韓国との連携を強化、沖縄の成長を牽引するプラットフォーマーとしての役割…沖縄ITイノベーション戦略センター

今年6月に大韓貿易投資振興公社(KOTRA)および、財団法人済州創造経済革新センター(JCCEI)とMOUを結び韓国との連携を強化した沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)。今回の記事では、ISCOが取り組む日韓そして、沖縄と済州の両地域の特性を活かした日韓双方向のスタートアップ支援についてご紹介していきます。

ISCO(沖縄ITイノベーション戦略センター)とは?

一般財団法人沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)は、沖縄県の官民が一体となって、ITイノベーションの実現により社会に貢献する機関として2018年に設立された。沖縄県経済の振興を図る産業支援機関として県内産業界の課題解決と新たな価値創造を促進するためデータとデジタル技術の利活用とイノベーションをもたらす機会を創出することをミッションとし「沖縄県の全産業の振興をResorTechで支援するプラットフォーマー兼シンクタンクとなること」を目標としている。

戦略提言、沖縄における共創・テストヘッド、事業グロウアップ/DXサポート、スタートアップ支援、人材育成プログラム、ビジネスマッチング等を行っており、沖縄県内でIT・人・事業を育て、沖縄全産業の成長と国際競争力を向上することに貢献をしている。

HPから引用

沖縄の社会・経済DXを推進する取り組み「ResorTech Okinawa」

「ResorTech(リゾテック)」とは、Resort(リゾート)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせた言葉で、沖縄においてデジタル社会を実現していく中で社会・経済DXを推進する取組の総称。リゾート地である沖縄の観光産業をテクノロジーで支えるという発想からスタートし、今では「リゾート地沖縄のあらゆる産業を支え、その生産性や付加価値を向上させるテクノロジー」という意味で使われている。

「ResorTech Okinawa」の一環として行われている「ResorTech EXPO in Okinawa」は、国内外のIT事業者と多様な産業の事業者とのビジネスマッチングの場として機能する複合型見本市(展示、商談、セミナー)。このイベントは年に1度開催されており、2019年の初開催以来、コロナ渦でも4回開催をしてきた実績がある。

「ResorTech EXPO 2022 in Okinawa」テープカットの様子

昨年の出展企業は160社、来場者数はオンライン込みで1.3万人に及び、過去最大規模で行われた。コロナの影響もあり、正式に海外企業を招聘はしていなかったが、既に日本に進出しているベトナムや台湾、韓国の企業が参加している。展示部門においては、韓国のスタートアップ企業「Kaflix Cloud」がレンタカー市場のDX化を目指す取り組みで総合グランプリを受賞。Kaflix Cloudの受賞は、沖縄の観光産業におけるDX化への一歩として、海外進出企業による貴重な事例となった。

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今年は海外から出展・招聘が、韓国からは3社、台湾から3社確定している。

アジア展開に最適なビジネス環境を最大限に生かす、新たに韓国との連携強化

ISCOは、中国、韓国、台湾、香港をはじめ東南アジア諸国とも空路で4時間圏内である沖縄県の優れたアクセス環境を生かし、アジアとのイノベーションに積極的に取り組んでいる。これまでに、中国、台湾、ベトナムなどの関連団体と協力するためにMOUを結んでいる。

さらに、人材育成支援にも積極的に取り組んでおり、中でもアジア諸国から沖縄県にIT人材を招聘・派遣するため、県内のIT企業と関係諸国のIT企業との人的ネットワーク構築を支援している。

今年6月には、新たに韓国との連携を一層強化するために、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)と韓国・済州島に位置する財団法人済州創造経済革新センター(JCCEI)とのMOUを締結。このMOUにより、両国間の「スタートアップ交流」や「人材の交流」を強化・推進していく予定だ。また韓国・済州島と沖縄の類似特性を活かして両地域の観光産業をさらに活性化させていくことでも合意している。

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今回のKOTRAとのMOUにより、今年9月に開催されるKOTRAと韓国メディアの電子新聞主催の生成AIやDX、モビリティをテーマに行われるイベント「Global Mobile Vision 2023」にISCOも参加をする予定だ。そして、今年も沖縄で開催される「ResorTech EXPO in Okinawa」には、韓国から2社企業を招聘することも予定されている。

また、次年度は、人材分野に進出する予定だ。韓国政府が行う若者の海外就職支援事業である「K-MOVE」に参加し、ソウルで行われる就職フェアへ参加し「沖縄就職」をアピールする計画だ。また、済州との連携から、済州大学などの教育機関との連携を強化し、セミナーの開催や学校職員との関係構築に努めるとのことだ。

沖縄と済州の共通点と、両地域での活躍が見込まれる沖縄のスタートアップ

済州と沖縄の共通点は、どちらもリゾート地、観光地であるという特性があり、主要産業は済州も沖縄も観光業だ。経済的な側面でも共通部分が多い両地域で、スタートアップを支援していくことで、企業や人が集まり、新しい産業が地域に根づくことを目指している。ISCOでは「相互に連携すること」を重要視しており、沖縄に韓国のスタートアップや人材を招聘するだけでなく、沖縄から済州、韓国にスタートアップを紹介をし、お互いに行き来できる関係を目指している。

9月にISCOと済州に向かう日本のスタートアップがある。サンゴの陸上養殖事業を行う「サンクスラボ」だ。沖縄では陸上でサンゴの産卵に成功しており、この技術を持って済州でもサンゴの陸上栽培を試みる。現在は、済州の海水を沖縄に持ってきて実際にPoC(実証実験)を計画している段階だ。

サンゴの陸上養殖の様子/サンクスラボ提供

また、観光地のスタートアップとしてISCOが注目している企業は、ヘリコプターを活用したエアモビリティ事業を行うスタートアップ「Blue Mobility」。現在、那覇空港からリゾートエリアである恩納村にいくには、レンタカーを借りたり、移動を含めると空港から2時間くらいかかってしまうケースが多い。しかし、ヘリコプターを利用すれば所要時間を25分に短縮することができ、さらに空から沖縄の綺麗な海を見ながらチェックイン場所まで移動ができる。料金も9,800円からに設定されており、一般の方でも気軽に利用できる点も特徴。

(左から)BlueMobility代表取締役 道廣敬典氏、機体からの眺望/BlueMobility提供

今後、こういった済州でも活躍できそうなスタートアップを発掘し、進出していけるよう支援を強化していく。

今後の展望

沖縄はアジアを中心とする海外と日本を結ぶHUB拠点を目指しており、ISCOはIT領域においてその役割を担っている。これまで述べたようにISCOは、韓国・済州と「IT人材交流」「スタートアップ連携」「観光産業の活性化」を進めていく予定だ。中でも「IT人材交流」については2023年度に関係団体との連携構築を行い、次年度から韓国IT人材の沖縄就職希望者と沖縄県内企業のマッチングを開始し、今後はその他のアジア諸国とも同様の活動を行っていく。単に短期的な人材マッチングだけでなく、人材の交流をもとに韓国を筆頭にアジア諸国とのビジネス強化を促していくことも視野にいれているという。スタートアップについても既に韓国・台湾企業の沖縄進出支援を行っており今後はその他諸国にも拡大していく予定とのこと。今後のISCOの活動に着目していきたい。

(左より)加賀谷陽平常務理事、稲垣純一理事長、山田一誠専務理事


一般財団法人沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)

HP:https://isc-okinawa.org/

住所:沖縄県那覇市銘苅二丁目3番6号 那覇市IT創造館4階