世界環境の日を迎え、持続可能なサーキュラーエコノミーを実現するためには

世界環境の日

世界環境の日 UNポスター 出典: unep

6月5日は、国連が定めた「世界環境の日」でした。1972年、気候変動に対応するためにスウェーデン・ストックホルムで開かれた国連人間環境会議の開幕日である6月5日を記念して制定されたこの日は、環境に対する人々の関心と環境保全を促すために作られた世界的な記念日です。

2023年の「世界環境の日」には、「プラスチック公害をやっつけろ(Beat Plastic Pollution)」というテーマで、グローバルな記念行事が行われ、韓国でも1996年6月5日から法定記念日に指定された後、今年まで着実に環境部主管で記念行事が行われてきました。 

北朝鮮でも朝鮮中央通信を通じて、「世界環境の日を迎え、生物多様性と様々な環境保護事業を進めている」と明らかにしました。このように、環境保護に関する世界的な関心は、政治力学や経済的な利害関係を問わないようです。

おそらく多くの人が、世界で最も緊急に解決すべき問題を一つ選ぶとしたら、「エコ」や「低炭素」のような環境に関するキーワードを選ぶでしょう。それほどまでにわれわれが生きている地球は、温暖化、異常気象などに悩まされています。

われわれの日常でも体感できることですが、特にわずか10年前まで比較的四季がはっきりしていた韓国でも、徐々に春と秋が短くなり、厳しい寒さと猛暑が長くなるのを見ると、環境問題はもはや他人事ではありません。 

このような状況の中で、カーボンニュートラルと環境保全のために、生産から消費までの全段階で製品を消費後廃棄するのではなく、既存の製品の用途を変えてリサイクル、再利用する「サーキュラーエコノミー(循環経済)」という概念が、積極的に産業全般に登場し始めました。 

サーキュラーエコノミー(循環経済)と済州島

サーキュラーエコノミーは、既存の製品を別の用途に加工してリサイクル(Recycle)し、再利用(Reuseable)することで、資源を最大限に循環させ、その過程で経済的価値を創出します。従来の単純なリサイクルとは大きな違いがあります。

このようなサーキュラーエコノミーのために、世界で最も積極的に行われているキャンペーンは、プラスチックの使用量を制限しようというものです。マイクロプラスチックによる海洋汚染を減らすことができ、比較的日常でも簡単に環境保全を実践できる方法だからです。

韓国でもプラスチックの使い捨て用品の使用を制限する様々な制度が生まれています。例えば、毎年1,000万人の観光客が訪れる韓国の観光地「済州島(チェジュ島)」では10日、環境保全のために2040年まで済州島内の「プラスチックゼロ島戦略」を推進し、プラスチックリサイクル率を100%にする計画を明らかにしました。

済州プラスチックゼロ島 – 出典2040プラスチックゼロ済州基本計画(要約版)

済州島は、産業の74.9%がサービス業です。特に数年前から済州島全域の観光地が開発され、様々なカフェやグルメがSNSで話題になり、多くの観光客が済州島を訪れました。それに伴い、ゴミも増えてしまいました。その結果、済州島の廃プラスチックの発生量が10年前に比べ、2倍以上増加しました。これは済州島全体のゴミ量の15%が廃プラスチックであることを意味します。

廃プラスチック排出量の増加を見た政府は、昨年11月から先制的に済州島内のカフェを対象に「使い捨てコップ保証金制度」を施行しました。カフェで使い捨てコップに飲み物を購入すると300ウォン(約30円)の保証金を支払い、コップを返却する際、保証金が戻ってくる制度ですが、参加率は50~60%に過ぎませんでした。

カフェのオーナーには管理責任を、顧客には保証金費用を転嫁するという議論もあり、使い捨てが多い飲食店や観光宿泊施設には、この制度が実施されていないため、公平性の問題もありました。そのため、一部のカフェでは、この制度に対するボイコット横断幕を掲げたりして話題となりました。

 「公平性がなく顧客に保証金を転嫁する使い捨て用カップ保証金制度をボイコットしています」済州ボイコット 出典:済州日報

サーキュラーエコノミーを実践するスタートアップ

このように、NGOや公共の領域でプラスチックの使用を制限する政策などの努力をしていますが、使い捨ての使用量が有効に減っているわけではありませんでした。特に、コロナ禍の影響でデリバリーの需要が増え、使い捨て容器の使用が増加しましたが、最近はデリバリー需要の減少で、使い捨て容器の使用量が減少している今が、サーキュラーエコノミーの好機です。

これに伴い、プラスチックをはじめとする資源に対するサーキュラーエコノミービジネスを通じて、ユニコーン企業(創業から10年以内に企業価値10億ドル<約1393億円>の非上場企業)を目指すスタートアップが現れ始めました。

まず、昨年Googleのサーキュラーエコノミー分野の有望企業育成のためのグローバルアクセラレーションプログラムである「Google for Startups Accelerator :Circular Economy」に選定されたAIベースの生ごみ削減ソリューション企業である「Nuvilab(ヌビラボ)」があります。


Nuvilabは、上記プログラムで唯一選定された韓国企業で、独自に開発したAIフードスキャナーを配食口と返却口に設置し、食品の適正量と食事後の残飯量を分析し、これにより利用者の需要に合わせて食品を準備できるように支援しています。環境部の2023年4月の報告書によると、韓国の生ゴミ排出量は一日14,000トンで、全体のゴミ発生量の約30%を占めています。これにより、多くの経済的コストを節約できるでしょう。

二つ目は、AIベースの循環資源回収ロボットを製作し、サーキュラーエコノミー市場を拡大するために努力している「SuperBin(スーパービン)」です。この企業は、個人がゴミを取引して金銭的な報酬を得て、このように収集したゴミを選別、加工してサーキュラーエコノミープラットフォームの構築に取り組んでいます。

拠点ごとにAIベースの画像センシング技術が適用された回収ロボットを設置し、ペットボトルを回収し、こうして回収されたプラスチックを独自の物流インフラと加工工場で、資源収集から再加工まで、サーキュラーエコノミーの全過程を直接管理します。特に、環境保全やサーキュラーエコノミーに関する教育や文化プログラムも実施しており、一般の人々に環境の重要性を認識させています。

最後に紹介する企業は、綿製品の環境にやさしい資源循環サービスを作っている「JeCLEAN(ジェクリーン)」です。宿泊事業者の寝具・タオルの製作や洗濯、廃棄されるリネンやファブリックに対する再生(recycle)の全過程をビジネスとしているこの企業は、先月5月25日、韓国中小ベンチャー企業部のスタートアップ集中育成プログラムであるTIPS(TIPS:Tech Incubator Program for Startup)に選ばれました。

この企業の事業領域は少し独特です。他の廃棄物サーキュラーエコノミースタートアップは、ペットボトルやプラスチックに注目していますが、JeCLEANは済州島内で焼却されたり埋め立てられる数千トンの寝具類に対する環境汚染問題、そしてグローバル廃棄物の20%を占めるファブリック製品の廃棄物問題を解決するという点で、強みを発揮しています。特に韓国で唯一のビジネスをしているという点が特徴的です。

これとは別に、韓国でTIPSに選定されるということは、他の企業よりも比較的技術や創業アイテムにおいて、明確な強みを持っている企業という一種の勲章のようなものであり、投資においても魅力的だと言えます。  

持続可能なサーキュラーエコノミー

今年3月31日、日本の経済産業省も「成長指向型資源自律経済戦略」を策定し、市場全領域において資源の効率とリサイクル(再生材活用など)を最大化しながら経済成長を図る「循環経済(サーキュラーエコノミー)」を追求することを明らかにしました。今年1月末、韓国でも「資源循環分野重点推進計画」が策定され、これを基に循環経済政策を推進すると報道されました。

「持続可能な循環経済(Sustainable Circular Economy)」が、文字通り持続可能であるためには、政府や企業の制作改善、そして一般消費者の認識と行動の変化が伴わなければなりません。

消費者の行動と意識の変化の観点から見ると、最近環境保全の実践方法として注目されている「プロギング(Plogging)」がひとつの例になるのではないでしょうか。

プロギングは、「ゴミを拾う」というスウェーデンの「Plocka Upp」+「ジョギング(Jogging)」を合わせた造語で、屋外運動や散歩をしながらゴミを拾う環境保全活動です。これを督励するために、企業はゴミを拾って持ってきたり、SNSで認証する顧客に、景品やポイント、グッズなどを提供しています。

しかし、その過程で回収される廃棄物は、プラスチックやペットボトルなど一部だけが回収、リサイクルされるだけで、残りは最終的に全て焼却され、結局大量の炭素を排出することになるため、持続可能性に疑問を呈する人もいます。

もちろん、企業や政府のインフラが届かない領域で、まるで毛細血管のように地域のあちこちで消費者が環境を保護していることは肯定的な一面です。しかし、企業が自ら環境保全とは程遠い製品を生産しながら、消費者に企業の環境保護責任を転嫁し、マーケティングなどにより環境にやさしいイメージだけを得ようとする姿は、改善すべきことです。

2020年、韓国の美容企業が「Hello, I am paper bottle」というフレーズが書かれた化粧品を販売しましたが、実際は製品がプラスチック容器に入っていることが判明し、韓国はもちろん多くの海外メディアでも報道され、物議を醸しました。

このように、ESG経営トレンドに便乗するために、実際には環境保全とは無関係な製品を生産しながら、虚偽・誇大広告と宣伝などで、環境に配慮しているように人々を騙し利益を得る企業の「Green Washing(グリーンウォッシング)」は、むしろ他の企業の環境保全のための努力に悪影響を及ぼし、最終的にはエコ製品に対する消費者の信頼を損なうことになります。

コロナ後の環境変化 事例- Springer.com

私が考える持続可能なサーキュラーエコノミーは、「やればプラスになる」マーケティング要素でも、人間と自然が共存するための「良い方法」の一つでもありません。地球は数十億年の間、小惑星の衝突や氷河期などを経ながらも健在であり、その過程で大きな被害を受けたのは地球上に住む恐竜でした。 

このように、地球温暖化など気候変動によって生じる環境問題で被害を受けるのは、他ならぬわれわれ人間なのです。新型コロナパンデミックにより、逆説的に自然環境が保護され、再生される事例にわれわれは直面しました。サーキュラーエコノミーを地球のための視点ではなく、人間が地球で生き残るための努力の視点で、政策や制度、行動が行われれば、より良い未来になるでしょう。