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【MAKESTAR キム・ジェミョン】グローバルファンのグッズとファンミーティングを引き受ける会社、KーPOPのNETFLIXを夢見る理由

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【MAKESTAR キム・ジェミョン】グローバルファンのグッズとファンミーティングを引き受ける会社、KーPOPのNETFLIXを夢見る理由

 ちょい事情通の記者 2号 イム・ギョンオプ

アイドルファンダムの中には、「銃床」(銃床を負う:誰もやりたがらないことを自ら引き受ける人の意)という役割があるといいます。地下鉄やバスに乗っている時、アイドルの写真と共に「○○、お誕生日おめでとう!」と書いてある看板を見たことがあるでしょうか?

これらの広告は事務所によって制作されるのではなく、ファン達が出し合ったお金を集め、制作されています。その際、銃床がお金を集め、制作を委託し、広告を運営する役割をすることから、自らを銃床と呼ぶのです。銃床はその他に、コンサートで振るペンライトやアイドルのための大型のプレゼントを準備する際に動きます。

私たちの知るクラウドファンディング。その概念は、アイドルファンダムではすでに非常に一般的でした。

「私たちが銃床となり、グローバルのファンを集めたら、どうだろう?」MAKESTAR(メイクスター)の創業者であるキム・ジェミョン代表は、そのようにしてK-POPプラットフォームを作りました。

ペンライトから雑誌まで、事務所に代わってのKーPOPグッズ制作、ファンミーティングの企画、クラウドファンディングを行うためのプラットフォームの提供を行っています。資金調達、製品企画、制作、配送まで、協力または代行します。

キム代表は、FTISLANDやCNBLUEなどの大規模なグループをプロデュースしたエンターテイメント会社、FNCの創設メンバーでした。 FNCが無名の芸能事務所だった時代、所属歌手と一緒に小さな海外ステージを回りながら、新しい市場を見つけました。


MAKESTARのキム・ジェミョン代表 /キム・ヨンジュン 客員記者


 MAKESTARは最近、「非対面ファンミーティング」という新しいビジネスモデルを作り出しました。新型コロナウイルスで世界の扉が閉ざされたとき、韓国内のエンターテイメント会社も非常事態に陥りました。

アルバムや音源の収入はあるのではないかって?エンターテイメント企業にとって核となる収入源は、韓国に来るK-POPファン、または海外K-POPファンの元に行き稼ぐコンサート、ファンミーティング、グッズ売り上げによる収入だったのです。韓国に来るファンも、海外に行きファンに会うことも、根本的に封鎖されてしまった状態でした。

それから、約2ヶ月後、スタートアップのMAKESTARは非対面のファンミーティングを開始しました。Zoomとファンミーティング、その間のどこか中途半端なものとして始まった非対面ファンミーティングは、コロナ渦が緩和してきた今日に至るまで、KPOPアイドルの世界的な存在感の橋頭堡の役割を担っています。

「一度でもMAKESTARにアクセスし、決済を行ったことのあるユーザーの国籍は、計235カ国に上ります。このうち136カ国で売上高は純粋な伸びを見せています。完全にグローバルなプラットフォームです。プラットフォームは赤字にならざるを得ないって?昨年のMAKESTARの売上高は2,970億ウォン(約312億1,600万円)を超え、営業利益率は13%でした」


「推しと直接韓国語で会話する」 、通訳は必要ないと話す海外ファンたち

 非対面のファンミーティングの形式は?

「サインは配送し、会話はZoomのようなビデオ接続を可能にするソフトウェアを使用します。アーティストと1対1、もしくは数人で簡単に挨拶をしたり、会話を交わしたり出来るイベントです。接続すると、好きな歌手がスマホの画面に30秒~1分ほど映り、自分も画面を見ながら、言葉を交わし、少しの間でも話をすることができます。とても短いビデオ通話だと考えてくだされば結構です。

 

30秒~1分。とても短い時間ですよね。その時間が、それほど重要なのでしょうか。

「オフラインのファンミーティング。ですから、私たちが知っているファンミーティングは、歌手とファンが会い、サインを受け渡しし、簡単に挨拶を交わす現場でした。ファンがアーティストと直接会って交流できる場であるという点において、ファンにとってはコンサートと共に、最も重要な機会の1つです。

そのため、ストリーミングの時代になっても尚、物理的なアルバムが発売され、1人のファンが何十枚ものアルバムを買っているのです。アルバムを購入することで、サイン会やファンミーティングへの招待券を手に入れるために。ファンミーティングは今やK-POPの文化になっています。

 

特別なスキルが必要ですか?

「最初は海外のファンには通訳をつけていました。その後、海外ファンの中から苦情を受けました。「推しの韓国語を聞きに来たのであって、英語を聞きに来たのではない」というのです。「私とアーティストの会話に他の人が入ってこないでほしい」という話も聞きましたね。

どのようにコミュニケーションを取るのかというと、海外のファンは基本的な韓国語の挨拶を準備してきていますし、聞き取ることもできるのです。発音が上手くなければ、紙に書いてくることもありますし。直接やってみるまで知らないことでした。

たとえば、5 人組のグループでは、 ファンはメンバー5人全員と会いたいだろうと思っていました。そのため、ビデオのアングルもメンバー全員が入るようにしていたのです。しかし、これも違うのだそうです。

「一番好きなメンバー1人とのコミュニケーション」を望んでいるのです。そこで、メンバー別に行うようにしてみると、反応が良くなりました。

 2年以上運営する中で、このように経験・解決したポイントは1つや2つではありません。ビデオコール接続の技術的安定性を構築、エンターテイメントやファンミーティングの形式に合わせて角度や接続環境を変えるなど、思いの外ノウハウを必要とする作業です。

 MAKESTARは、場所を貸すこともしますし、コンテンツ全体の流れを組み立てたりもします。大きな事務所はさておき、中・小事務所ではこうした経験が不足しているためです」

 

非対面のファンミーティングは新しい市場を切り開いたとか?

「グローバルの海外ファンが随時韓国を訪れたり、アーティストが海外にずっと行ってコンサートを行うというのは難しいことでした。コロナ以前もです。しかし今は、スマホさえあれば、どこにいてもアーティストと目の前で短い会話ができます。

スペースの制約が取り除かれ、世界中のファンと交流するのに、とても良い環境になりました。コロナウイルスによる制限が大幅に解除された今でも、芸能事務所は非対面ファンミーティングを続けています。海外のKーPOPファンを考慮してのことです。 コロナ渦の中で見つけた新しいビジネスモデルですね」

 


「Netflixの始まりはプラットフォーム、 アイドルにも直接投資する」

プラットフォームの宿命として、まず人を集めなくてはなりません。

「大きな事務所のアイドルとは異なり、中小事務所では需要を予測する必要があるため、クラウドファンディングモデルを適用しました。また、中小規模の事務所では、商品企画力が不足していたり、グッズ制作のプロジェクトを行えていなかったりするところも多くあります。

CDとファンイベントなど、製品を組み合わせてマーケティングを行わなくてはなりませんが、その点についてもMAKESTARがお手伝いします。企画初期段階から、MAKESTARのマネージャーを割り当て、企画を行ったりもします。

最初は、この論理を説明するのも大変でした。エンターテイメント業界はビジネスに非常に保守的です。クラウドファンディングに対する「モノを売っていないのに、お金が入ってくるわけがない」という反応もありました。参加してもらえるよう事務所を説得することは、最も大変だった作業の一つです」

 

すでに有名なアイドルも、MAKESTARでファンイベント参加者を募集していました。MAKESTARの手助けは必要ない気がしますが。

「ご存知であろうほとんどの大型芸能事務所も、参加パートナー会社です。新しいグローバルファンを引き付けることができるプラットフォームだからでしょう。Aというアイドル関連のグッズを買うためにアクセスしたファンもグループBやCに興味を示すことがありますし、世界中のファンがKーPOP関連のグッズを買いに集まっているため、容易にマーケティングや、プロモーションを行えるのです。

たとえば、Aというアイドルのファンがアクセスし、Bというグループの新アルバムやコンサートの報せを知る、ということが起こります。2つ目に、制作段階からCSまでの運用をMAKESTARが代わりに行うことがあります。芸能事務所が、商品の配送問題、コンサートのキャンセルや進行の問題に直接対応することは容易ではありません。

300以上のパートナー会社と共に仕事を行っており、これまで進めてきたプロジェクトは1,000個以上に上ります。韓国のほとんどのエンターテイメント会社とコラボレーションを行っていると思っていただければ良いと思います。今年進めたプロジェクトの平均収益(取引量基準)は8,000万ウォン(約840万円)でした」

 

手数料を払いたがらないことで知られる超大型芸能事務所が、「このビジネスは自分たちが直接やる」と乗り出してきたらどうでしょう?

 「大型事務所は、所属アーティストの育成とサポートに重点を置いており、私たちは商品制作と顧客サービスのサポートに最適化しています。コンテンツをビジネスに変えることとは少し違っており、異なるDNAが必要なのです。SAMSUNG(サムスン電子)は販売店を持っていますが、製作している全てのノートPCを、自社販売店でのみ売っているわけではありませんよね。

顧客と直接接触するプラットフォームには、プラットフォームに必要な人材とノウハウがあります。MAKESTARの全体メンバーの3分の1以上は、開発者またはプラットフォームプランナーです。大型事務所が知らないわけがありません。グッズを直接販売したり、コンサートを直接運営したりする場合にかかるコストと労力を計算し、皆、損得勘定を行ったでしょう。その結果、手数料を払い、プラットフォームを有料で使用した方が良いと、結論を出したのです」

 

プラットフォームは最終的にコンテンツに依存するようになる可能性があります。

「NETFLIXの始まりはプラットフォームでした。しかし、規模を大きくしていくなかで、クオリティの高いドラマやコンテンツを製作するようになりました。「イカゲーム」のように巨額を投資して新しいコンテンツの製作サポート、発掘も行っています。

コンテンツ自体、つまりアーティストに直接投資する準備をしています。特定のイベントやグッズプロジェクトへの投資になるかもしれませんし、他の方法でも良いでしょう。プラットフォームベースのコンテンツへの積極的な投資に乗り出す予定です」


「KーPOP企業はスタートアップ創業よりもハイリスク」

CNBLUEやFTISLAND、AOAの所属事務所として有名なFNCの創設メンバーでいらっしゃいますよね。

「大学のバンドサークルで出会った先輩後輩たちと一緒にFNCを立ち上げました。2004年か2010年までFNCにいましたね。2006年頃でしょうか。FTISLANDが日本等、海外に行くことになりました。当時、海外でのコンサートはとても劣悪で、今ほどKーPOPが流行ってもいない時代でした。

しかし、何度も海外に行くなかで感じたのは、韓国の歌手に対する海外ファンのファン感情は尋常ではないということでした。 そして、その熱気はどんどんと大きくなっていきました。その時、『次は絶対にグローバルに行かなくてはならない』と感じたのです」

 

自分だけのアイドル事務所を作ることも出来たと思いますが。

「芸能事務所の創業は、スタートアップの創業よりかなり危険です。成功の可能性は低く、競争は激しく、資金調達も困難です。成功しても、なぜ成功したのか説明できないというケースもよくあるレベルです。そして、凄まじいハイリスク、ハイリターンです。

たとえば、4人組のグループの内1人が社会的スキャンダルや事故を引き起こした場合どうなるでしょう?卵は同じカゴにいれるな(欲張らずに安全に投資しろ、の意)と言いますが、資金、組織力が不足している中小事務所は一つのカゴにオールインしても、成功するかどうかわかりません。 

自分ではコントロールできないリスクを常に突破しなければならないのです。コンテンツを製作するビジネスの宿命のようなものですね。

グローバルに展開していけるアイテム、そしてITを取り入れたプラットフォームビジネスに転換したかったのです。卵を1つのカゴに入れずともよく、卵を売る先が多いビジネスに。そこで、アイテムを探し、私がよく知っており、出来そうな領域を探すうちにMAKESTARのビジネスモデルを思いつきました」

 

韓流、そして、KーPOPの流行はいつまで続くでしょうか?

「今が始まりだと思います。20年前、数人の歌手が海外で人気で、韓流の流行だと言われていた時も、皆『これがいつまで続くか』と言っていました。しかし、ずっと続きましたよね。 私たちの競争力を私たち自身があまりわかっていないのではないかと思います。

内側での凄まじい競争を通して、高クオリティのコンテンツが生まれ続けています。海外のファンの反応に直接接している私たちも、溢れんばかりのミーティング予定や連絡をみながら『人はなかなか飽きないし、ずっと続いていきそうだ』と感じています。

特定の人気歌手が引退したら?いえ。海外のファンは、もはやKPOPというジャンル自体を楽しんでいます。特定のアーティストや曲だけに夢中になっているわけではないのです。ファン用語として『최애(最愛/一番好きなグループ、メンバー等のことを指す)』というものがあります。

しかし、最愛は別にいても、複数のアーティストを応援するのです。これまでにアーティストとのプロジェクトを300回行ってきましたが、そのうち50個のアーティストのグッズとイベントに参加していたユーザーがいました。プロジェクトベースでいえば、1,000個のプロジェクトのうち200個に参加していたユーザーです。 


<ちょい事情通の記者のスタートアップ、シーズン5を終了します。来週からはシーズン6でお会いしましょう。新しい分野の新しい創業者が待っています。>

/media/ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)
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ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)

朝鮮日報のニュースレター、「ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)」です。

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