新企画!『韓国MZを語る』記念すべき第1弾です。
この企画ではMZ世代に関する知識を持っている方々をゲストスピーカーやライターとしてお迎えし、韓国をはじめとする日本やアジアのMZ世代の特徴や流行などについてお話しいただきます。
今回はゲストスピーカーとして、以前インタビューにも参加してくださったKakaoStyle(カカオスタイル)で韓国ライフスタイルメディア『Kitto(キット)』のチームリーダーを担うチャ・スンハクさん、日本エディターを担当する森千尋さんをお迎えしました。
本記事では韓国のMZ世代について、次回記事ではアジアMZ世代とKカルチャーについてお二人の考えをお聞きしていきたいと思います!

チャ・スンハク
チームリーダーとしてKitto事業全体を引率している。TikTok、Woowa Brothers(ウーワブラザーズ)、Spoon Radio(スプーンラジオ)など様々な企業で多様なパートナーと協力し、コンテンツの企画・制作・配信、また、新規事業開発業務を経験。

森 千尋
日本版Kittoのエディターとして多数のオリジナルコンテンツを作成。過去にはNOWNOW(ナウナウ)やZigzagJP(ジグザグジェーピー)でのデジタルマーケティングも経験。
Kカルチャーの最前線を追い求めながら感じる魅力
🎙️KORIT編集部
お二人はそれぞれKittoのチームリーダー、日本向けコンテンツのエディターとして常にKカルチャーの最新情報を追っていると思いますが、その中で感じているKカルチャーならではの魅力はありますか?
👩💻森 千尋
やはりスピード感はかなり大きな魅力だと思います。カルチャーだけでなく韓国社会全体としての魅力でもありますね。
Kittoの編集に携わりながら最新の情報を追いかけていると、KカルチャーやMZ世代という枠に限らず、韓国社会全体としてのスピードを強く感じるんです。
コンテンツの素材を探していると、毎日どんどん新しい話題を目にしますし、流行りの移り変わりも驚くほど速いです。
あるコンテンツが流行り始めたかと思ったら、それを見た人がすぐに真似して投稿する。さらにそれを真似する人たちが出てくる。そうしてものすごい速さで流行が広がり、入れ替わります。
その速度は世界全体で見ても韓国が最も早く、広く知らせようとするエネルギーを感じます。
一週間後には全く違う話題で盛り上がっているというのが常なので、エディターとしての苦労は多いですが、話題の入れ替わりが激しい分飽きがこないというのも魅力の一つだと思っています。
💼チャ・スンハク
韓国人の立場からしても、森さんの言葉に非常に共感しました。
私は、過去にTikTokの韓国でのローンチに携わりながら、森さんと同じことを感じていました。
「流行に遅れたくない」「他の人がやっていることは自分もやりたい」そういった国民性の強い韓国であればTikTokは絶対に流行る、ビジネスとしてうまくいくという確信を持ちながら事業に携わっていました。
韓国の人々は流行りには敏感で、遅れずについていこうとする国民性があるんです。
👩💻森 千尋
国民性、確かにそうですね。韓国特有のスピード感を支える他の要素として、国民性もあると思います。
外国人として韓国に10年ほど住んでいますが、「常に流行を追っていたい」「流行に乗り遅れたくない」という欲求が非常に強いなと日ごろから感じています。その中でも特にMZ世代は流行に敏感ですね。
アイテムやメイク、アイドル、曲、キャラクター、モチーフ、ミームなどをメディアやSNSでキャッチアップする姿勢は、情熱すら感じるほどです。
💼チャ・スンハク
そういった考え方や国民性がKカルチャーといったひとつの大きな概念を作り上げ、魅力の生成に繋がっているんだと思います。
チャンスをものにする韓国の執念
🎙️KORIT編集部
日本でKカルチャーを消費している私自身も、次々に流行が生まれる韓国での移り変わりの速さには驚かされるほどですが、そんな速さ以外のKカルチャーの魅力を挙げるとするとどんな点が考えられますか?
💼チャ・スンハク
他の魅力を挙げるとしたら、クオリティの高さではないでしょうか。
先ほどお話しした「速さ」はあくまでもKカルチャーが長く、より広範囲に注目されるようになった理由の一つであって、注目の的になっていること自体は韓国だけが特別な訳ではないんです。どの国・文化圏でも、その文化が注目される機会が一度は訪れます。
例えば、90年代初頭にはTheBeatles(ザ・ビートルズ)をはじめとするイギリスの音楽が世界的に流行しましたし、90年代後半から2000年代中頃までは日本のアニメや漫画、音楽といったポップカルチャーに対して世界中の人々が強い関心を抱いていました。
それと同じように、韓国にもそのタイミングが来ただけなんです。
ただ、ここまで大規模にKカルチャーが全世界で流行しているのにはちゃんと理由があります。
それは、タイミングが来た以上、それを絶対に逃さない、執念とも取れる韓国の意思の強さです。
韓国は国土も狭く、少子高齢化も進んでいます。その中で事業規模を広げるのは限りがあり、多くの企業が海外市場への進出を考えます。そういった背景をもつ韓国で、自国の文化が脚光を浴びているとなれば、このチャンスを最大限生かさなければならないという使命感に駆られるのは明白です。
そのため現在、個人や企業だけでなく国全体でこのチャンスに対するサポートが行われています。
K-POPをはじめとした、エンターテインメント・フード・ビューティー・ファッション・ITやAI技術までも、あらゆる業界を伸ばしていこうとしているんです。
そして、その努力の結果がクオリティの高さに結びつきます。
学歴社会の中で、他に負けないように、1番になれるように生き抜いていくのと同じく、世界で生き残っていくために必死でクオリティをあげていきます。実際に5年前より1年前、1年前より半年前、といった短いスパンでもクオリティがはるかに良くなっているのを感じられます。
今年、大阪で開催されたMAMAという韓国の授賞式でそれを痛感しました。
MAMAで見たステージは、過去に見たアメリカンフットボールのハーフタイムショーより素敵な作品だったんです。
バイクに乗って会場を走り回ったり、華やかな紙吹雪が舞ったり、集まった多くのファンも、ペンライトを掲げ全力で楽しんでいました。
でも、アーティストも、スタッフも全員が韓国人というわけではないですよね。
ただこのようにどんどんクオリティが上がっていくKカルチャーだからこそ、そこに魅力が生まれ、全世界からエネルギーと資本が集まり、更なる発展を続けているんだと思います。
急速に変化するMZトレンド
🎙️KORIT編集部
最近、韓国では日本文化が人気だと聞きましたが、実際の韓国のMZ世代のトレンドにはどんな特徴がありますか?
👩💻森 千尋
確かにここ最近は日本文化が流行ってます。
日本より少し遅れて、韓国風にローカライズされて入ってきているのを日本人の立場から見ていると少し不思議な感じもします。
ただ、そうやって入ってきた日本文化は特別なものというよりは日常化されているようにも感じます。和食レストランや居酒屋があちこちにあったり、コンビニでも日本のお菓子を普通に売ってるんです。
💼チャ・スンハク
確かにこの数年は、これまでの比にならないくらい日本風居酒屋、レストラン、カフェなどが増えましたね。日本語で書かれた看板もよく見かけるようになりました。
👩💻森 千尋
あとは最近はハイボールを出すお店が特に増えています。日本のハイボールとは違って少し甘いのですが……
ただ、最初から順調に受け入れられていたわけではなく、問題になることも多かったです。
そもそも日本語の看板では何と書いてあるか分かりませんし、韓国では「サムギョプサル屋」「チキン屋」といったように何が食べられるお店なのかはっきりと分かれていることが多いんです。なので、居酒屋とはいったい何屋なのかという意見を聞くこともありました。
少なくとも何を売っているのかわからないと、中々お店に入ろう、今日はここで飲もう!とはなりませんよね。
でも、少しずつ「日本風居酒屋」という概念が浸透していって、日本のお酒文化、食事文化も一緒に広まってきたように思います。そうやって日本の文化が受け入れられながら、どんどん日常化していったんだと思います。
💼チャ・スンハク
森さんがおっしゃったように今韓国では日本の食文化、キャラクターなどが流行しています。
ただ、それは本当に「今」だけ流行っているのかもしれません。
私はMZ世代ではないですが、Kittoを通じてMZ世代に関連する話題を追っていると、韓国のMZ世代の特徴として「飽き」の速さを感じます。
例えば少し前までは乙支路がアツい!と言われていましたが、今の流行は聖水洞です。そして、すでにその流行も次の場所に移りかけている。
このように、ものだけでなく場所やあらゆる分野において次々に新しい流行が生まれ、移り変わっていくんです。
「飽き」の速さと一言で言ってしまうとネガティブに聞こえるかもしれませんが、次の流行となる新しいキーワードや、もっと好きなもの、より面白いものを見つけるのが得意ともいえます。そうやって自分たちの世代を作り上げていっているのではないでしょうか。
もちろんネガティブな側面もあって、ものすごく熱狂して好きになったものでも、何かミスや問題が生じたときに極端にそこから距離を置こうとします。
それに関連して最近「ソンジョル(손절、冷める)」という言葉が日常的に使われるようになりました。言葉自体は元からありましたが、私が大学生の時には日常的に使われる表現ではなかったんです。
👩💻森 千尋
確かに私が韓国に来た10年前には聞かなかった言葉ですね。
💼チャ・スンハク
そうなんです。ただ、最近は何かというと、「ソンジョル」「ナラクカッタ(나락갔다、炎上した・終わった)」といった言葉を使うんですよね。
こういった言葉からもわかるように、好きになるのが速い分、飽きたり嫌いになるのも速いのがMZ世代全体の特性だと考えています。
Kビューティー市場でもインディビューティーブランドと呼ばれる、小さなチームが作ったブランドがその流行をリードするように変化しています。その分、流行も細分化されていて、移り変わりも速く、ブランドも次々と生まれ続けています。
こういった形でどの業界もMZ世代の影響を受けて新陳代謝のいい市場に変化しています。
Kカルチャーの今後
🎙️KORIT編集部
では最後に、今後のKカルチャーについて、どのように展開していくと思われますか?
👩💻森 千尋
今はKカルチャーそのものが注目を浴びていますが、この人気には限界があるのではないかと考えています。
ただ、最近他の文化と融合して新しいコンテンツを生み出している場面をよく見かけるようになって、そのように幅が広がっていけば、もっと多くの魅力が引き出され、「飽き」の来ない流行として長く愛されるのではないかと思っています。
💼チャ・スンハク
私も森さんと似たような考えです。
それに加えてそんなKカルチャーの中に『Kitto』がいたらいいなと思っています。
私は『Kitto』のようなメディアがうまくやっていくことが、Kカルチャーがより長く注目を浴び続けることに繋がると思うんです。
もちろん情報の元となるコンテンツも重要ですが、そのコンテンツを継続的にうまく伝えられるメディアの存在も必要になります。
以前、こんな話を聞いたことがあります。
CNNのような放送局が登場したことで、アメリカのイラク戦争などにおける西洋的な思考が24時間生中継され、世界中の人々がそれを目にし、アメリカがますます文化的、経済的に大国になっていったというのです。
それと同じように『Kitto』のようなメディアが、世界中のより多くの人々と韓国のコンテンツが出会うきっかけになり、この流行の継続に貢献できるのではないかと期待しています。
そしてそのために、これからもこれまで以上に『Kitto』を通して多くの人々に情報を広くお届けしていきたいです。
お二人とも、ありがとうございました!
日頃、『Kitto』を通じて届けようとされているKカルチャーの魅力がよく伝わってきました。
また、最新情報を発信するメディアを運営するお2人ならではの意見や苦労も、大変楽しく聞かせていただきました✨
実際に韓国で感じているKカルチャーの勢いや流行、MZ世代の特長をお聞きして、初めて見えてくる部分もあり今後のKORITでの活動にも生かせるのではないかと思いました🔥
続編となる【後編】が公開されました!『Kitto』のお二人とともに、アジアのMZ世代とKカルチャーの関係をさらに深掘りしています。ぜひご覧ください!👇
【後編】の記事はこちら👀
『Kitto』に関するインタビューはこちら👀