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【ちょい事情通の記者】 「EASTEND」 、ブルーオーシャンに到達してこそのファッション企業

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「EASTEND」 、ブルーオーシャンに到達してこそのファッション企業

  • Capstone Partners(キャプストーンパートナーズ)ソン・ジンファ審査役 

衣食住。人が生きていく上で欠かせない3つの要素の一つであるファッション産業(既製服産業)は18世紀に始まり、かなり長い歴史を持つ産業の一つである。韓国のファッション産業はそれより遅い20世紀初頭に形成され始め、20世紀後半の1970年代半ばになってからオーダーメイドから既製服への転換が起こった。約50年の歴史の中で数多くのブランドが誕生し、消滅し、韓国のファッション産業はすでに過飽和のレッドオーシャンと言われている。最近、CITYBREEZE(シティブリーズ)、A;td(アーティッド)、Rozley(ロズリー)などのファッションブランドを保有しているファッションCIC「EASTEND(イーストエンド)」へ投資を行い、なぜ高成長と高収益の機会の在るブルーオーシャンではなく、レッドオーシャンに投資するのかという質問を多く受けた。

 それなら逆に質問をしてみたい。ブルーオーシャンは永遠にブルーオーシャンだろうか?レッドオーシャンは永遠にレッドオーシャンだろうか?二つの質問に対する私の答えは、どちらも「いいえ」だ。ブルーオーシャンと思われていた市場も、産業が成熟し、競争相手が増えれば、いつかレッドオーシャンになることは誰もが同意するだろう。しかし、レッドオーシャンとなってしまった市場でもブルーオーシャンは創り出すことができる。世の中になかった、全く新しいものを作ることだけがブルーオーシャンを生み出すわけではない。既存のレッドオーシャンから新しい戦略、新しいアプローチを通じてブルーオーシャンに市場を拡大することができる。人類最古の産業である農業は、自動化戦略を通じて「スマートファーム」というブルーオーシャンを創った。ファッション産業もオフライン中心からオンライン販売戦略で「Eコマースファッション」というブルーオーシャンを創った。今はEコマースファッション市場もレッドオーシャンと言われているが、これはもうファッション産業には、進化できるブルーオーシャンがないという意味ではない。エコファッション、IPコラボレーション、バーチャルフィッティングなど、ファッション業界では今も新しいブルーオーシャンが生まれ続けている。では、EASTENDはどこに向かっているのだろうか?

 EASTEND キム・ドンジン代表 /朝鮮日報DB

D2Cブーム、ファッション業界も例外ではない

 D2Cビジネスモデルは、不必要な流通マージンを減らし、価格競争で優位に立つことができ、消費者データを確認できるため、ブランド管理に有利であるという利点がある。消費者もまた、流通・販売プラットフォームにおいて絶えず論争が提起される中で、安心できる選択肢として公式モールで製品を購入し、公式モールでのみ提供される特典を通じて新しいブランド価値を体験することにより、D2C消費を志向する人が増えている。

 D2C戦略は、コマース業界全体で拡大しており、ファッション業界も例外ではない。韓国内ではXEXYMIX(ジェクシーミックス)、NERDY(ノルディ)が代表的な成功モデルである。しかし、誰でもD2C戦略を行うことができ、無条件で成功できるわけではない。生産、販売、マーケティング、物流に対する能力をすべて保有している必要があり、新興ブランドの場合、初期トラフィックを集めるのが難しく、自社モール運営の場合、プラットフォームの入店手数料より多くのマーケティング費用が発生することもある。EASTENDの場合、すでに生産、販売、マーケティング、物流に至るD2C各領域を内在化し、スキルを強化してきた。また、主要流通プラットフォームで顧客のブランド認知度を築いた状態で自社モール拡大を通じて顧客流入と収益性の向上が期待できる。 


 /EASTEND提供

外に目を向ければ、未だ青い海が広がっている。

 すでに多数のファッションブランドが激しく競争している韓国市場とは異なり、東南アジア8カ国(台湾、シンガポール、香港、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピン)は毎年4千万人以上の新規ECユーザーが流入し、年間60%前後の成長率を示している。まだ可能性の高い高成長市場であるにもかかわらず、規模の面では韓国のEコマース市場規模をすでに超えている。東南アジアは韓流に対する関心が非常に高い地域で、ドラマ、音楽、食べ物などの韓流文化だけでなく、ファッション、ビューティーなどの韓国ブランドに対する関心も大きい。海外事業運営チームもなく、マーケティングもしていない状況で、EASTENDは運営中のブランド製品がMUSINSA GLOBAL(ムシンサグローバル)などの海外流通プラットフォームの人気ランキングに入ることもあり、海外進出の可能性を見出した。これまでブランド数と生産CAPAの不足により難しかった大型バイヤーとの契約も今年から積極的に進めていく計画であり、今後は海外事業の直接運営、マーケティングなどを通じて海外進出を行う予定だ。 

結局、大切なのは産業の本質

 ブルーオーシャンもいつかレッドオーシャンに変わる。ブルーオーシャンではFirst Mover Advantageは確かに存在するが、レッドオーシャンになった後も生き残るためには、結局、扱っている産業の核心価値、その産業の本質が重要である。ファッション産業はオフラインからオンライン、韓国から海外へ、ファストファッションからスローファッションへと多様に変化し、拡大している。しかし、やはりファッション産業の本質は良い服を作ること、「服」そのものである。多くのオンラインファッション企業がSNSの影響力で急浮上し、単発で終わったりもした。EASTENDは攻撃的なマーケティングで売上規模を急速に拡大するのではなく、生地を開発し、生産工程を改善し、新しいデザインを発表し、良いコンテンツを発行し、良い服、良いブランドを作ることに重きを置いた。ゆっくりだがしっかりと積み重ねてきたスキルは、ブルーオーシャンに向かう原動力となるだけでなく、レッドオーシャンの中での競争においても生き残らせてくれるだろう。

 まだファッション業界を否定的な目で見ている人もいる。しかし、大きくても小さくても、あるいは速くても遅くても、ファッション産業も変化を繰り返しており、ファッション産業の機会は開かれている。EASTENDは創業7年目にシリーズB投資を受けたファッション企業で、ブルーオーシャンで生まれた高成長が期待される初期企業ではない。しかし、彼らなりのスピードで着実にブルーオーシャンに向かって進んでおり、間もなく到達するだろうという点が大きな投資ポイントであった。誰もが靴箱にNike(ナイキ)のスニーカーを一足くらい持っているように、誰もがクローゼットにEASTENDの服を一着くらい持っているようになる日を楽しみにしてみる。

/media/ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)
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