外ではありません。現場の人手不足により、保有している車を100%稼働させることができなくなっているのです。
弊社が開発したキオスク端末では、顔認証機能を搭載しており、受付から決済までのチェックイン機能を装備しています。これにより、受付での業務をキオスク端末で完結することが可能になります。EPR技術を活用した予約システムとキオスク端末を導入すると、現在の約1/10程度の人手で運営することができます。
3つ目は、コネクテッドカーになります。現在は、現物の鍵がなければ車を動かすことはできません。しかし、弊社のコネクテッドカーシステムは、決済完了後、スマートフォンのアプリを通して鍵の権限を付与できる仕組みになっております。
この3つの技術を組み合わせると、EPRシステムによる予約で希望する車両を細かく選択し、当日はキオスク端末でチェックインをします。そうするとご自身のスマートフォンに鍵の権限が与えられ、予約から乗車まで非対面で完結することが可能になります。
また、車両にOBD端末を装着することで車両の運行記録を分析でき、ビックデータの収集が可能になります。これにより、旅行者がどこを訪れたのか、どんなルートで観光したのかというデータが収集され、観光地の飲食店や施設は、広告を効果的に打つことができるようになります。この一連のコネクテッドカー事業は、現在システム構築が完了し、端末機の製造をしている日本国内の業者を選定している段階です。
ーサービスの強みや特徴はなんでしょうか?
まず第一の強みは費用面です。弊社では導入の初期費用がほとんどかかりません。他社では、端末1台当たり約150万円以上かかり、全ての取引に手数料を要し、端末1台で処理できる車の数も限られている場合があります。
弊社では、予約システムは無償提供しております。また、キャンセルされた取引については手数料はいただいておらず、実稼働の2.2%を手数料としていただいています。キオスク端末はサブスクリプションモデルで月額利用料2万2000円で利用することができます。
なぜこの価格設定をしたのかというと、便利なアイテムをまずお客様に使っていただき、実感していただきたいという思いからです。それにはまずレンタカー会社の皆さんに、システムや端末の導入していただかなければエンドユーザーまで届けることはできません。そのためレンタカー会社にとって導入をしやすい価格を設定しました。
今までのレンタカー予約は、当日まで車の詳細が分からない「非リアルタイム」でしたよね。会社が導入しているシステムをお客様は使うしかなかったからです。「非リアルタイム」は当たり前ではないとお客様に知っていただきたいです。
ー日韓での市場の違いや似ている点、日本市場の特徴はありますか?
日本と韓国とでは、サービスに対して不便を感じた時の行動に違いがあると思っています。
まず韓国の場合は、ユーザーがサービスに不便を感じると、それを伝えるという傾向があります。すると企業はそのペインポイントを改善しなければユーザーは離れていってしまうので、すぐに改善を行います。韓国ではユーザー発信でサービス改善される場合が多くあり、韓国のDXが速かったこともこの文化に起因していると思います。
一方で日本では、決められたルールを守る文化があると思います。既存のシステムに不便を感じても仕方ないと納得する場合も多いのではないかと思います。日本では企業側が決めたり、作ったシステムをユーザーが受け入れる傾向があり、この点が日韓の文化の差であると思います。
また日本の旅行業界ではよく「おもてなし」という言葉が使われますよね。日本のおもてなしは「きちんと説明をしてお客様に満足していただく」というユーザーにとって素晴らしいものであると思います。ですが、このおもてなしを実現するには潤沢な人材が必要不可欠です。現在のようにお客様を受け入れたくても受け入れられない状況にまでなっている人手不足の中で、これまでの方法で「おもてなし」を100%発揮することは難しいと感じています。
例えばレンタカー会社は、受付でお客様ひとりひとりに毎回同じ内容の説明をしています。限られた従業員の数でお客様ひとりひとりに繰り返し同じ内容を説明することは従業員にとって負担となってしまいます。
これからは単純作業はロボットや機械に任せて、人はもっとクリエイティブな仕事を通じておもてなしをするべきだと考えています。人に頼った業務を減らし新たな形でのおもてなしをお客様に提供できるよう、弊社は旅行業界のDX化を追求していきたいです。
ー最後に伝えたいことはありますか?
最近、岸田総理が「スタートアップ育成5カ年計画」で、スタートアップへの投資額を5年で10兆円規模にすることを発表しました。政府も産業全般においてDX化を目指しているのだと思います。日本国内でもスタートアップが注目され始め、韓国で築いた経験や技術を日本において広めることのできる一番良いタイミングだと思っています。
弊社は日本の新しいレンタカーモデルを作り、来年2023年からは沖縄を超えて日本全国、そして世界に進出することを目標としています。ですが、旅行業界をDX化するという目標は弊社だけで実現できることではありません。
旅行業界、レンタカー業界のDXにご興味ある方や企業と一緒に日本の旅行業界のDXをスピードアップさせていきたいと思っていますので、ぜひ、多くの方に弊社のサービスを知っていただいて、お声がけしていただきたいです。
株式会社 KAFLIX CLOUD ₋CEO 辛正民(シン・ジョンミン、Roy)
公式ブログ:https://blog.kaflixcloud.co.jp
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