過去数年間、スポットライトを浴びてきた韓国のスタートアップエコシステムは、今、新たな飛躍のためのターニングポイントに立っている。投資環境の変化と、より激化する競争の中で、スタートアップはどのような困難に直面しており、これを克服するためにどのような支援が必要なのだろうか?

韓国のスタートアップエコシステムと展望:機会と挑戦

韓国のスタートアップエコシステムは現在、全般的に萎縮した雰囲気の中で、グローバル進出とAI技術の活用を通じた新たな突破口を模索している。THE VC(ザ・ブイシー)のデータによると、2024年の上半期に韓国のスタートアップ及び中小企業を対象とした投資件数(Post IPO投資は除外)は497件と、前年同期比32%減少したことがわかった。

Google(グーグル)と中小ベンチャー企業部(省)、創業振興院が共同で進めるスタートアップ支援プログラム(チャングプログラム)に参加した100人のスタートアップの代表を対象に、最近行ったアンケートの結果、42.7%は現在のスタートアップエコシステムの現況に不満(とても不満8.7%、不満34%)を示した。これは普通(33%)、または満足している(満足21.4%、非常に満足2.9%)回答者を上回る数値だ。

調査結果によると、スタートアップエコシステムに対する悲観的な見通しは、主に投資市場の縮小(75.8%)と景気後退(70.5%)によるものであることが分かった。これに加えて、政府の支援政策の不足(32.6%)、人材確保の困難(26.3%)、規制および法的制約(14.7%)などの問題が複合的にスタートアップの成長の障害となっている。

それにもかかわらず、韓国のスタートアップエコシステムを肯定的に評価する要因も存在した。回答者が選んだ肯定的な要因としては、多様な支援プログラム(70.4%)、海外市場進出の機会(56.3%)などが挙げられ、エコシステムネットワークの拡大(22.5%)とイグジット事例の増加(7%)も良い評価を受けた。

新たな突破口:グローバル市場とAI

このように困難が増す状況で、韓国のスタートアップは海外市場を突破口に見い出していた。多くのスタートアップがすでに海外市場に進出している(37.9%)か、進出を準備している(52.4%)ことが明らかになった。ターゲット市場は北米(73.7%)、東南アジア(66.7%)、日本(62.6%)の順だった。また、海外進出時にビジネスネットワークおよびパートナーシップの確保(62.6%)、現地市場の情報の把握(59.8%)、海外資金の確保(42.4%)などで困難を経験していると回答した。

海外市場に加えて、もう一つの機会要素としてAI技術の活用を挙げた。47.6%のスタートアップがすでにAI技術をアプリやゲーム開発に活用しており、41.7%は近いうちにこれを導入する計画であることがわかった。しかし、回答者の多くはAI専門人材の不足(58.2%)、技術的な複雑さ(46.9%)、高い初期投資費用(41.8%)のために困難に直面していると答えた。

不景気の中でも採用拡大に乗り出すスタートアップ

韓国のスタートアップは、雇用市場に活力を吹き込む主体でもある。韓国のスタートアップは、景気の不況と投資市場の縮小にもかかわらず、積極的に人材採用に乗り出している。Google Play(グーグルプレイ)が「チャングプログラム」の参加者100人にアンケートを行った結果、85.4%のスタートアップが今後1年以内に採用計画があると答え、特に開発者(83.7%)とマーケティング人材(50%)に対する需要が高かった。これは多くのスタートアップが技術力とサービスを高度化し、成長を加速しようとする戦略を取っていることを示唆している。

AI専門人材確保のカギ

89.3%ものスタートアップがすでにAI技術を活用しているか、導入を計画しているなど、関連技術の重要性が増す中、AI専門人材の不足(58.2%)が最も喫緊の問題として浮上している。

従って、スタートアップは技術人材の確保を通じて競争力を高めようとする意思を示している。ただ、約4分の3にあたる74.8%のスタートアップがオンライン採用プラットフォームを通じて人材を探しており、63.1%は創業者個人の人的ネットワークを活用して採用に乗り出すなど、人材獲得のためのチャネルは限られているようだ。スタートアップと人材をつなぐ官・民の努力が実質的に役立つ。

実際、昨年7月にGoogle(グーグル)とソウル市が共催したソウルの若者対象の人工知能(AI)関連の就職情報など、未来の仕事に関して情報を提供する「2024 SeSAC(セサック)ジョブフェスティバル」に参加したAROOO(アルー)、ActionPower(アクションパワー)、JJ&Companies(ジェイジェイアンドカンパニーズ)、Lablup(ラブルアップ)などのスタートアップが、開発者とAI関連の人材採用を進めた。

積極的な人事および報酬システム導入の必要性

多くのスタートアップは依然として人事および報酬システムの構築に困難を感じている。会社の人材運営に関するフレームワークを備えていることに肯定的な回答は71.8%(やや共感39.8%、共感25.2%、非常に共感6.8%)だったが、「そうは思わない」と回答した割合も28.2%(非常に共感しない12.6%、共感しない15.5%)に上った。

また、「社員のパフォーマンスと報酬システムが相互に連携しているか」との質問には、「非常に共感する」との意見は11.7%に過ぎず、23.3%は「共感しない」と答えた。これは依然として人材の取り込みと定着のためのシステムが初期段階にとどまっているスタートアップが存在することを示している。

しかし、株式報酬など、スタートアップでよく活用される報酬制度については、21.4%が「共感する」、15.5%が「非常に共感する」と回答し、報酬が人事システムにおいて重要な要素であることを示唆した。

原文:https://platum.kr/archives/235602