【Doodlin】28歳の文学部出身起業家「私はGoogle出身でもないし..数字とスピードで証明しなければならなかった」
【Doodlin】28歳の文学部出身起業家「私はGoogle出身でもないし..数字とスピードで証明しなければならなかった」
リリースから1年6ヶ月でKT、LGディスプレイのような大企業、yanolja(ヤノルジャ)、SOCAR(ソカー)のようなスタートアップなど、韓国内の3000社以上の企業を顧客として確保した企業がHR SaaS(サブスクリプション型ソフトウェア)「Greeting(グリーティング)」です。耳にしたことがある人はいないと思います。なぜなら、Greetingは求職者のためのサービスではなく、あくまで企業の人事担当者のためのサービスだからです。
Greetingはスタートアップ、Doodlinによって提供されています。Doodlinの創業者イ・テギュ氏(28)は企業に就職した経験がありません。大学生で起業しています。理工学系でもなく文系(韓国外国語大学中国語通訳翻訳学科)出身です。人事チームにどのようなペインポイントがあるのか、何が必要なのか、わからなかったはずでしょう。気になりました。
1年6ヶ月の急速な成長に加え、資金調達も順調です。今月15日にMurex Partners(ミューレックスパートナーズ)、Atinum Investment(エイティナムインベストメント)、Altos Ventures(アルトスベンチャーズ)、FuturePlay(フューチャープレイ)、Schmidt(シュミット)、Primer(プライマー)から106億ウォン(約11億円)の資金を調達しました。資金調達氷河期にうらやましい話です。最近B2Bスタートアップ、SaaSスタートアップが大勢の時代ですが、その流れの一角をつかんだのでしょうか。イ・テギュ代表には彼だけの別の悩みがあるのでしょうか。資金調達直後の彼にちょい事情通の記者がお会いしました。
Doodlinの職員たちがタウンホールミーティングをしている様子Doodlinは主要な案件を月に一度、全職員と共有し、議論する時間を持つ/Doodlin提供
人工知能からピボット...106億ウォン(約11億円)の資金調達
-GreetingはHR SaaS(サブスクリプション型ソフトウェア)サービスです。もう少し説明をお願いします。
「採用プロセスを便利にするサービスです。求人情報を作成、それを様々な求人サイトに配信し、応募者から応募書類を受け付け、面接の日程を決め、合否を通知する一連のプロセスを網羅したサービスです。簡単に言うと、人事担当者が採用する際、一週間かけて行うことを5分で終わらせるものだと思ってもらえば結構です。」
-106億(約11億円)の投資を受けられましたが、ご本人が考える迅速な資金調達の秘訣は何でしょう?
「資金調達を始めて3ヶ月で完了しました。ざっくりとお話しすると、こんな感じです。 実のところ、最近採用市場はとても悪い状況です。景気が良くないので。企業が一番最初に減らすことの一つが採用です。求人広告の数がかなり減りました。しかし、スタートアップや小さな企業はともかく、規模が大きい企業はまだそうはなっていません。そのため、採用を支援する良いソフトウェアがあれば、その価格がリーズナブルなものであれば、大きな企業の多くは導入しようとします。このため、市場は拡大し続けており、マイナス成長にはなりません。投資家がこの点を高く評価したのではないでしょうか。投資を早く決めてくれたようです。もちろん、Doodlinが2021年、2022年に見せた成長と成果が大きな役割を果たしたとも思います。」
-HRSaaS、競争相手がいない市場をうまく開拓したということがより重要だったのではないでしょうか。
「はい、そうですね。本当に短期間で迅速に市場を掌握しました。特にライバルがいない状況でした。投資の過程で聞いたところ、過去2年の成果が他のグローバルSaaS企業の上位25%の売上成長率より3倍速かったそうです。Doodlinは2021年7月にGreetingを正式リリースし、1年6ヶ月で累計3000社以上の顧客を確保しました。現在、Greetingを利用している顧客は、KT、LGディスプレイ、SSG、NEXONのような大企業から、yanolja、SOCAR、Zipbang(チッパン)などのスタートアップまで様々です。」
中堅企業でも採用手続きはExcelで行うのが現実...Doodlinがその問題を解決
-過去2年間の成長は劇的でした。認めます。しかし、市場の状況を見ると、今後はそのような成長曲線は出づらいのではないでしょうか。
「雇用市場の減速は昨年7月に初めて確認しました。当時、当社の主なターゲットはスタートアップでした。その頃から状況が厳しいという記事がたくさん出ましたよね?ちょうどその辺りから求人もかなり減り始めました。そこで、中堅以上のレベルの企業にサービスを売ろうと企画し、機能を作りました。最近では実際に、中堅企業、大企業の顧客が増え始めています。顧客数の伸びは2年前より鈍化していますが、決済額は大きくなっています。売上の伸びは減っていないのです。」
-中堅以上の企業であれば自社ERPがあるのでは?なぜスタートアップのSaaSを使うのでしょうか?
「思ったよりそうではないのです。人事採用に関する独自のシステムを持つところは10大大企業程度?そうでない企業は未だExcelで管理したり、古いソフトウェアを使ったりしています。人事チームや担当者は業務にとても不便を感じていましたが、今まで代替案がなかったのです。中堅・大企業の顧客を獲得するために、セキュリティにも気を配りました。最近、韓国インターネット振興院から情報保護管理システム(ISMS)認証も受けました。そのため、口コミで評判が回り、お客様がお客様を引き寄せる状況が続いています。」
-大企業はセキュリティに厳しいです。そんな大企業が快く?
「"採用管理を効率化したい"という大枠はほぼ同じですが、セキュリティに対するハードルが違います。大企業は独自のセキュリティ部門があり、いつも最終的にはセキュリティチームと会って協議した上で決定するという過程があります。それで、昨年初め当社はCISOも外部から迎え入れ、最近ISMSも取得しました。また、応募者の規模も異なります。ユニコーン級のスタートアップや大企業は応募者が本当に多数になります。溢れるような応募者と履歴書を効率的に管理するため、UIで対応しています。」
SaaSはアップデートが遅いという偏見...当社ですか?2022年に700回のアップデートを行いました。
-「別途営業はしない」主義だとお聞きしました。
「そうです。当社は別で営業をすることはありません。各顧客企業に集中し、彼らの不便をいち早く解決し、最適なサービスを提供することで、これを使った人事担当者が周りに噂を広めてくれます。例えば、最初の1社が2社、2社が4社、このようにどんどん増えていくのです。」
-最初のSaaS製品はどの程度の完成度でしたか?完璧なSaaSを準備して起業したのでしょうか?
「最初の顧客はFASTFIVE(ファストファイブ)です。当社はGreetingのサービスを1ヶ月で作ってリリースしました。とりあえず出した、というものでした。顧客のニーズがわからないので、まずは空っぽのサービスを出して、顧客が必要なものを付け足していこうというコンセプトです。最初の顧客がFASTFIVEだったのですが、そこの人事チーム長が当社に「これが必要だ、あれが必要だ」と要求事項を伝え続けてくれました。それを当社が素早くプラスすると、今まで使っていた有料サービスから当社のGreetingへと変えてくれたのです。なんと契約期間も残っていたにも関わらず、です。機能は少し少ないかもしれませんが、すぐすぐ改善されるのが長所でした。そのチーム長があちこち紹介もしてくださいました。そして今や弊社に入社されました。それで、「ああ、顧客満足の最終段階とは、結局うちの会社に入るようにすることではないか」と感じました。」
-偏見がありますよね。SaaSは外部サービスであるため、各顧客の急な要求事項には対応できない、結局自社でやった方が早い、という。
「Doodlinチームの長所は「すぐ」です。更新速度が凄まじく速いのです。2021年にはアップデートリリースを300回行い、昨年は700回ほど行いました。1日2回くらいの計算になりますね。そして、そのアップデートの方向性は顧客が望んでいたものだったという評価を受けています。通常、B2B SaaSは更新速度が速くはありません。お客様が見るには、当社は他社より4~8倍は速いといいます。そのため、離脱率も2%以下と低いです。グローバルSaaSサービスの離脱率は5%程度です。当社は半分のレベルです。それが私たちの成長の原動力だと感じます。」
最初の失敗の理由、「2020年3月、創業チーム6人は就活生のための人工知能面接サービスをリリースした」
-1日に2回アップデートするには、エンジニアが一体何人必要なのでしょうか。
「エンジニアは今十数人います。総員は49人(このうち半分以上がエンジニア、デザイン、プロダクトマネージャー)です。当社はエンジニアの数で押すことはしていません。その代わり、本当に仕事のできる人を迎え入れています。そのため、エンジニアの採用に時間がかかるのですが、優秀な人材を採用することで、サービス制作も早くでき、その過程で安定性も確保できるようになりました。」
-Doodlinは採用までに期間も長くかかり、慎重そうに思えます。Doodlinと合うか合わないか、何を見ていますか?
「ハハ。「合う」かどうかというのは、実のところ論理的に説明できなければ、ただ感覚ということになりますよね。私が好みの人だけ集めるということになりますが、それではいけないと思い、社内で決めている基準みたいなものがあります。例えば、自分の仕事が好きな人、自分の仕事に対するプライドがある人、また、長期的にこの分野でトップになりたいと思っている人、前向きな人、意見を聞くことができる人...など、様々な基準があります。そのため、少し時間がかかるようです。」
-創業時はHR SaaSではありませんでした。人工知能でしたよね?
「はい、2020年3月に創業チーム6人が集まって出した最初のサービスは、人工知能面接サービスでした。面接の準備過程をサポートしてくれるサービスで、その後、就活生の立場での問題を解決するサービスを追加しました。自己紹介書の作成のようなサービスです。当時はGPTが流行っていませんでしたが、私たちはエンジニアなので、一度使ってみました。そんな中、あることに気づきました。」
休み時間にクォン・ドギュン代表に駆け寄りました。「助けてください。アドバイスをお願いします。」
-失敗の原因、私も聞いて知っています。「 就活生の顧客が戻ってこない」というものでした。いくら就活生を助けるサービスをうまく作っても、就活生はそのサービスを2度と使わない?
「そうです。彼らは再び顧客にはなりません。リテンションがほとんどないのです。悩んだ結果、人事担当者のためのサービスを作ろうと思い、Greetingが生まれました。最初の投資をしてくださったPrimerのクォン・ドギュン代表も、人事のための何かを作ってみたらどうかと言ってくださっていました。ちょうど定期採用がなくなり、随時採用が一般的なものとなる時期が来ており、韓国の実情に合ったソフトウェアがほとんどない状況でした。」
-最初に5000万ウォン(約520万円)を投資したPrimerのクォン・ドギュン代表とはどういった縁だったのでしょうか?
「2020年1月、創業直後のことです。科学技術情報通信省のSOFTWARE MAESTRO(ソフトウェアマエストロ)というプログラムでチームメンバーと出会い、創業をしました。そこで上位10%以内に入れば、アメリカ研修に送ってくれるんです。頑張って入りました。その時に行ったアメリカ研修で、あるスタートアップのイベントに参加したのですが、そこはシリコンバレー起業家の先輩たちが発表したり、ネットワークを作る場でした。前NAVER代表のキム・サンヒョンさんもいらっしゃいましたし....有名な方が来るというので、一番前に走っていって熱心に聞きました。そこにクォン代表もいらっしゃったのですが、発表内容がとても素敵だったのです。すぐにアドバイスを求めたいと思い、休み時間に駆け込み、「助けてください。アドバイスをお願いします」と30秒間、私のビジネスアイデアをぶちまけました。切迫していましたね。すると、名刺を渡され、興味があるから事業計画書を見せてほしいと言われました。事業計画書は書いたこともなかったのですが、その時初めて書きました。その後、最初の投資で縁を結び、これまで4回の投資すべてでご一緒して頂いています。」
-起業家の個人的な魅力が投資家に良い印象を与えるという話は、信じる方ですか?
「Doodlinの投資会社にはPrimerだけでなく、Altos Ventures、FuturePlay、Schmidt、Murex Partners、Atinum Investmentなどがあります。資金調達成功の理由は、自分で言うのもなんですが、数字がよく出たからだと思います。当社はすぐに市場を掌握し、競争的状況も素早く整理して成長しました。また、当社のチームがアイデアを出し、それを迅速に適用し、そして顧客からのフィードバックを迅速に行っていることも、投資会社の方々にアピールポイントとなったようです。数字が少し出なくとも、克服方法をすぐに見つけるタイプだといえます。」
Doodlin イ・テギュ創業者/Doodlin提供
資金調達の成功?起業家の個人的な魅力? 「良い数字を出しているから」
-結局、数字とスピードで証明しなければならない?
「はい、私は学生起業家出身(イ・テギュ代表は韓国外国語大学の中国語通訳翻訳学科に入学、コンピューター工学を複数専攻した)で、GoogleやFacebookの出身でもないからです。つまり、私が経歴で証明できることは何もないじゃないですか。実力が一番重要だったと感じます。」
-投資家の前でのプレゼンはどのように行っていますか?発表スタイルが気になります。
「最近投資された方のフィードバックでは、私はピッチングを攻撃的にやっていると仰っていました。私なりに確信があるのです。危ないから助けてください、ではなく、私たちはうまくいきそうだから、今すぐ参加してください、このような感じです。だから、みんな「イ代表が私を焦らせた」というような感想を仰るんです。そして、私は逆に準備をたくさんすると、その通りにならないとすぐ固まってしまうタイプなので、資料を作っておいて、その後は全く準備をしません。会場に行きポイント台本を見ながら、即興で発表するスタイルです。」
-106億ウォン(約11億円)、大金です。このお金で何をする予定でしょうか?
「そうです。人をたくさん採用したからといって、機能が増え、速いスピードで成長するとは思いません。必要な分だけ良いエンジニアや他ポジションの良い人材を集めようと努力するつもりです。売上増加が第一の目標で、主にセールスとマーケティングの分野を高度化し、様々な実験をしていきたいと考えています。」
朝鮮日報のニュースレター、「ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)」です。
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