孫泰蔵氏が考える「スタートアップ」(1/5):未来に生きる子どもたちのために
孫 泰蔵(そん・たいぞう) Mistletoe ファウンダー
プロフィール
1972年生まれ。世界を代表する連続起業家でありIT 関連スタートアップを多く成功させた投資家。現在はMistletoe(ミスルトウ)のファウンダーとして、社会課題を解決できる可能性を秘めたスタートアップを支援するとともに、複数の支援先で役員も兼務し、数多くを成功へと導いている。
-世界を代表するシリアルアントレプレナー(連続起業家)として知られる孫泰蔵さんは現在、シンガポールに拠点を置きながらMistletoe(ミスルトウ)のファウンダーとしてイノベーティブなビジネスを支援しつづけている。はたして、その視線はどこに向かっているのだろうか。KORIT独占インタビューで5回に渡り連載いたします。
第一回:未来に生きる子どもたちのために
―まずは孫さんがファウンダーを務めるMistletoe(ミスルトウ)の事業内容から伺いたいと思います。
孫さん 私は「未来の子どもたちにこの星を良い状態にして渡したい」という思いを強く抱いており、Mistletoeではその思いに合致したスタートアップを積極的かつ多角的に支援しています。
―どのくらいの数のスタートアップを支援しているのでしょうか。
孫さん 日本を中心に、世界16カ国、200社以上のスタートアップを支援しています。支援の内容は資金的なものはもちろん、共同開発や人材紹介、さらには投資家の紹介など多岐にわたります。また、起業家たちをネットワークし、たがいに助け合えるようなコミュニティづくりも手掛けています。起業家たちがそれぞれつくりあげようとするソーシャルインパクトをつなぎあわせることで、コレクティブインパクト(多様な起業家が共同で社会課題を解決するためのスキーム)を形成していきたいと考えています。
―素晴らしい取り組みですね。孫さん自身が率先して手掛けている事業もあるそうですが、そのあたりについてもお聞かせいただけますか。
孫さん 日本では高齢化や都市への人口集中、地方の過疎化などが原因で、地域やコミュニティの消滅が叫ばれているのと同時に、都市部におけるコロナ禍のようなパンデミック被害の拡大、気候変動による自然災害の甚大化や巨大地震の発生などが懸念されています。そういったリスクを回避するには分散型社会の構築が欠かせません。そこで、私としては先進技術と伝統・文化などの地域資源を活用した地域再生に取り組んでいるところです。現在は金沢、長崎、瀬戸内の島々などで具体的なプロジェクトを展開中で、そのほかシンガポールなど海外でも同様の試みを実践しています。
―最近は教育にも熱い思いをお持ちのようですね。
孫さん 今後、日本のみならず世界でロボットやAIの導入による劇的な変化が訪れます。おそらくそれは産業革命以上のインパクトになるはずです。しかし、日本の教育は依然としてその変化に対応しきれておらず、昔ながらの教育を継続しています。これではせっかくのビジネスチャンスが到来したとしても、それを具現化したり、社会実装したりすることができず、経済も尻すぼみになってしまうでしょう。そこで、この状況を何とか打破したいという思いから、さまざまな年代を対象に教育のアップデートを試みる場をつくりはじめました。
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