YouTuberは好調なのに、所属事務所は「赤字」?その理由とは[Geeks]
YouTuberは好調なのに、所属事務所は「赤字」?その理由とは[Geeks]
YouTubeをはじめ、Tiktokやリールのような「短尺」動画まで・・・。映像コンテンツがオン・オフラインに多大な影響力を及ぼし、YouTubeをはじめとする個人クリエイターたちの存在感も大きくなりました。彼らの所属事務所の役割を果たすマルチチャンネルネットワーク(MCN)の規模も一緒に大きくなりましたが、最近は彼らが過去2〜3年間見せてきた急激な成長率に比べて、収益性が悪化しています。バラ色の未来と思われたクリエイターエコノミーに暗雲が漂い始めたのでしょうか。国内MCNの現状を韓経Geeksが調べてみました。
11兆ウォン規模の韓国MCN市場
業界では、韓国MCN市場の規模を約11兆ウォン(約1兆1,500億円)と推定している。韓国MCN協会には45社が加入している。所属クリエイター数基準でみるとCJ ENM傘下のダイヤTVが1位で、1,400以上のチームが所属している。米国系MCNであるCollab(コラボ)の子会社、Collab Korea(コラボコリア)も300チーム以上のクリエイターを保有している。スタートアップの中では、Sandbox Network(サンドボックスネットワーク)(約500チーム)が一番リードしているという評価だ。
「韓国のワーナーブラザーズ」と呼ばれるSandbox Networkは、韓国初のMCNスタートアップに挙げられる。2014年11月にYouTuberのドッティ(ナ・ヒソン)が創業したSandbox Networkは、これまで投資された金額が910億ウォン(約95億円)に達する、ゲーム分野のクリエイターを中心に導いてきたスタートアップだ。最近では、ユ・ビョンジェやハム・ヨンジなど、様々な分野のインフルエンサーを管理している。
フィットネスYouTuberであるジPTのチャンネル画像
Treasure Hunter(トレジャーハンター)は、ソン・ジェリョン代表がヤンティン(ヤン・ジヨン)、アゴ(キム・ドンミン)、キム・イブ(キム・ソジン)などの有名クリエイターと共に2015年に創業した。モッパン(食べる姿の放送)・歌い手YouTuberのヤン・スビンや、フィットネスYouTuberのジPTなどが所属している。
DMIL(ディーミル)やIce Creative(アイスクリエイティブ)などの美容分野も、国内MCNの一角を担っている。これらの会社は、新型コロナウイルスのパンデミックと共にライブコマース市場が拡大しながら急成長した。
YouTubeチャンネル「LeoJメイクアップ」の画像
DMILは英国Financial Times(ファイナンシャルタイムズ)の「アジア太平洋地域における急成長企業ランキング500」において、ビューティー部門全体1位に選ばれた。Ice Creativeもイサベやユンチャミなど、有名ビューティーインフルエンサーを育てた主要MCNだ。
相次ぐ赤字...「収益構造の問題」
スタートアップ業界によると、ほとんどの韓国主要MCNは昨年営業損失を出した。所属クリエイター数1位のMCNスタートアップであるSandbox Networkは昨年、1,136億ウォン(約118億円)の売り上げを記録した一方、121億ウォン(約12.6億円)の赤字を出した。2020年(73億ウォン{約7.6億円})より赤字幅が増えたことになる。
企業公開(IPO)を進めているTreasure Hunterも61億ウォン(約6.4億円)の営業損失を記録した。また、美容MCNのDifferent Millions(ディファレントミリオンズ{DMIL})も営業損失が28億ウォン(約3億円)だった。黒字を記録したのはLeferi(レフェリ)のみだ。
一見すると華やかに見えるこれらの企業が赤字を免れない理由は、不安定な収益構造のためだという分析だ。YouTubeがメインステージのMCNは、映像コンテンツ内のGoogle広告仲介サービスであるAdSense(アドセンス)を通じて収益を得る。AdSenseで広告収入が発生すると、そのうち45%はGoogleが、55%はクリエイターが得る。
MCNにはクリエイターが得られる収益のうち、最低で10%、最高で30%が配分される仕組みだ。業界関係者は「MCNは得る収益が多くない上、クリエイターの力量によって収益の変動性が非常に大きい構造」と説明した。
海外ではすでに数年前、MCN業界に赤信号が灯っていた。かつて、YouTubeチャンネル登録者7000万人を超えていたグローバルMCNのDefy Media(ディファイメディア)は2018年11月に破産した。広告収益の割合が80%に達し、収益性の悪化が続いたためだった。
また、美容MCNの世界1位だったStyleHaul(スタイルホール)は、かつて欧州メディアグループRTLに買収されて1,500億ウォン(約156億円)を超える企業価値を認められたが、不安定な収益構造が理由で2019年米国事業を撤退した。Disneyに買収されたMaker Studios(メーカースタジオ)も2019年に廃業した。
規模は大きくなったが経営には赤信号
投資金は集まり続け、MCNの企業価値は高まっている。Treasure Hunterは2015年設立以来、10回以上外部からの投資金を調達した。昨年下半期の投資過程では1,000億ウォン(約104億円)を超える企業価値が認められた。
Sandbox Networkも、2020年すでにシリーズDラウンドまで投資が続いている。企業価値は3,000億ウォン(約312億円)を超え、今年下半期のプレIPO(上場前持分投資)に乗り出すと予想されている。Ice Creativeは今月、AMORE PACIFIC(アモーレパシフィック)から投資を受けた。
MCN関係者は「収益性悪化のせいで投資を受け無理に企業規模を拡大させれば、再び収益性悪化に足を引っ張られるという悪循環が繰り返される」と話した。「クリエイターリスク」もMCNの安定的な運営を妨げているという指摘だ。2020年に浮上した、インフルエンサーらの「裏広告(消費者に広告ではないと嘘をつきながら不正に広告をする行為)」問題が代表的だ。MCN協会はインフルエンサー産業協会などと共に、このような議論を防ぐための独自のガイドラインづくりを進めているが、遅々として進まない状態だ。
また、飲食店が食べ物を再利用したとYouTuberが虚偽の疑惑を提起して飲食店を閉店させた「カンジャンケジャン事件」や、今年初めに浮上したインフルエンサーフリージアの「偽ブランド品問題」なども、所属事務所の立場ではリスクに含まれるという。
収益構造の多様化に乗り出すMCN
投資業界でもMCN市場が停滞期に達したとみている。Hyundai Motor Securities(現代車証券)のキム・ヒョンヨン研究員は「個人クリエイター間の競争がピークに達しており、上位のクリエイターたちはMCNから離れて個人で起業する傾向があるため、マネジメントの側面からみてメリットが少なくなっている」とし、「上場の準備をしているMCNスタートアップに対する市場の雰囲気も、脚光を浴びていた2~3年前に比べてあまり友好的ではないだろう」と話した。
業界では、収益構造を多様化しなければMCNは生き残ることができないという声が出ている。すでに、韓国MCN市場に地殻変動が起こる可能性があるという見通しも出ている。
SoftBank Vision Fund(ソフトバンク・ビジョンファンド)が約9,000億ウォン(約937億円)を投資したアメリカのクリエイター教育スタートアップのJellysmack(ジェリースマック)が、韓国市場進出を宣言したためだ。Jellysmackは、食品・ゲーム・スポーツなど多様な分野の韓国のクリエイターたちを支援すると抱負を明らかにした。
Sandbox Networkは、代替不可能トークン(NFT)と「遊んで稼ぐゲーム(P2E・play to earn)」事業に飛び込んだ。自社開発の知的財産(IP)であるMeta Toy DragonZ(メタ・トイ・ドラゴンズ{MTDZ})を前面に出して、関連市場を先取りする計画だ。また、Treasure HunterもNFTベースのデジタルグッズを作りメタバースコンテンツを制作するなど、新事業探しに乗り出した。
キム・ジョンウ/チェ・ダウン記者 jongwoo@hankyung.com
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