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外国人起業家による「K-ユニコーン」が人口問題解決の鍵となるか

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外国人起業家による「K-ユニコーン」が人口問題解決の鍵となるか

【創刊企画】「ウェルカムイン!大韓民国」 ④-1

#フランスは海外人材と企業をフランスに呼び込むための「フレンチテックチケット」制度を運営している。ビザ・居住許可の簡素化プログラムに選定された企業(チーム)は、創業初期から成長過程全般において、インキュベーション・事業資金・ビザの優遇措置など、支援を受けることができる。フランス政府と公共機関が協力して設立した組織「ラ・フレンチテック」がこの政策を管理している。フランスは、イギリスを除けば、EU(欧州連合)の中で最もスタートアップのエコシステムが発達しているといわれている。

#運動・治療用のスマート卓球台を開発したスタートアップFastPong(ファストポン)は、ネパールやイランなどからの留学生によって韓国で設立された。海外への輸出も積極的に行っているが、ビザの更新など様々な困難に直面することが多い。創業メンバーの一人である漢陽大学スポーツ産業科学部のシダルタ・ビクラム・パンデイ教授は、流暢な韓国語で、「2007年に留学生として韓国に来た時と比べればかなり改善されたのは事実だが、外国人によって設立された多くのスタートアップは依然として大きな壁を感じている。」と訴えた。

韓国は合計特殊出生率0.7で、前例のない危機に直面している。海外進出でグローバル市場を開拓するだけでなく、韓国内の人口と市場を拡大して経済の縮小要因を取り除くことが大きな課題だ。専門家は、資本・人材・企業など経済の核心要素を韓国に取り込む、いわゆる「インバウンド」戦略をアウトバウンド(海外進出)と並行して進めるべきだと指摘している。特に、起業熱が高まれば、経済エコシステム全体の発展にも役立つ。

危機的な人口問題…資本・人材・企業の減少は確実

(ソウル=ニュース1)オ・デイル記者=尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が4月8日、龍山(ヨンサン)の大統領室庁舎で開かれた起業家らとの昼食懇談会で発言している様子。(大統領室提供) 2024.4.8/ニュース1 Copyright (C) ニュース1All rights reserved.無断転載・再配布、AI学習利用禁止 /写真=(ソウル=ニュース1) オ・デイル記者

2023年の韓国の合計特殊出生率は0.72だ。100人の次世代が70人(70%)になるという意味ではない。子供を産むためには親が2人必要なので、実際には200人の次世代が70人(35%)になるということだ。この出生率が2世代続くと、200人だった祖父母世代は孫の世代で24.5人に激減する。

人口減少だけではない。6月1日、韓国銀行によると、1964~1974年生まれの第2次ベビーブーマーが今年から法定退職年齢(60歳)に入るという。60代男女の雇用率に変動がないと仮定すると、人口が多い第2次ベビーブーマーの退職が続く2024~2034年の間に、年間経済成長率が0.38%ポイント低下するということになる。

このままでは労働力が減少し、消費市場の縮小にもつながる恐れがある。出生率向上とともに、早急な経済対策が必要だ。その中でも、外国人を韓国に引き入れるインバウンド対策が急務だ。インバウンドによる起業や雇用で、国際的な経験とネットワークを持つ外国人起業者らを韓国に引き入れることができる。様々なバックグラウンドを持つ国内外の人々が刺激し合いながら、新たなイノベーションを促進するのだ。

他にも、労働人口の流入など、インバウンド経済が持つメリットは少なくない。実際に、外国人にとってアクセスが良いソウル市は最近、グローバル起業評価機関であるStartup Genome(スタートアップゲノム)の調査で、全世界300都市のうち、起業に適した街として9位にランクインした。

外国人起業ビザの取得困難、発行後の更新・維持にも問題

2024年世界主要都市の起業環境トップ10/画像=イ・ジヘ

それにもかかわらず、首都圏と非首都圏の起業環境格差は大きい。外国人が起業する際に直面する課題も少なくないだろう。多文化に対する受容力が低く、英語など外国語の活用にも限界があるのだ。このためか、主要国の中で外国人が設立したユニコーン(企業価値1兆ウォン{約1,100億円}以上の未上場企業)が存在しないのは韓国だけだ。

特に、韓国の外国人起業ビザ(D-8-4)の発行条件は、海外に比べて厳格な方だ。法務部が主管するグローバル創業移民センターのオアシス(OASIS)プログラムで、80点以上を取得しなければならない。このスコアは、1億ウォン(約1,100万円)以上の資金調達や特許登録など、複数の要件を満たすことで達成できる。さらに、韓国の専門学校卒以上または、海外の大卒以上の学歴も求められる。

韓国人の場合、法的に資本金100ウォンさえあれば起業が可能だが、外国人には異なる基準が適用されているのだ。ようやく起業ビザを取得しても、課題は続く。代表的なのが、ビザの更新要件に売上実績が求められるということだ。初期のスタートアップが1年以内に成果を挙げるのは難しく、この要件を満たせずに事業を断念するケースもある。

スマートフォンと連動したFastpongのスマート卓球台/写真=Fastpong

Asan Nanum Foundation(牙山ナヌム財団)AER知識研究所のチェ・ファジュン研究員は、「外国人の起業ビザは発行数が非常に少ない希少なビザだ。」とし、「ビザ更新のための売上基準も明確ではない。」と述べた。また、SAMSUNG(80,300ウォン ▼1,700 -2.07%)のCラボから分社化したTAGHIVE(タグハイブ)のアガルワル・パンカジ代表は、「自分は外国人であるため、韓国人より努力しなければならなかった。」とし、「(投資家たちは)外国人相手に投資しても、もし韓国を去ってしまったら、という懸念を持っている。」と話した。

「外国人によるK-ユニコーンを作ろう」は夢のまた夢?

一方、イギリスをはじめ、フランスやシンガポールなどでは、事業計画書を提出して承認されればビザを取得することができる。ドイツでは、現地法人を設立し、創業者である自分自身を雇用することで就労ビザを取得するという方法もある。主要国のビザ更新周期は3~4年で韓国(1年)よりも長い。また、ビザを取得するための学歴基準も韓国より低く、さまざまな支援も提供される。

K-スタートアップのインバウンドエコシステムの改善点/画像=イ・ジヘ

シンガポールの「スタートアップSGテック」プログラムは、PoC(概念実証)プロジェクトに最大25万シンガポールドル(約2,800万円)、PoV(価値実証)に50万シンガポールドル(約5,600万円)を支援する。ドイツの「ベルリン・スタートアップ・スカラシップ」は、1年間毎月1人の創業者に2,000ユーロ(約33万円)を支援する。共同起業で創業者が2人の場合は、合計4,000ユーロ(約66万円)の支援を毎月受けることができる

同伴家族のビザも無条件で発行され、韓国より発行基準が低い傾向にある。フランスでは、在職確認や所得評価も要求されない。一方、韓国では、給与や口座残高による所得証明が必要で、これも基準が明確でないと指摘されている。

そのため、韓国でも先進国を参考にした対策を準備している。起業ビザを発行する際には売上高だけでなく技術性や事業性を考慮し、就労ビザを発行する際には業務能力の検証を通じて、発行基準を緩和する方法を検討している。中小ベンチャー企業部は31日、ソウル江南区にグローバルスタートアップセンター(GSC)を開設する。GSCは、「インバウンドコリア」政策の代表的な事例として、韓国での起業を希望する外国人に、ビザ・税務・法務など事業に必要な幅広い支援を提供する予定だ。

ラ・フレンチテックの紹介/写真=ラ・フレンチテック

一方、インバウンド強国の実現は、中小ベンチャー企業部だけの責任ではない。政府が明確なビジョンを掲げ、全省庁が協力する必要がある。そうすることで、人材や資本などの国内流入を妨げる障壁が何であるかを把握し、解決策を提示することができるだろう。

Fastpongは、第13回青年起業家大会の本選に進出するなど、「外国人によるK-ユニコーン」を目標にしている。パンデイ教授は、「外国人起業家たちはたとえ失敗するとしても、韓国で起業するチャンスが欲しいと願っているのではないか。」と語った。



<画像=6月23日、SAMSUNGによると、オリンピックの屋外広告がフランス・パリの主要名所「オペラ・ガルニエ」や「ラ・デファンス」などで展開されており、パラリンピックが終了する9月末まで運営されるという。写真はオペラ・ガルニエ(SAMSUNG提供) 2024.6.23/ニュース1 Copyright (C) ニュース1All rights reserved.無断転載・再配布禁止、AI学習利用禁止/写真=(ソウルニュース1)パク・ジヘ記者>

原文:https://www.unicornfactory.co.kr/article/2024070814202443941



/media/UNICORN FACTORY
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UNICORN FACTORY

2021年に発足したUNICORN FACTORY(ユニコーンファクトリー)は、MONEY TODAY(マネートゥデイ)が韓国の総合誌で初めてスタートさせたスタートアップ専門のメディアプラットフォームです。 溢れるニュースの中でスタートアップ生態系に必要なニュースだけを厳選し深く伝えます。

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