【ちょい事情通の記者】カカオピッコマのキム・ジェヨン代表、日本有料アプリ1位になった秘訣。午前3時42分に見つけた1秒間のエラー
【ちょい事情通の記者】カカオピッコマのキム・ジェヨン代表、日本有料アプリ1位になった秘訣。午前3時42分に見つけた1秒間のエラー
- カカオピッコマ|キム・ジェヨン
日本1位の有料アプリを作った彼のストーリー...「ブライアンから転職を提案されても躊躇した、理由は挑戦が怖かったから」
「先に言っておきますが、私は本当に勘違いして生きているんです。創業者だと。そうやって仕事をしています。実のところ、雇われCEOなんですけどね」。 28日に会ったカカオピッコマのキム・ジェヨン代表は、「会社のお金を使うとき、本当に自分のお金だと思えて、こんなふうに使ってもいいのかなと思う」と語りました。
カカオピッコマは、日本でLINE以降に「かなりの大金を稼ぐことに成功した」唯一の企業です。 もともと2011年にカカオジャパンとして設立された当初はKakaoTalkの日本サービスを念頭に置いていました。結局まともにサービスもできずにさ迷っていた2015年、キム・ジェヨン代表が加わりました。そして2016年4月にピッコマを立ち上げました。その後は誰もが知っているサクセスストーリーです。しかし、キム代表は「5月14日、この日が自分の誕生日の次に覚えている日」と言います。
「何の日かって?ピッコマのiOSの売上がちょうど200円だった日です。アンドロイドの売上はゼロでした。たぶん私が支払ったのが、200円だったような気がします、いわばピッコマの売上がなかった日です」。 200円は韓国円で約2000ウォンです。企業の一日の売上高が2000ウォンであれば、「世の中に存在しない」、無意味を意味します。現在、ピッコマは日本No.1の有料アプリです。アプリ内決済額は日本1位です。グローバルでも17位です。アプリランキングはほとんどがプラットフォームかゲームが占めています。昨年、取引額1000億円を突破しました。しかし、2016年5月14日の1日の売上は200円でした。
1976年生まれのキム・ジェヨン代表は、DAEIL(デイル)外国語高校と慶應義塾大学経営学科を卒業し、ほぼ全てのキャリアを日本で過ごしました。NHKジャパンでクリエイティブセンター長を務めました。2015年4月、つまりLINEが日本で最高潮に達していたときに、辞表を出し、当時は何もなかったカカオジャパンに入社、ピッコマという新しいビジネスに挑戦しました。
「違います。息苦しい組織を一蹴して、思いっきり挑戦してみようと思って移ったわけではありません。ブライアン(Kakao キム・ボムス会長)の提案を受けて「そうだ、挑戦してみよう」と簡単に決めて移ったわけでもありません。数カ月の間、ずっと言い訳していました。実のところ怖かったのです。200人以上の組織の長として、本当に良いサラリーマン路線をやめるのが。」 今日のレターは番外編です。キム・ジェヨン代表の「普通の起業家とは少し違う視点の起業ストーリー」です。
カカオピッコマ キム・ジェヨン代表/カカオピッコマ
1.ピッコマはウェブトゥーンだけのプラットフォームではない。
-創業者以上に創業者らしく働いているとお聞きしましたが、本人はどうでしょうか。
「前置きが長くなりましたが、私は今、本当に思い込みながら仕事をしています。私は実は雇われCEOじゃないですか。でも、本当に自分が創業者だと思って仕事をしていたように思います。最初入社した時は16人でした。新たに人を集め直さなければならず、サービス企画もしなければならず、どのようなビジネスをやろうかと考えていたら、自分のことを創業者と勘違いしながら働く人間になりました。」
-日本で最も成功した創業者、あるいは経営者ではないでしょうか?
「とんでもないです。ただ1人で勘違いしてやっているだけです。」
-ピッコマが昨年1000億円の壁を越えたと聞きましたが、実はみんなピッコマを単なる「ウェブトゥーン」サービスとしてだけ知っているんですよね。
「実は韓国で、日本でピッコマがうまくいっている、とよく言われているのは、とてもありがたいことですが、正しい部分もありつつ、やや事実と違う部分も多いと思います。例えば、ウェブトゥーンですね。韓国でも漫画本を横向きでページをめくりながら読んでいましたよね。子供の頃、漫画雑誌もそうやって見ていました。
デジタル化していく中で、私たちはウェブトゥーンという言葉を使うようになりました。形態も変わりました。『ウェブトゥーンが日本市場を完全に支配した』という表現をよく耳にします。でも実際は違うんです。日本では紙の漫画本もまだかなり売れていて、漫画本をそのままデジタル化した「デジタルコミック」と呼ばれる市場も大きいです。韓国では「紙の漫画本」も「デジタル漫画」も、すべてウェブトゥーンという言葉に埋もれてしまっている気がします。
実際、ウェブトゥーンがすごく伸びているのは事実です。事実ではありますが、今、日本の全ての人が漫画コンテンツをウェブトゥーンで見ているかというと、そうではありません。ウェブトゥーンも増えていますが、実は電子コミック市場も拡大しているんです。」
-ピッコマは単なるウェブトゥーン1位ではなく、デジタルコミック全体の1位ということですか?
「日本のすべてのアプリの中で、ピッコマがゲームを抜いて1位になりました。目覚ましい成果だと思います。昨年のランキングを見ると、1位がピッコマで、2位から6位までは全てゲームアプリです。続いてLINEマンガです。NAVERウェブトゥーンもグローバル全体で1000億円を突破したそうですが、おそらくebook japan(イーブックジャパン)も含まれているのでしょう。」
-Kコンテンツであるウェブトゥーンで日本を平定したという修飾語には多少の誤りがあるということですか?
「日本に18年、19年います。海外に出ると自然と愛国者になるんです。BTSやK-DRAMAのようなニュースを聞くと、本当に誇らしいです。しかし、グローバルコンテンツビジネスを語る上で、Kコンテンツだけを見るわけにはいきません。韓国に愛着がないからではありません。冷静に考えると、私はウェブトゥーンだけのプラットフォームにはしたくなかったのです。
日本でビジネスを始めた頃を振り返ると、ゲームもそうでした。韓国はオンラインゲームが強いじゃないですか。私たちとしては、オンラインゲームが流行っていた頃、オンラインゲームを得意としていて、(日本の)ゲーム市場全体から見ると、オンラインゲームは非常に小さなバーティカルだったんですよ。
同じでした。日本には「マンガ」(紙の本と電子コミック)というこんなに大きな市場があり、ウェブトゥーンも本当に良いコンテンツとして成長しているから、マンガ市場全体を対象としたプラットフォームとしてやってみようというのが、ピッコマのスタートでした。例えば、Netflixはアメリカで作られたからといって、アメリカのドラマだけではありませんよね。むしろプラットフォームの力で、韓国に投資して韓国ドラマも生み出し、日本ではアニメにすごく投資しています。このように総合的なプラットフォームになり、世界中を支配しているのです。」
-漫画というカテゴリーで「Netflix」のようなプラットフォームになる?
「なぜ私たちはNetflixのようなものを作れないのか。なぜ私たちはKコンテンツだけをしなくてはいけないのかという発想がありました。まだまだ先は長いです。そういう意味で、グローバルアプリのランキング(アプリ内売上)を見ると。世界1位はTikTok、次にYouTubeです。次はゲームや、Disney+(ディズニープラス)、そしてまたゲームがあり、Tinder(ティンダー)やRoblox(ロブロックス)、HBOなどが登場します。ピッコマは世界で17番目に売上を上げるプラットフォームです。もちろん、YouTubeはアプリ内ではなく、広告のような収益が追加であり、それは除いたものになりますが。」
ここに重要なポイントがあります。TikTok、YouTube、Disney+、Candy Crush(キャンディクラッシュ)などは、全世界のすべての国の売上の合計です。アメリカ、カナダ、日本、韓国など。ピッコマは実は日本、1か所での売り上げです。日本1カ所の売上だけで、誇らしいことに(アプリランキングで)Lineage M(リネージュM)のすぐ隣で、Lineage Mの全世界での売上より大きいということですよね。
TikTokとYouTubeが世界1、2位ですが、日本だけのアプリランキングを見ると、YouTubeは12位、TikTokは21位です。ピッコマが日本という国ではTikTokやYouTubeに勝ったわけです。もちろん、彼らは広告という他の売上も大きいでしょうが、アプリ内収益だけを見るとピッコマがトップです。
ピッコマには実はウェブトゥーンもありますが、日本のマンガもありますし、中国のコンテンツもあります。それぞれのコンテンツが集まっている構造になっています。日本のコンテンツプラットフォーム市場では、それでもピッコマが最高の売上を上げるプラットフォームになったということです。」
2.ウェブトゥーンとマンガを並行する「マンガ習慣」を作る
-ピッコマは日本トップだそうですが、逆にそれが成長の限界になる可能性もあるじゃないですか。日本の漫画市場だけだと、潜在的な市場は小さいのではないでしょうか?
「世界のマンガ市場の規模をお見せします。デジタル漫画市場では日本がすごく大きいですよね。アメリカ、中国、ヨーロッパ、東南アジアがありますが、私の知る限り、トラフィックはあっても、売上は大きくありません。2024年、アメリカ、中国、東南アジアなどを全部合わせても、日本一か所より多いかどうかというレベルです。
現在、ウェブトゥーンは、日本のコミック市場の何%くらい来ているのかというと、10%~15%まで来たとように思います。推定値ですが。まず、ピッコマ全体の規模において約40%程をウェブトゥーンが占めています。 (他社である)LINEマンガに対するピッコマの推計もあります。だいたい(LINEマンガで)ウェブトゥーンが20%~30%と見ています。それ以外のプラットフォームをすべて最大で足しても、10~15%です。」
-ピッコマは2016年にスタートしたので、10年足らずで日本トップになったんですね。
「ピッコマは2016年4月に漫画を始めました。ピッコマではこれをスマトゥーンと呼んでいます。ウェブトゥーンとは呼んでいません。実は、日本では、ウェブトゥーンというのは馴染みがないんですよね。日本では縦読みマンガと呼ばれることもあり、ピッコマがユーザー調査を行いました。「ウェブトゥーンとは何だと思いますか」と聞いたところ、PCで見るマンガだと思うという意見が多かったんです。ピッコマはスマートフォンで見る漫画です。だからスマトゥーンと名付けました。」
-初期から有料モデルにこだわっていて、それが功を奏したのがピッコマだと思います。
「2016年4月にウェブトゥーンを始めたのですが、序盤はほとんど数字が出ませんでした。当時、ウェブトゥーンはすべて無料でした。NHNがやっているcomico(コミコ)は、広告もなく無料でした。当時LINEがやっていたXOY(ジョイ、現在のLINEマンガの前身)も大変でした。XOYは当時日本でテレビ広告もやっていたのですが、やはり無料で、広告もありませんでした。でも、クリエイターからすると、膨大な労力をかけてコンテンツを作るのに、それがタダだったら悔しいじゃないですか。
1つにこれだけ手間がかかるのに、なぜ無料なのか、と思いますよね。ピッコマは有料化についての作業を続けました。2年程経って、月商が約1億円になりました。2016年4月に出発し、2018年4月に約1億円ほど売上が出たのです。また1年経って、ウェブコミックの売上が2億円になりました。パンデミック直前には3億円に少し及ばないというところまで上がってきました
パンデミック時にピッコマのグラフはこうして上がったのです。年間180%成長しました。私の英語名はジェイなのですが、文字通りJカーブですね。」
-年間180%の成長は驚異的なスピードです。パンデミックのおかげですよね?
「LINEマンガはピッコマより先にスタートし、彼らも日本にいました。パンデミックの時期も同じでした。LINEマンガは30~40%成長したでしょう。日本のプラットフォームであるメチャコミックなども30~40%成長しました。30%なら本当に素晴らしいことですが、180%はまた別の話です。」
-ピッコマ独自の別の戦略がうまくいったということですか?
「ピッコマは2017年1月の日本アプリランキングで253位でした。サービス開始から約8ヶ月経った頃です。本当に最下位から始まり、パンデミックを経て全体1位まで来ました。答えは実はここにあります。
日本では漫画好きな人は今でも紙でも購入します。Kindleで見たりもします。たいていのスタートアップ企業はこう考えます。紙のマンガを買う人、あるいは他のプラットフォームでデジタルマンガを見る人をどうやって奪ってくるか。もちろん、そうやって成長することもできます。しかし、成長率はそれほど大きくならない可能性があります。奪うのも大変ですから。エコシステムという言葉がよく使われますが、そのような奪い合いでは、市場全体はプラスマイナスゼロになるのではないでしょうか。」
-紙媒体の読者を奪うのではなく、デジタルマンガの読者を新たに作る方法?そんなものがあるのでしょうか?
「ピッコマは別のことを考えました。コミック市場ではかなりライトなユーザーを見かけました。実際、マンガを経験したことのない人はほとんどいないでしょう。ただ、今はマンガを見なくなったという人は多いですよね。スマートフォンは面白いもので、実のところ、みんな何かしたいからというよりも、暇なときに使うことが多いのです。日本も漫画を見る人は他の国より多いですが、YouTubeやTikTok、Instagramなどを使っている人が圧倒的に多いです。
そういう人の特徴があります。集中して何かをするのをあまり好まないのです。例えば、Netflixの映画、TVチャンネルのドラマ、TikTokやYouTubeのコンテンツなどは、フォーマットだけ見れば動画と呼ばれます。でも、私は違うと定義しています。違いは、消費者がそのコンテンツを消費するときの集中力です。」
-消費者の集中力がキーワード?ウェブトゥーンで簡単に漫画を消費するように誘導する戦略だったのでしょうか?
「マンガも同様でした。実はマンガ(日本式デジタル漫画。紙マンガをデジタル化したもの)も、スマホで軽く見ることはできるのですが、ある程度集中しないとストーリーを追うことができません。ここに登場するのがウェブトゥーンの強みです。スナックカルチャーコンテンツですね。YouTubeやTikTokのような。かなり受け入れやすいのです。私は個人的にテレビを見ながらウェブトゥーンを同時に見ています。見ちゃうんですよね。
ピッコマは、すでにマンガを見ている数多くの消費者をいかにマーケティングしてプラットフォームに引き寄せるかではなく、もちろんマンガを見ている人も来るかもしれないけれど、マンガに集中していなかった消費者を引っ張り入れる。そしてデータを分析します。登録初日はピッコマをクリックすると、まずは無料で見ることができます。障壁がないのです。そういう風にウェブトゥーンだけを見る消費者が存在します。一ヶ月経つと状況が変わります。半数以上がマンガを見るようになります。さらに時間が経つと75%まで増えます。
私がこれをどう表現するかというと、漫画好きな人は元々漫画を見ているのだから、漫画を見る習慣がない人を連れてきて、漫画を楽しんでもらう、ということです。別の例として、本が好きな人は本を読み続けるでしょうが、まだ本の面白さを感じない子供には難しい本よりも絵本を与えると、夢中になります。でも、大人になっても絵本は見るということはありません。絵本に慣れたら、もう少し集中できる本を見ます。」
-ウェブトゥーンとマンガの並行消費がピッコマユーザーの消費形態ですか?
「ウェブトゥーンとマンガを並行して消費しています。面白いことに、朝の時間帯は本当にたくさんのウェブトゥーンが見られます。同じ人が、夕方になるとマンガを読んでいます。このように並行して漫画を楽しむ習慣をピッコマが生み出したのです。日本漫画の全盛期は1995年です。ドラゴンボールとスラムダンクがあった時代です。紙の漫画本の時代です。マンガのカテゴリー別に見ると、その後、マンガ雑誌は急激に減っていきます。マンガの単行本は、ある程度は維持されています。マニア層は買いますからね。でも、日本はデジタルを始めるのが少し遅かったんです。多くの投資家から「コロナが終わったから、もうピッコマは成長しないのでは」と質問されます。日本はちょっと違います。もともとデジタルが遅かったのですが、コロナがデジタルを加速させました。ピッコマも一部貢献しました。日本のデジタルコミックはまだまだポテンシャルが高いです。2024~25年も成長し続ける市場です。」
▼最近5年間の取引額推移
- 2019年:134億円
- 2020年:377億円
- 2021年:695億円
- 2022年:884億円
- 2023年:1000億円以上
▼アプリのダウンロード(累計)
- 2024.01時点で4500万件
3. グローバル漫画市場でNeflixのような企業になる
-TVアニメ「俺だけレベルアップな件」の制作にも参加されましたが、何か理由はありますか?
-ピッコマのトラフィックをNetflixにタダで渡したら損じゃありませんか?
-結局のところ、グローバルが正解なのではないでしょうか?日本以外の国への進出戦略は?
-グローバル戦略の方向性としては、Kコンテンツだけでなく、他のアイデアも混ぜる?ウェブトゥーンのプラットフォームではなく、別の形で混ぜることができる?
-日本で成功した珍しいケースです。成功の秘訣は何だと思いますか?韓国のスタートアップ起業家たちにアドバイスをお願いします。
-切実さですね。キム代表は、LINEという大きな組織の安定した立場を捨てて、Kakaoの新生組織に移りましたね。
-ブライアン(Kakaoキム・ボムス会長)が転職を提案したのは縁があったのですか?
4.早朝3時42分に見つけた1秒間のエラー
-Kakaoに行くのが怖かったのは、人間なら当然じゃないですか?安定したサラリーマンでしたから。
-ブライアンのグローバルな情熱が転職を決意した理由?
-先ほど、成功の秘訣は切実さだと仰っていました。どのような切実さなのか具体的に教えてください。
-切実さとは、「現状のシステムを壊してでも顧客が望むサービスを出す」ということ?
-2つ目の成功の秘訣は何ですか?
-代表が切実だと、社員たちも切実に働くのでは?
-夜中の3時42分にピッコマの1秒の誤差をキャッチする切実さ、伝わってきます。
-雇われ社長に転職したのに、出版社担当営業まで自分でやったのですか?
-社長がそんなに必死に働いても、遊ぶ社員は遊ぶでしょう?80対20の法則という言葉もありますよね。
-ピッコマは「有料コンテンツ」にこだわって成功した珍しいケースです。
朝鮮日報のニュースレター、「ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)」です。
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