「マイティ・ソー」も恐れた病気…「音声でわかる認知症診断」韓国医師の挑戦
「マイティ・ソー」も恐れた病気…「音声でわかる認知症診断」韓国医師の挑戦
[スタートUPストーリー] VOINOSISのシン・ジョンウン代表
#マーベル映画「マイティ・ソー」の主演俳優クリス・ヘムズワースは、2022年に行われた健康ドキュメンタリーの撮影で遺伝子検査を受け、アルツハイマー型認知症にかかりやすい高リスク遺伝因子を持っていることが判明した。当時、クリス・ヘムズワースは、活動休止を宣言して話題となった。この遺伝子を持つ人は、一般の人よりアルツハイマー病にかかる危険度が8~10倍高いと言われている。
認知症は代表的な老人性疾患だが、最近では激しいストレスで物忘れに悩む若者が増えており、「ヤング(Young)」と「アルツハイマー(Alzheimer)」の合成語である「ヤングツハイマー」という新語も登場している。認知症に対応できる唯一の方法は、早期発見と予防だ。
2019年、耳鼻咽喉科専門医のシン・ジョンウン代表が設立したVOINOSIS(ボイノシス)は、声で認知症を早期発見する技術を開発した。シン代表は、「耳鼻咽喉科で約20年間、老人性難聴疾患を主に診療してきた。その中で、一般の難聴患者と認知障害を伴う難聴患者の声が異なることに気づいた。」と話した。
認知症で父を亡くし、予防・克服のために起業を決意
VOINOSISの認知症診断ソリューション/写真提供=VOINOSIS
シン代表が診療から起業に踏み切ったのは、父親が認知症を患い、亡くなったことが大きな要因となった。父親の認知症について、「父の話し方がたどたどしく、どもるようになったので、病院で認知症検査を受けたが、問題ないという結果が出た。」とし、「銀行業界出身で、教授も務めたほど頭の良かった父は、簡易認知症検査の質問内容を事前に理解し、それに合わせて練習していたため、検査で異常が見つからなかった。」と語った。
父親が倒れた後に脳の画像撮影を行い、ようやく認知症と診断されたが、その時点ではすでに病状がかなり進行している状態だった。シン代表は、「後になってわかったのだが、父は毎朝何をしたかについて手帳にびっしりと書き込んでいた。そのため、日常会話では認知症だと気づくのが難しかった。」とし、「父のように認知症診断を恐れてメモを取る人は多い。そのため、正確な認知症検査が必要だと感じ、起業に至った。」と話した。
VOINOSISは音声変化に伴う脳の機能的な退化パターンを特定し、音声バイオマーカーを利用した疾患予測診断AI(人工知能)技術を開発した。難聴患者を主に診療してきたシン代表の経験を活かしたのだ。主な製品は、音声で認知症を診断するソリューション「ブレインガードドクター」と「ボイスチェック」だ。
ブレインガードドクターは、病院で行われていた認知症スクリーニング検査である簡易精神状態検査をAI(人工知能)駆動型に転換したものだ。ボイスチェックは、40~60代を対象とした音声ベースのサブスクリプション型アプリサービスだ。ボイスチェックは、HYUNDAI(現代自動車{230,000ウォン ▲6,500 +2.91%})、Amway(アムウェイ)、大韓航空(22,000ウォン ▲100 +0.46%)、Hanwha Ocean(ハンファオーシャン{29,650ウォン ▲600 +2.07%})などを主要顧客として確保し、提携サービスを開発している。HYUNDAIとはドライバーの脳の疲労度を検査するための技術を、大韓航空とHanwha Oceanとはそれぞれ飛行機のパイロットや船舶乗務員の体調を確認するための技術を開発している。
ドライバーの疲労度をAIでチェック…日本など海外市場への進出も
VOINOSISの会社概要/画像=イム・ジョンチョル
シン代表は、患者の使用言語に関係なく、正確に認知症を判定できると強調した。実際、昨年開かれた世界最大規模のAI学術大会「音響・音声および信号処理国際会議(ICASSP)」では、サービス言語を英語に設定し、ギリシャ人を対象にテストを行った。その結果、声の音響学的特性だけで認知障害の有無を判別した。当時のテストでは、VOINOSISは87%の認知症患者の検出精度を記録した。昨年、米国で開催された「スタートアップ・ワールドカップ」には韓国代表として参加し、準優勝を果たした。
さらに、ソウル経済振興院(SBA)によるSeoul Startup Hub(ソウル創業ハブ)大・中堅企業POSCO(ポスコ)IMP25期のオープンイノベーションプログラムに選ばれ、研究開発などの支援を受けた。
本格的に海外進出にも乗り出す計画だ。まずは、超高齢化社会に突入した日本をターゲットにし、その後、米国などにも進出する予定だ。グローバル展開中の保険会社やヘルスケア企業などとも提携し、現地での事業化を加速させる計画だ。
シン代表は、「これまで病気の治療が重要だったが、今後は予防のほうが重要だ。そのため、AI(人工知能)を活用して、予測を可能にするべきだ。」とし、「技術を継続的に高度化し、認知症のない世界を作ることに貢献したい。」と述べた。
<VOINOSISのシン・ジョンウン代表/写真提供=VOINOSIS>
原文:https://www.unicornfactory.co.kr/article/2024090310205632795
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