「縦社会」「給料泥棒」を嫌い銀行を退職する人材たち [Geeks]
「縦社会」「給料泥棒」を嫌い銀行を退職する人材たち [Geeks]
世界中で「大型銀行よりフィンテックへ」
転職規模11年ぶりに過去最大
「会社のビジョンに共感でき、自主的に成長できる会社を希望」
年収最大1.5倍、ストックオプション支給、1億ウォン(約1,000万円)の無利子貸付け、無制限休暇。フィンテックスタートアップが人材獲得のために掲げている代表的な福利厚生だ。このようなフィンテックたちは、「報告のための報告」「過剰なしきたり」のような既存の金融会社の硬直した文化と固い規制をなくし、より良い年俸とワークライフバランス、有望なキャリアを望む人材を吸収している。
Goldman Sachs・Morgan Stanleyから次々に離脱「ビックテックも嫌だ」フィンテックへの転職者続々
職群を問わず大型銀行を離れ、フィンテックに転職する動きが世界的に広がっている。米国の人材専門リサーチ企業Revelio Labs(レベリオラボ)によると、2020年1月から今年4月までGoldman Sachs(ゴールドマンサックス)(147人)、Morgan Stanley(モルガンスタンレー)(101人)、HSBC(85人)、Barclays(バークレイズ)(73人)などグローバル大型銀行4社からフィンテックに転職した人数は計273人だった。Revelio Labsがグローバルビジネス交流プラットフォームのLinkedin(リンクトイン)のデータを活用して、毎月銀行からフィンテックに転職する人数を集計した結果、今年3月には79人と2011年の月間統計以来最も多かった。
近年、急速に規模を拡大させたフィンテックは、これらの退職者を積極的に吸収している。2020年944億ドル(約13兆円)の価値評価を受けて、米国で最も価値が高いスタートアップになったオンライン決済業者であるStripe(ストライプ)、米国最大の暗号通貨取引所であるCoinbaseコインベース、イギリスのチャレンジャーバンクRevolut(レボリュート)とMonzo(モンゾ)、充電式法人カードサービスで創業5年でデカコーンに成長したBrex(ブレックス)などがその主人公だ。
調査期間中にGoldman Sachsを去った職員147人のうち、Coinbaseに転職した人数は37人、Brexに転職した人数は21人だった。TwitterのCFO・COO出身のアンソニー・ノトが率いるフィンテック企業SoFi(ソーファイ)にも18人が移った。イギリスの送金ベースのフィンテック企業Wise(ワイズ)は、全社員400人のうち12人がMorgan Stanley出身だ。
これは大企業の安定性より「革新する組織で成長したい」と希望する若い会社員が増えているという証拠だ。大型銀行だけでなく、Amazon(976人)やGoogleの親会社Alphabet(アルファベット)(629人)、Facebook(524人)などの代表的なグローバルビッグテック企業からフィンテックに転職した職員も2年半で数百人に達する。
Revelioのエコノミストであるリサ・サイモンは「人々は今(ただ単に大企業に入社したいわけではなく)自分にとって何が重要なのかを考え直している」とし、より高い年俸はもちろん、より柔軟な労働条件と新しいキャリアルートを求めていると分析した。
「縦社会」「給料泥棒」が嫌で銀行を退職
韓国でも同じ動きがみられる。昨年末基準、Kakao bank(カカオバンク)とK bank(ケーバンク)、Toss bank(トスバンク)などインターネット銀行3社の総役職員1687人のうち、他の銀行から移ってきた職員は合計327人と全体の20%に達した。貯蓄銀行、カード、証券、保険などの第2金融圏から来た人も383人(22.7%)に達した。今や、発足6年目を迎えるインターネット銀行の従業員10人のうち4人が他の金融会社出身なのだ。
彼らは「縦社会」や「給料泥棒」の文化がなく、自己啓発ができ、キャリアの専門性を築くことができるという期待を持ってフィンテックに移る。A銀行で企業金融業務を担当し、Kakao bankに転職したパク氏は「一つの職務でキャリアを積み重ね続けながら専門性を育てることができるという点が良い」とし、「営業店と本店の各部署に異動しなければならないジョブローテーションがある市中銀行では不可能なことだ」と話した。
B銀行からToss bankに転職したというキム氏も「成長する銀行で新しい商品を企画し発売する仕事をしてみたかった」とし「ストックオプションのような補償も既存の銀行にはなかった」という。貯蓄銀行からフィンテックへの転職を準備中のイ氏は「仕事より組織を気にしなければならない保守的な文化から抜け出したい」と話した。
インセンティブ拡大も「流れ変わらず」
伝統的な大手銀行は人材の流出を防ぐために補償を強化し勤務環境を改善するなど、あらゆる手段を総動員している。米大型銀行は昨年、優秀職員に支給するインセンティブを20~25%増やし、今年も一部職務の賞与金を30~40%引き上げた。カナダの銀行は1人当たりの賃金を6.3%引き上げたが、これは前の3年平均引き上げ率の2倍を超える水準だ。
スタートアップにしかなかった「無制限休暇」も登場した。Goldman Sachsは先月から役員たちに対して、固定有給休暇を無くし無制限休暇を提供している。入社してまだ数年目の職員にも、固定有給休暇制は維持したまま無給休暇日数を増やした。
それにも関わらず人材流出を防ぐには力不足というのが業界の評価だ。あるフィンテック企業の上層部関係者は「最近、若い人材が重要だと考えるのは、会社が提示するビジョンに共感できるか、水平的な組織構造で柔軟に働きながら自己主導的に成長できるかどうかだ」とし、「スタートアップブームが収まれば人材流入速度も今よりは低下するだろうが、現在の流れ自体は変えられないだろう」と話した。
ビン・ナンセ記者 binthere@hankyung.com
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