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日韓配車サービスの現在地(2/5):日本の共有モビリティ市場「タクシー配車サービス」

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第二回:日本の共有モビリティ市場「タクシー配車サービス」


日本国内の配車サービスについてをスムーズに理解するには、まず日本のモビリティ市場の背景を把握しておいた方がいいでしょう。日本は公共交通システムが非常によく整った国です。そのため、多くの国民は、公共交通機関を利用しています。2016年の自動車走行距離の変化に関する年次報告書(国交省・総合政策局)によると、日本全体の旅客移動距離の43%を公共交通機関が占めました。公共交通機関の利用者数が2%に届くか届かないかのアメリカと比較すると、日本は公共交通機関に依存した国だと言えるでしょう。


 特に、東京のような大都市では、公共交通機関の利便性や信頼度、低料金でのサービス提供などにより、日本全体の数値と比べて52%と高くなっています。今後、全国的に都市化が進むにつれ、都市部における公共交通機関の利用は2025年までに総旅客移動距離の約70%まで拡大するという推計も出ています。同時に、高齢化により、自家用車の購入は減少しています。これらの状況を鑑み、日本におけるモビリティ市場では、車によるモビリティをより柔軟で利用しやすい価格にすべく、配車サービスなどを提供する共有モビリティのプラットフォームなど、新たなエコシステムやビジネスモデルの形成を模索しています。 

しかし、日本では規制により、タクシーの供給台数、価格設定、駐車・認可要件が制限されており、企業側からの新たな配車サービスのプラットフォームの推進や、ユーザー側の配車モビリティの選択肢は、アメリカや中国など海外と比べて限られています。

 自家用車を用いて他者に有償で移動サービスを提供することは法的に禁じられているため、「Uber」を例にすると、日本に進出した2015年以降、営業が認可されているのは「Uber Black」という高級車による送迎サービスのみです。このような規制があるため、「Uber」 は市場への進出に苦心しており、2017年時点では、東京の月間乗車数は1% にも達しませんでした。

 

日本のタクシー配車サービスプラットフォームの例

それでは、日本では配車サービスプラットホームを提供する会社が全くないのでしょうか。そんなことはありません。日本共有モビリティ市場では、様々な業者がタクシー加盟事業に参入し、タクシー配車サービスプラットフォームを拡張し、提供しています。タクシー会社大手の日本交通は、アプリで予約や決済ができるオンライン配車サービス「Go」(なお、MOVとJapan Taxiが統合)を展開しており、そのアプリのダウンロード数は2018年10月時点で500万に達しています。

 

日本には「Go」を含め、タクシー配車サービスプラットフォームを提供する会社が数多くあります。



  • 「GO(旧MOV×JapanTaxi)」
  • 「DiDi(ディディ)」
  • 「S.RIDE(エスライド)」
  • 「Uber Taxi(ウーバー)」
  • 「フルクル」
  • 「たくる」
  • 「MKタクシースマホ配車」
  • 「タクシー東京無線」
  • 「モタク」

そして、株式会社 ICT総研 の「2021年 タクシー配車アプリ利用動向に関する調査」によると、4,407人を対象としたアンケート調査の結果では、上のタクシー配車サービスプラットフォームの中では「GO(JapanTaxi+旧MOV)」の利用者が最も多く、260人でした。2位は「DiDi(ディディ)」で257人、3位は「Uber Taxi(ウーバー)」が僅差で255人と続きます。4位は「MKタクシースマホ配車」で150人、以下、「フルクル」 123人、「タクシー東京無線」 123人、「S.RIDE(エスライド)」 121人、タクシー検索「たくる」113人、第一交通「モタク」103人という回答結果となりました。タクシー配車アプリを月1回以上利用している人の比率はおおむね6割以上となっており、利用し始めると、定期的に利用する傾向も見られます。特に、「S.RIDE」、「フルクル」、タクシー検索「たくる」などのサービスは比較的リピート率が高いようです。

また、ICT総研の需要予測では、2020年末時点での日本国内のタクシー配車アプリの利用者数は858万人と推計されました。利用者数はアプリの普及と配車サービス登録車両の拡大により今後も増加傾向で、2021年末に1,110万人、2022年に1,346万人、2023年末に1,573万人になると予測されています。

 

タクシー配車サービスを利用する目的とは?

では、人々はなぜタクシー配車サービスを利用するのでしょうか。

ICT総研 の「2021年 タクシー配車アプリ利用動向に関する調査」によると、タクシー配車アプリ利用時の移動目的は、仕事・出張などのビジネス利用が多くなっています。また、観光・買い物・遊びといったプライベート利用も多く、様々な用途で利用されています。通院・介護などの目的で利用する人もいます。タクシー配車アプリは、タクシーをつかまえにくい路地や住宅地でもすぐにタクシーを呼べるというメリットがあり、例えば通院の際に、自宅前にタクシーを呼んだりする用途が考えられます。また、出張などの際に、重い荷物を抱えてタクシー乗り場や大通りまで歩く必要がなく、配車してもらえることもビジネス利用者にとっては大きな魅力となるでしょう。

さらに、タクシー配車アプリの多くは、乗り場と目的地さえ指定すれば、おおよその料金がわかるものが多く、空港などへの配車の場合は定額制となるサービスも見られます。このように、これまでのような電話で配車するサービスとは異なり、タクシー配車サービスは、予約したタクシーの場所をアプリのマップ上で把握できるほか、料金の目安が最初からわかるといったメリットがあるのです。付加価値があるため、また、タクシー乗車への不安要素が減るというった心理的な効果も期待できます。年間15億回とも言われる乗車回数のうち、タクシー配車サービスの利用率はまだ低いものの、上に述べた利便性が評価され、利用率が高まっていくことは間違いないと思われます。


次回の記事では韓国の配車サービス事情についてお話したいと思います。韓国ではどのようなプラットフォームがあるのでしょうか。次回もご期待ください。


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/media/安基盛(アン・ギソン)
記事を書いた人
安基盛(アン・ギソン)

安基盛(アン・ギソン) 慶應義塾大学 経済学部 経済学科 少し面白い話を共有しようと思います。ある本で読みましたが、過去1万年の期間のうち9900年間の科学的進化速度が10だとすれば、1946年に最初のコンピューターができてから2000年までの進化速度はなんと100だそうです。 そして、2000年から2010年までの進化速度は4,000、その後の10年の進化速度は6,000、そして2030年までの進化速度は78,000以上になると専門家は述べています。 今後10年の世界では、我々は想像すらできないことが現実されるかもしれません。ますますデジタル化するこの世の中で、みんながエンジニアになる必要はなくても、少しでもI T技術の勉強に振れることは重要じゃないかなと思いました。 そこで、私の記事を通じて読者の皆さんに少しでもITの世の中に関心を持っていただけたら本当に幸いです。

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