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【彼のWhy】230億円の投資を受けた、オヌレチプのイ・スンジェ代表インタビュー

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【彼のWhy】230億円の投資を受けた、オヌレチプのイ・スンジェ代表インタビュー

ちょい事情通の記者 第1号ソン・ホチョル

オヌレチプ(오늘의집/今日の家/todayhouse )はユニコーンです。正確にはtodayhouseを経営するBucketplace(バケットプレイス)が、です。5月上旬には、2,300億ウォン(約230億円)規模のシリーズD投資を受けました。

KDB韓国産業銀行、IMM Investment(IMMインベストメント)、SoftbankVentures(ソフトバンクベンチャーズ)、VertexGrowth(バーテックスグロース)(Temasek傘下のVC)などが投資しました。企業価値は約2兆ウォン(約2000億円)水準と知られています。これに先立ったシリーズCは2020年末で、当時は約8,000億ウォン(約800億円)の企業価値でした。 

 シリーズDの価値でだけ見ても、インテリアプラットフォームであるオヌレチプは、韓国最大の家具会社であるHanssam(ハンセム)よりも高額な企業です。テクノロジーバブルが到来している現状において、オヌレチプの価値をどのように説明できるでしょうか。

ちょい事情通の記者は「frequency(フリクエンシー/購買サイクル)」の革新だと見ています。ほとんどのeコマースは、すべて頻繁なフリクエンシーをベースにしています。Amazonからcoupang(クーパン)まですべて、消費者が1日に1回は購入するようなアイテムを販売しています。インテリア家具はその極地にあります。ソファは全ての消費者が一生に一度程度購入します。多くて2回ほど。

このeコマースを行うには極端に低いフリクエンシーは「不可能の壁」とされています。これが世界にインテリア専門のプラットフォームがあまり存在しない理由です。あったとしても「品揃えはしている」レベルであり、ユーザーがロイヤリティを感じて頻繁にアクセスすることはありません。つまり、Google検索で引っかかって入ってきたユーザーに家具を売るレベルです。

 オヌレチプはその壁を越えました。インテリアコンテンツのシェアという方式で。ソファは一生に一度しか買わないけれど、他人の家のソファは気になります。「ソファを買おうかな」と心の中で思った時から、オヌレチプに絶え間なくアクセスします。もちろん、他のインテリア家具でも。

インテリアだけで、全韓国人の半数以上のユーザーを集めた、オヌレチプ。この韓国のビジネスモデルが海外でも通じるのなら、 2兆ウォン(約2000億円)は高価な価格ではありません。

イ・スンジェ創業家も当然、これと同じ挑戦を夢見ているのではないでしょうか。イ創業家に、「2兆(約2000億円)のユニコーンになった気分」と、「これからどんな挑戦をするか」を聞いてみました。本来ははっきりと全てを話すスタイルなのに、今回は慎重な様子です。巨額のお金は、ただのお金ではなく、多くの人々の関心であり、重みであるためでしょう。

 

オヌレチプ(Bucketplace)イ・スンジェ代表/イ・テギョン代表
 

投資を受けた目的は?

シリーズDを受ける時になりました。投資誘致の準備をする段階でした。ここから少し長い道のりを行かなくてはならず、それに先立つものがシリーズDでした。

マーケットでは「オヌレチプは内部で当初考えられていた企業価値よりも外部評価が高く、オヌレチプ側も驚いたと言っていた」という話が出回っています。

それは違います。企業価値の高い低いについて、私が言うのはおかしなことでしょう。それぞれに考えがあるのではないかと思います。ただ、シリーズDラウンドを準備しながら、私は投資家にオヌレチプが考えているビジョンについてお話し、共感して頂きました。私たちが考えていた範囲内で行われたことだと思って頂ければと思います。

 

2000億ウォン(約200億円)以上の現金、どのような道のりに使われますか。

2つのことに挑戦します。1番大きなものはグローバルです。非常に難しく、長い時間がかかるかもしれません。オヌレチプが韓国で作り上げたビジネス、つまりウェブ・コンテンツ・コマース・コミュニティを一つにしたサービスは実は海外でも非常に珍しい独特なものです。インテリアに関する現在の消費フローの変化は、韓国でだけ起こる現象ではないのではないでしょうか。他の国でも似たような問題があるでしょうし、オヌレチプはそのような国においても企業価値を生み出せるのではないかと考えています。

韓国での成功体験を引き連れて行く、つまり、本当に、地球上で人々が家を見たり、日常生活を送ったりする中で、最も大きな影響を受けるサービス、それに私たちがなってみよう、そうした挑戦です。しかし今は初期段階にあります。その過程で非常に多額の資金が必要になります。

2つ目はライフスタイルスーパーアプリです。オヌレチプはどうしても、インテリアを行う際の問題解決を手助けするサービスですよね。引っ越しの時だけ必要なアプリです。しかし、今では家で過ごす時間が増え 、元々は寝るだけの空間であったり、休む空間だったものが、今では仕事も、運動もし、お茶もする、多くの活動を楽しむことができる空間に変わりました。

そして、空間には個人のライフスタイルが取り入れられます。 植物が好きな人もいて、音楽を楽しむ人もいて、絵を愛する人もいる、いわばあるテーマや好みを持っている方々がいらっしゃいます。今後オヌレチプは単に引っ越しの時だけではなく、暮らしていく中で、自らの空間を完成させる過程を手助けしていきます。日常のインスピレーションを分かち合えるような多くの発見を、家という空間の中に探しています。簡単に言えば、カテゴリ拡張です。

オヌレチプはこれまでインテリアを手軽に手伝ってくれるアプリ、という点に集中していたため、日常のインスピレーションをユーザーとシェアするということにおいては、ユーザーの立場においても馴染みのない概念だと思います。しかし、私たちは空間を媒介とし、ユーザーとつながっているため、私たちがプロダクトを上手く実現し、そうした空間を形作っていけば、より新しく意味のある挑戦になるでしょう。

さらに物流という観点においても、家具を家で簡単に受け取れるようにし、その後は組み立てのお手伝いも行います。空間のメンテナンスだけでなく、生活をより便利にする手助けをするサービスとして展開していきたいと思っており、それを「ライフスタイルの拡張」としています。解決しなければならない課題は非常に沢山あります。開いたままにして進めていこうとしています。




  

複数のグローバル市場で市場探索 

グローバルに行くとするなら、どの国ですか?やり方は、韓国と同じ、初めにコンテンツでユーザーを集め、次にコマースへと進む方式でしょうか?

とりあえずは、韓国の時と同じように進めるでしょう。コンテンツとコマースを同時に構築するのはヘビーであり、むしろ時間がかかってしまう可能性があると考えています。とりあえずはコンテンツの検索にフォーカスして、私たちが建てた仮説「海外ローカル市場でも消費者には、韓国と同じ不便さがあるはずだ」についてのリアルな問題を探し 、その仮説が合っているかを確認しながら動いていきたいと思っています。

特定の国、どこかに集中して進める、というのは違うようです。オフラインのビジネスであれば、ある国に投資してそこで答えを確認するというやり方になったでしょうが、私たちはそうする必要がありません。もう少しライトに進めていきます。空間探索の問題ですが、どの地域に多くのニーズがあり、私たちが実際にすぐに手助けできるのかどうかを迅速に判断しようと思っています。複数の場所で実験的にリリースし、そこで得られてるユーザーの反応を見て、逆に(ターゲット市場を)絞り込む方法です。

 

私は今東京滞在中なのですが、実験している多くの場所の中に東京もありますか?

もちろん日本も含まれています。韓国に近く、 環境においても色々と似ている点が多いからです。


海外進出する際も、韓国と同じように、先にコンテンツ後からコマースだととても時間がかかりませんか?

最初、韓国で始めた時、資本もチームもとても不足していました。なにより、これがうまくいくのかどうかわかりませんでした。当然石橋を叩きながら非常にゆっくりと進めていくことになりました。現在は複数の新規事業も経験、韓国でビジネスモデルも作り、良いチームと資本を持っています。

韓国で行ったときよりも、もう少しスピードアップできるでしょう。しかし、とりあえずスタートし、まず実行して結果データを得るという方法に慣れているため、気軽に出発し、徐々にスピードアップするという方向で進めます。

 

Karrot(Danggeun Market)のグローバル進出と似ていますね。

Karrotのケースの詳細はわかりませんが 、同じように見ることができると思います。Karrotも数カ国でリリースしていますが、韓国のビジネスがその国でも可能かどうかは、言葉では検証できないため、自ら実行しながら結果を検証されているようです。オヌレチプも、まずはその観点から見て、その後グロース戦略に入ります。

 

「投資金を貰っても、なにも変わらない」 

2つ目のミッションは、ライフスタイルの拡張、ですよね?M&Aのような方法も含まれていますか?

とても素晴らしいチームメンバーと共に仕事をしているため、基本的には自ら実行し、検証し、成長させる方法になると思います。ただ 、ビジョンを描く過程で必要となれば、投資や買収という道も開けておきたいと考えています一緒に進むのに良いパートナーが居れば。


実は、あまりピンと来ていません。その、ライフスタイルの延長、というものが。

たとえば、植物というカテゴリがあります。魅力的な空間を作るインテリアでもありますが、引っ越すたび一度買うというよりは、一度植物に興味を持てばずっと植物と同じ空間に住み続ける、というものだからです。日常になるのです。または、家では、友人を呼んで食事をするなど、色々なことが起こるでしょうが、この時の盛り着けなど、パーティーを手伝うことも含まれます。日常の拡大という側面です。

 

オヌレチプは今後、プラットフォームとして拡大するということですか?例えば、オヌレチプという大きな場所の中に他のスタートアップの小さなサービスが入ってきて、それぞれのサービスを提供するという方法も考えられていますか?

私はオヌレチプはすでにプラットフォームになっていると考えています。ただ今は、私たちの中に複数の外部サービスを置くことは考えていません。

 

最後の質問はお金です。2兆ウォン(約2000億円)という企業価値、通帳には2000億ウォン(約200億円)代の現金、そういったものが現実になっています。創業家はどのような気分でしょうか?

難しい質問ですね。実は、特に変わったことはありません。投資によって、これまでとは違う特別な感情の変化が生まれはしませんでした。私たちには想像していた未来があります。投資金を得られて、本当に挑戦してみることができそうだ、という感覚です。お金が入ってきて変わったというより、以前も今も同じです。昨日やっていたことを今日やり、おそらく今日やっていたこと明日やる、そのように進み続けています。投資が決まった日も、そのようにオフィスで仕事をしていましたし。

 

まだ夢が叶ったわけではありませんよね。

以前お会いした時にお話しましたよね。始めた時から終わりを決めていなかったと。私たちのチームができることに限界を設けません。誰にも分からない事ですから。設定した瞬間、それに縛られることもありえます。ただ、行けるところまで行ってみよう、という考えであり、それは今も同じです。夢の終わりを聞かれているのなら、終わりを知らず彼方へ進んでいるとお答えしたいと思います。



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