【Jobplanet】4年前ランウェイ6ヶ月に...冬を事前に味わった創業者の答え
【Jobplanet】4年前ランウェイ6ヶ月に...冬を事前に味わった創業者の答え
ちょい事情通の記者 2号 イム・ギョンオプ
Jobplanet(ジョブプラネット:会社名(Brain Commerce/ブレインコマース))には企業レビューが約800万個あります。会社数も40万箇所ほどになります。これがどのくらいの数かというと…韓国の50人以上の事業場が約2万5,000ヶ所程度です。
つまり従業員50人以上の企業のほとんどがJobplanetに登録されているということになりますし、ほとんどの中小企業のレビューはJobplanetで確認できます。就職や転職をする際には、誰でも1度はJobplanetにアクセスし、勤める会社を検索してみるでしょう。
ところで、私たちはこのような人事プラットフォームがどのようにお金を稼いでいるのかということを全く知りません。
Jobplanetはすでに2018年、つまり、2022年の冬が来る4年前にチームメンバーの半分以上をリストラしたことがあります。創業者ファン・ヒスン代表のランウェイ(法人通帳の残高が0ウォンになるまで、スタートアップが生存できる期間)は当時6ヶ月でした。
そして4年後、彼の朝は毎日の売上、収益、支出と費用をまとめたExcelファイルを確認することから始まります。現在は毎日、月額も確認し、四半期ごとに残った資金と数字を慎重に問います。当時の苦痛が残したルーティンだといいます。
「まだ2018年度に受け取った投資金の70%が口座に残っています。今年は投資を受けましたが、少しだけです。緊急時に備えるため貯蓄、程度ですね。大幅な金融緩和が行われたこの2年、沢山の投資を受けている他のスタートアップを少し羨ましく思いました。しかし、ぐっと耐えました」
ファン代表は2009年から創業を続けて来た連続創業者であり、代表職ばかり今回で4回目を務めます。スタートアップという言葉にも馴染みがなかった時代、GrouponKorea(グルーポンコリア)の代表を務めました。
長年にわたって創業をしてきた彼がこのように保守的な会社運営を行っているのは、2018年に他の人々より先に冬を迎えたからでしょう。
ファン・ヒスンJobplanet代表。持っているキャラクターは、Jobplanetのキャラクター「オソン(五星)イ」。レビュー満点の「星五つ」から取った名前だという。 /Jobplanet
Glassdoorのコピーキャットでは?
-Glassdoor(グラスドア)のようにアメリカにはすでにJobplanetに似たプラットフォームがたくさんあります。コピーキャットではありませんか?
「ユニークなビジネスはほとんどないと思います。Cyworld(サイワールド)がもっと大きくなっていれば、FacebookはCyworldのコピーキャットと言われたことでしょう。人々のニーズから出発するのは同じで、結局はどの方向に進化していくかが重要なのです。
Jobplanetはレビュープラットフォームとしてスタートしました。その時にはもちろんGlassdoorはありましたし、Glassdoor以外にも同様のプラットフォームがたくさん存在しました。すべてのプラットフォームのUI / UXを参照しました。
ベンチマークにもロジックが必要です。当時韓国のインターネット市場で利用者が最も多く訪れていたプラットフォームはGマーケット。その次がJOBKOREA(ジョブコリア)でした。
1位コマース、2位HRプラットフォームということです。コマースはGrouponから創業を続け、精通していた分野であり、すでに垂直、水平ともに拡張した状態でした。
しかし、HRプラットフォームは違いました。JOBKOREA、saramin(サラミン)、Incruit(インクルト)など、私たちが知っているHRプラットフォームはすべて同じ方法でビジネスを行っていました。他と違う、差別化されたビジネスをすれば、十分に市場サイズ自体を大きくすることができる市場だと見て、参入したのです」
-その答えは会社のレビュー?
「既存のHRプラットフォームで、会社について学ぶことは十分に可能でした。企業の規模、売上高、給与水準などに関する定量的なデータですね。問題は入社後、自分がどんな環境で働くことになるのか、その情報は既存のHRプラットフォームではほとんど見つけられませんでした。それで「勤務レビュー」にフォーカスしました。
上手く行きそうだと感じました。始める前にサーベイを行いました。エクセルに、周りの友達が勤めている会社や、知り合いの会社のレビューをバーっと集めました。そして知人たちにそのファイルを見せたのです。例えば「○○大企業に行った7年目職員の会社評価」というようなものを見せましたね。友人は15分を超える時間、何も言わず集中してエクセル画面を見ていました。仮説検証に成功しました」
-人が集まっても簡単にお金にはつながりません。
「お金を稼ぐ仮説の検証は1番困難です。Glassdoorは企業サイドからお金を稼いでいます。アメリカの企業はPRチームとHRチームが密接に仕事をしています。会社に関する情報を提供して広報するPR自体が良い人材を見つけるための手段だと考えているのです。
採用のための投資、「企業ブランディング」にお金を使うのです。Glassdoorのようなプラットフォームには、A社への忌憚のないレビューがある一方、A社の最近のお知らせと採用イベント、A社が直接会社のメリットを説明できるページが別にあります。アメリカの企業たちがGlassdoorにお金を払って作成しているページです。
しかし、韓国の人事チームはコンテンツを作成し、広報する組織ではありません。会社のブランディングに、なぜお金を使うべきなのか知らなかったのです。「数百万ウォン(約数十万円)出して、他のHRプラットフォームの一番上部にバナーを出す方がより効果的」と考えたりもしていました。
つまり、そもそも市場自体を作ることができない、「マーケットメイキング」ができなかったのです。
中小企業の人事チーム長に「HRブランドという市場があります!」 といくら説得をしても容易にはいきませんでした。5年以上、レビューはたくさん集まっているものの、お金を稼ぐ方法は見えてこない状態でした。そうすると、ランウェイがすぐそこに迫る兆しが見えたのです。
50%のリストラが必要な場合は70%しなくてはいけない
-2018年にはランウェイが6ヶ月のこともあったそうです。
「2018年には口座残高0ウォン、本当に諦めなくてはならない期限まで、約6ヶ月ほどとなりました。皆さんは覚えていないかもしれませんが、2018年にも今のような雰囲気がしばらく訪れていました。スタートアップは厳しい、経済が厳しくなるかもしれない、と言われ、投資金が減った時代がしばらくあったのです。
実際の所、個人的な感覚としては2016~2017年から少し怪しかったと言うべきでしょうか。
HRブランドについて市場を説得してもうまく納得させられず、お金も入らない。だからと言ってマーケットメイキング、市場を説得するのをやめることもできませんでした。仕事も大きく広げました。チームメンバーは50人ほどになり、インドネシアと台湾、タイ、ブラジルにも支社がありました。
-韓国でもうまくいっていないのに、海外ですか?
「それらの国々には、当時、西欧圏のHRプラットフォームが進出していない、もしくはローカライズされたプラットフォームがありませんでした。Glassdoorはすでにフランスやドイツのような、英語が通じる国では市場をしっかりと握っていました。
例えば、ドイツの製造企業に勤めていた開発者がアメリカのIT業界に転職する際などに使われていました。英語を使わない国にあらかじめ進出し、先取りしておこう、と手を拡げたのです。
-職員をどれだけ減らさなくてはなりませんでしたか?
「半分以上減らしました。例えば、タイチームには開発者3人とデザイナー1人、企画者1人がいたのですが、5人をすべてリストラしなくてはなりませんでした。結局残ったのは韓国一箇所になりました。当時も、毎月の売上高と営業利益指標を内部共有しており、会社がどれほど難しい状況なのかは皆知っていました。
会社を出ていくメンバーたち、全員と個別面談を行いました。明日で、もう会わないんだね、と言って。今考えても最悪です。解雇を行いながら沢山泣き、家に帰って夜も泣いていました。眠れませんでしたね。そんな期間がほぼ1ヶ月近くになりました」
-どうにか時間を稼いだのですね。
「残った人々の苦しみの時間はそこから始まります。当然コストが減り、生存時間は増えます。問題は、士気が途方もなく下がっているということです。スタートアップの「やるぞ!」という雰囲気は一瞬で消え、昨日まで隣で働いていたチームメンバーの半数が去ったオフィスの静けさと静寂、あの苦しさは言葉では説明できません」
-今のスタート業界にも冬が近づいています。同じ立場に置かれた創業者たちにアドバイスするなら?
「リストラをしなくて済めばいいですが、しなければならない場合には、創業者が予想しているよりもさらに多く解雇しなければなりません。
例えば、50%のリストラをしなければならない状況なら、実際は50%を解雇するのではなく、60~70%をしなければならないのです。なぜなら、お金は十分に生き残れるほどになっても、残ったメンバーが会社を出る可能性も大きくなります。そうすると結局、人材が会社を離れてコア競争力を削り続けることになります。
ですから、残りの方により多くの報酬を与えることができる範囲まで考慮しなければなりません。そしてリストラを行った瞬間から、心構えも変えなくてはなりません。もはやビジネスを新たに考えなおすという気持ちに」
実際にJobplanetにアップされたJobplanetのレビュー。平均評価は5点満点で3.8点。3~4点台のレビューが一番多かった。
フランケンシュタインを作らずにお金を稼ぐ方法
-リストラを終え、次は何でしたか?マーケットメイキングを続ける?
「いえ。すぐにお金を生み出すビジネスモデルを見つけなければなりませんでした。HRブランディングは諦めることなく、ずっと市場を説得し形作っていきますが、それでもすぐに現金が生まれる市場を探さなければなりませんでした。それがヘッドハンティングチームを作り、ヘッドハンティングをして手数料を受取るビジネスでした」
-HRプラットフォーム会社とヘッドハンティング会社は会社の目標、ビジョンが完全に異なります。
「当然反発もありましたね。私たちはヘッドハンティング会社を作ろうと集まったのか、と言われました。私と役員たちはただ頭を下げました。
「BEP(損益分岐点)」を合わせるまで、私たちがただ誹りも甘んじて受け入れる、ダメだったら代表は悪徳だと罵ってほしい、だから今回だけついてきてほしいと説得しました。そうして耐え、少しずつ月の赤字が減っていきました」
-ヘッドハンティング市場もレッドオーシャンではありませんか?
「中小企業を集中攻略しました。中小企業の数、中小企業で働く方の数は大企業とスタートアップを合わせたものよりはるかに多いのです。中小企業をターゲットにする方がビジネス的にもっと大きくなります。
ところが、中小企業の社長たちは採用のための広告にお金をあまり使いません。バナー1つに300万ウォン(約30万円)使っても採用がうまくいく保証はありません。
一方、こうして「人を連れてくるので、採用となれば300万ウォン(約30万円)頂きます」とヘッドハンティングの論理で説得をすればお金を使って頂けます。10人レベルの中小企業の開発者のヘッドハンティングを行ったこともあります。
何よりも、JobplanetのヘッドハンティングチームはJobplanetユーザーデータベースを通じて候補者を素早く選ぶことが出来ます。転職する会社のレビューを見るためには必ずレビューを残さなければならない仕組みです。
だから、誰がどの会社でどんな職務についていたのかのデータがあるのです。 Jobplanetのデータベースに入り、ヘッドハンターはすぐに多くの人々に対して同時多発的に、転職の意志を聞くことができるという点において、確かな優位性があり、高い成功率を持っています。5人のチームで始めましたが、今は80人以上がヘッドハンターです」
-ヘッドハンティングがキャッシュカウとなったのですね。
「いえ。他の商品でもお金を稼いでいます。求人をする企業サイド、求職している労働者サイドの両方にサブスクリプションモデルを導入しました。
まず企業サイド。初期のHRブランドマーケットが今や徐々に作られてきています。本当に少しずつ中小企業の人事チームもHRブランディングの必要性を理解してきだしています。レビュー欄で、現職員と元職員の争いが起きたこともありました。
ある会社のレビューに「絶対行ってはいけない会社」と悪評があがったところ、現在の会社の人事チームのスタッフがレビューで非常に厄介な反論を行ったのです。むしろその会社のイメージに大きな傷だけ残しました。会社も今では、Jobplanetの自社ページにお報せを掲載するなど、イメージ管理の重要性について知っていっています。
このページを管理するSaaS(サス)について、今年3月に始めて月額利用料を課しました。サブスクリプションモデルであり、B2Bですから、売上は継続して上昇傾向にあります実際にブランディングに最善を尽くしている企業の採用成功率は、そうでない企業に比べて平均6倍ほど高いです。
求職者サイドでもレビュー分析のサブスクリプションモデルができました。現在も(自分が勤めている、勤めていた)会社のレビューを書いた人たちは他の人のレビューを無料で見ることができます。
ただし、私たちが各会社のレビューを分析してインサイトを与える、一種のレポートの提供も行っているのです。追加されたバリュー、価値を得るためには課金が必要です。B2B、B2Cともに毎月新記録を記録しています。特に企業向けブランディングSaaSは毎月2倍ずつ成長しています。
売上比重としては、ヘッドハンティングと採用仲介手数料収入が4、B2C求職者向けサブスクリプションモデルが4、B2B企業向けブランディングSaaSが2。このように4:4:2くらいに分かれています」
-いくつかの商品を作ってはいますが、Jobplanetのサービス自体は大きく変わってはいないということですね。
「チームが緊急事態になってくると、こうしたことが起きます。『これを付けてみようか、そうだ、この機能がなかったからだ、この機能を入れれば、ユーザーが増えるだろう』結局、はじめにユーザーに提供しようとしていた製品は消え、フランケンシュタインのようなモンスター製品が残るのです。そうなるのを警戒していました。それで、サービス自体はそのままに、ヘッドハンティングと他の市場からゆっくりと攻略し、お金を稼ぐ工夫をしたのです。
Wantedとの違い
-Wanted(ウォンテッド)のような競争スタートアップHRプラットフォーム、saramin、JOBKOREAの伝統的なオンラインプラットフォームまで。未だに、意外と競争が熾烈です。Jobplanetは何が違うのでしょう?
「伝統的なHRプラットフォームは、求人企業のための広告ビジネスモデルに焦点を当てています。
Wantedとの違いを探すなら、求職中の求職者サイドに焦点を合わせたプラットフォームといいましょうか、Wantedが会社が求める役割に合う人からの応募を受けやすい構造で設計されているとするなら、Jobplanetはより露骨に求職者の味方に付くプラットフォームです。
まず応募する会社の勤務者のレビューを見ることができ、Jobplanetがそのレビューを分析し、その会社の長所と短所をお知らせします。そして会社にヘッドハンターが在籍しているため、似たような規模の会社、似たような職務の平均年俸までお教えし、転職時にどのくらい年俸を提示すべきかを示します。一次の書類に合格した後には、面接ガイドを行うサービスもあります。
そのように求職者サイドに特化したプラットフォームであり、十分に差別化されていると考えています。
-最初の創業もコマース、2番目もGrouponKoreaで、コマースの創業を2回も行っています。何が違いますか?
「コマースは算数に近いです。マーケティングにお金をいくら使うと平均的に何人が訪れ、何人が買い、いくらの収益が生み出される計算式を解き続けるのです。トレンドは変わりますが、トレンドを追うのはMDの仕事です。経営者は算数の問題を解き続ければ良いのです。
しかし、HRには本当に多くの変数があります。多くの変数の問題を解決し、マーケットメイキングをするためには差別化する必要性があります。しかし、1度市場で地位を確立すれば、コマースよりはるかに安定して収益が生み出されます。コマースは算数の繰り返しではありますが、数多くの競争相手がいつも打って出てくる市場なため、緊張を緩めることはできません」
-Findaのイ・ヘミン代表と夫婦創業者であることはすでに広く知られている事実です。ちょい事情通の記者が昨年にインタビューも行いました。 それなら、子供がいる創業者は何が変わりますか。
「たまに人生の意味を事業に探す方々もいます。欠乏から没入が生まれるのだ、とすべてを事業に傾けたりしますが、私はむしろ家庭にエネルギーを注ぐようになり、より広い視野で事業を見られるようになりました。没入しすぎずにいてこそ、見えるものがあるのです。
誰もが「なぜ生まれたのか」という疑問を抱いて生きています。 自分のDNAが半分入っている子どもを見ると自分が見えてきます。週末2日間1日中子供と過ごして、毎晩疲れて倒れ込んでいても生活ははるかに豊かになりました。今週末は子供と屋内動物園に行きます」
イ・ヘミンFinda代表(左)とファン・ヒスン代表。 /ZDnetKorea YouTube
朝鮮日報のニュースレター、「ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)」です。
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