【彼のWhy】 亡くなった両親と再会できるなら
【彼のWhy】 亡くなった両親と再会できるなら
ちょい事情通の記者 2号 イム・ギョンオプ
4年ほど前、MBCで放送されたVRドキュメンタリー「君に会った」を覚えていらっしゃるでしょうか。この世を去った子ども、 妻、 母の生前の映像と音声をベースにバーチャルヒューマンを制作、VRを着用して記憶の中の彼らに会いに行くドキュメンタリーでした。
3Dバーチャルヒューマンのぎこちなさと異質感が残ってはいましたが、 それでももう会えない人と再会する体験に、参加者たちは止めどなく涙を流していました。
ドキュメンタリーは、それ自体でもかなり話題になりました。ドキュメンタリーを見る中で、テック記者として 「こういう技術は果たしていつ頃普遍化できるのだろうか、 ドキュメンタリーで選ばれた少数の人だけでなく、みんながこういうバーチャルヒューマンを作れるのはいつごろになるだろうか?作るならコストはどれくらいかかるのだろう?」と考えていました。
そうような、この世を去った人たちとバーチャルヒューマンを通して再会できるサービスを韓国のスタートアップがスタートした。 「Deep Brain AI(ディープブレインAI)」は去る27日、世界初の年老いた両親の健康だった時の姿をAIヒューマンとして具現させる「re;memory(リメモリー)」 サービスを開始しました。
音声および映像合成、 自然言語処理、 音声認識などの技術を活用し、このサービスを申し込んだユーザーのご両親の顔と声、 表情を取り入れた仮想人間を制作するのです。生前ご両親と行ったインタビューを使い、様々なエピソードでシナリオを構成してAIに学習させるため、 ご両親がこの世を去った後でも、ヒューマンAIと過去の思い出について一緒に話をすることもできるそうです。そこで該当サービスを始めた、Deep Brainのチャン・セヨン代表にインタビューを行いました。
「re;memoryサービスには、サービス名が示すように 「再び記憶する」、「再会する」という意味を込めています。生前に3時間ほど撮影を行い、 故人になれば声も同じ、 顔の様子も全く同じようにAIを制作し、 その人が生前に話していた話や記憶も収集して、 まるで亡くなった方が話しているように再現するサービスです。そうして、死後、当社のショールームにお越し頂き、お会いしていただけるサービスとして企画しました」
「バーチャルヒューマンを作るAI技術が発展し、 量産が可能なほど製作費が安価になったため、サービスを開始することができました。この世をすでに去っていたり、これから去る方をバーチャルヒューマンにする仕事、アイデア自体は3~4年前から企画していました。その間、技術が集約的に発展したため、一般消費者にもアクセスできるレベルの製作費になりました。
例えば、以前は人の声をコピーするためには5,000~1万個の文章を実際の人間が読み、 その音声データをAIが学習しなければなりませんでした。とてつもなく時間がかかっていたのです。しかし、今は300~400文あればAIが人の声をコピーします。早ければ、1時間以内にすべての文章を読み終わることができ、それを入力すれば、AIが声を真似ることができるようになります」
「技術的には大きく3つに分かれています。2D形態で見える故人の姿。つまり視覚ですね。故人の声に似たAIの音声、 聴覚。最後に会話の内容です。構成を見ると、AIチャットボットが下敷きにあり、 自分で文章を生成したり、家族の質問に答える形でテキストを作成します。
そのテキストをTTSを利用して故人の生前の声に似た声に変えます。同時に故人の生前の姿を見せながらリップシンク、つまり、出力される音声と会話に合わせて自然に口が開き、体が動くようにするのです」
「3時間程度の撮影が必要です。re;memoryのAIは、他の対話型AIとは異なり、ただ1人の個人のために作られたAIです。だから学習に必要なデータが必要です。顔と声を学び、 私たちとのインタビューも行わなければなりません。まず撮影しながら顔と体を撮り、 話すときの顔の筋肉の変化をビジョンが掴み、 文章の録音も行います。
チャットボットのための会話も学習します。故人の過去の記憶、 家族との思い出について決まった流れにのってインタビューを行い、そのインタビューの中核キーワードに基づいてAIが学習します。ただし、 限界はあります。家族とAIが会話する際、あらかじめ学習されていない記憶や考えについて答えることは難しいです。あらかじめ学習しておいたカテゴリーの中でも、AIは実際の故人のように答えたり思い出すことに限界があります。
「値段が気になると思いますが、 定価は2,000万ウォン(約210万円)、現在は1,000万ウォン(約100万円)代前半でご案内しています。技術が進化すれば、この金額をさらに安くできる可能性もあります。撮影3時間と案内していますが、 実際はより早く終わることもあります。撮影対象の方々の健康状態等、すべてを考慮し、最大でかかる時間をご案内しているのです」
「バーチャルヒューマンを量産するための技術的な努力は続けられています。写真1枚、 短い会話だけでも、バーチャルヒューマンを作ることができます。しかし、これは本当に量産のためのものであり、 Deep Brain AIは没入感を感じさせるための高品質のバーチャルヒューマンを作る方向に焦点を当てています。
他のバーチャルヒューマンや、製作会社との方向性の違いです。最近Googleもたった10分の音声を使ってのAI学習が可能だという論文を出しました。しかし、それは非常に特殊な状況であり、 普遍的に適用するのは簡単ではありません。商用化が難しいと言うべきでしょうか。しかし、このように活発に研究が進められているので本当に人に似た、視覚、聴覚すべてが満足でき、製作も早く手軽なAIがすぐに出てくるでしょう。本当に近い将来だと思います」
「これまで私たちはAIの現大統領ユン・ソンニョルや前大統領のムン・ジェインを作り、バーチャルニュースアンカーを製作したり、企業のバーチャルヒューマンモデルを製作するなど、B2Bに焦点を当ててきました。B2Bに焦点を当てたのは、一般人が費用を支払うのは難しい水準の製作費がかかっていたからです。しかし、今やB2Cが可能なレベルになりました。故人をバーチャルヒューマンとして蘇らせるB2Cサービスは、当社が調査したところでは、世界初です」
「当社が準備した特定の空間、 「メモリースタジオ」で故人に30分間会うことができます。なぜその空間に行かなければならないのか、 家のテレビ、 額にでも、映し出すことができるのではないかという意見もありました。技術的には可能です。
しかし、方向性とこのサービスの意味自体についての悩みもあります。毎日家に、亡くなった母、 父のバーチャルヒューマンを映し出し、毎日会話をすること。それは果たして理想的な追悼なのか、ということについての苦悩がありました。毎日毎日スマートフォンやテレビを通じて故人と似た仮想人間と会う事、その人を良い形で思い出にし、送り出すための過程としての、このサービスの制作・企画意図と矛盾すると感じました」
「第2に技術的ないくつかの限界があります。すべての日常と記憶に関する内容を共有できるレベルでパーソナライズされたAIは、スマートではありません。故人のすべての記憶と経験をAIが学習することはできないからです。それで、指定された場所に来て、 消費者が没入できるようにいくつかの装置とナラティブを設定しました。
故人と家族の思い出と過去の映像、 故人の生前のメッセージやビデオメッセージなどを順に構成し、 故人と会話を交わせるようにするなどの形です。つまり、特定の空間において、より没入できるようストーリーが織り成されたバーチャルヒューマンとの対話を想像してもらえれば良いと思います。そのため、スタジオという限定された空間を使うようにし、 使えるのはたった1回ではありません。2~3回スタジオを使うことができるようにしました」
チャン・セヨン代表 /Deep Brain AI
「次に準備している分野はAI コマースです。ライブコマースのショーホストとして AIショーホストを立てるのです。特に中国のような場合にはインフルエンサーたちの影響力が強く、 配信を24時間行うこともあります。有名インフルエンサーライブコマースは、配信に出ているのがアルバイトでも物が売れ続けます。
インフルエンサーが24時間配信し続けることはできないため、AIが視聴覚を満足させるバーチャルインフルエンサーを作るのです。ベースとして、きた質問に回答するというやりとりを、インフルエンサーのチームメンバーがテキストで入力しAIインフルエンサーが回答するという方法で運営します。実際、すでに中国のインフルエンサーと提携して中国版TikTiokでパイロット運営を行っています」
「現在、チームメンバーは130人ほどです。アメリカには15人のチームメンバーがいます。ソウル大に98年に入学し、電気工学部を出ました。当時、ベンチャーブームからベンチャーサークルが作られており、サークル活動の中で、創業の夢を見ました。Deep Brainが4つ目の創業です。1つはうまくいかず、あとの2つは大きな金額ではありませんが、 イグジットしました。Deep Brainは2016年に設立しました。
最初はAIチャットボットからスタートしました。しかし、テキストから、最終的には音声、 視覚も人のように話して動くAIと会話するようになるだろうと思い、この部分の技術を一生懸命売ってきたのです。次の段階として、メタバースでバーチャルヒューマンのニーズが爆発的に大きくなるでしょう。仮想世界で自分に似た、 あるいは誰かに似たアバターを作って取引もできるようになりますよ。メタバースで、自分にそっくりのバーチャルヒューマンが自分の日常と仕事を代わるようになるかもしれません」
朝鮮日報のニュースレター、「ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)」です。
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