【そのとき投資】VERSE WORK、メタバースの核心を掴むWowPoint3つ
【そのとき投資】VERSE WORK、メタバースの核心を掴むWowPoint3つ
ソン・ジンファCapstone Partners(キャプストーンパートナーズ)審査役
@そのとき投資(私はその時、投資することを決めました)では、現役の投資家がなぜこのスタートアップに投資したのかを共有します。
「メタバースとは何だと思いますか?」、最近興味のある投資分野について話したときに必ず聞かれる質問である。
その時々で臨機応変に「メタバースとは3Dオープンワールドゲームです」、「メタバースとは多様な相互作用を可能にするソーシャルプラットフォームです」、「メタバースはストリーマーたちの新しいコンテンツの発掘場所です」などと断片的な答えをしてきた。
チーム単位のリサーチを行っても、明快な定義を下せなかったからか、現場の声を聞くためにメタバーススタートアップを探した。
投資を決定するまでには、さまざまな観点からの研究、実行、ディスカッションが伴い、このプロセスが決定までの時間の大部分を占める。しかし、投資まで繋がったスタートアップには、共通して1つ以上の直感的な「Wow Point(ワウポイント:製品やサービスについて、感嘆するようなポイント)」がある。
有望な市場にはあっという間に競争者が集まるため、市場を先取りするためにスタートアップには特別な面が必要だ。VERSE WORK(ヴァースワーク)とは今年1月のキックオフミーティングから5月公式IRまで計5回のミーティングを行ったが、VERSE WORKは最初のミーティングから私たちを「Wow」させた。
MCN DIA TV第1号社員からVERSE WORK代表になるまで
ユン・ヨングンVERSE WORK代表/VERSE WORK
ユン・ヨングン代表は常に次の歩みが気になってしまう、ユニークな履歴の持ち主である。ユン・ヨングン代表はソウル大学経済学科を卒業した後、広告の魅力に目覚め、同大学の視覚デザイン学科を複数専攻した。
2度目の学士を終え、マーケティング担当者として初めての職場、Cheil(チェイル企画)でのインターン時代にコンテンツと広告の境がなくなる現象を目撃した。
将来的には単独のクリエイターたちが広告まで行うようになるだろうという確信を持った彼はCJ E&Mが設立した韓国初のMCN、「DIA TV(ダイアティービー)」に公開採用1号として入社し、「DIA TV」所属の200人のゲームストリーマーを1人で管理するという業務を引き受けた。
ユン・ヨングン代表は、新規クリエイターの発掘と育成の業務を引き受け、Bokyem、TesterHoon 、GAMST、Shoot for Loveなどチャンネル登録者100万人のクリエイターチームを6つ育成した。また、TEAM UNIVERSEのように外部IPを活用したウェブコンテンツ専門チャンネルを企画し、チャンネル登録者40万人のチャンネルに成長させ、PDとしての能力も立証した。
ユン・ヨングン代表はDIA TVにいた4年間で、担当プロジェクトの売上を7億(約7,200万円)から120億(約12億3,000万円)まで上げるという成果も達成した。
MCNマネージャーとして、ウェブコンテンツPDとしてトップを走っていたユン・ヨングン代表は、似たようなレベルの能力を持つクリエイターの中でもMinecraft(マインクラフト)を主力コンテンツとして活用するクリエイターのアクセス数が著しく高いことを発見した。
Minecraftの配信に参加した視聴者は繰り返し映像を視聴し、チャンネル登録者は興味を感じて次の配信に参加するためアクセス数が増加する、という好循環を作り出していたのだ。クリエイターを育成してコンテンツを企画するのであれば、メタバースを活用すべきだと決心するきっかけとなった。
メタバースコンテンツスタジオを構想していた彼は、アプリ・SNOW(スノー)のアバターサービスとして存在していたZEPETO(ゼペト)にMinecraftに準ずるコンテンツの可能性を見出し、2019年SNOW運営に加わった。子会社のセミコロンスタジオでウェブコンテンツ企画を総括していた彼は、昨年8月に独立してVERSE WORKを創業した。
Minecraftを中心に形成されたコンテンツエコシステムをZEPETOにおいても実現することを最優先目標とした。そのエコシステムの核心プレイヤーであるNAVER ZとNAVERウェブトゥーンからシード投資を誘致し、NAVERウェブトゥーンIPを活用したZEPETOワールド開発独占権を確保した。
「より多くのユーザーにより面白いコンテンツを作って見せる」というこだわりが現れるユン・ヨングン代表のキャリアパスと創業ストーリーが、私たちの最初の「Wow Point」だった。
誰もがクリエイター、パブリッシャーになることができる市場
画像提供/VERSE WORK
メタバースは、誰もがパブリッシャーになることができるコンテンツプラットフォームだ。代表的なメタバースプラットフォームであるROBLOX(ロブロックス)とZEPETOでは、別途の仲介者なしでプラットフォームのサーバーおよび開発インフラ、マーケットプレイスを通じてクリエイターがコンテンツを制作して収益を創出している。
メタバースプラットフォームは、すべてのクリエイターがパブリッシャーになることができる環境、つまりクリエイターエコノミーを形作っているため、コンテンツプラットフォーム内においてクリエイター個人は、モバイルアプリ市場におけるGooglePlayとAppStore、動画コンテンツ市場におけるYouTubeとTwitchのようなポジションを手に入れることができる位置にいる。
メタバースのクリエイターエコノミーは、既存のコンテンツ産業が持っていたペインポイントも解決する。ゲーム制作会社はユーザーのコンテンツ消費時間が有限であるという原論的限界、SNSおよびコンテンツプラットフォームは消費するコンテンツ主体を生産できないという欠点、仮想資産開発会社も特定オープンワールド内の持続的なユーザーの流入および活動によるエコシステムが実現されない限り希少性を持つNFT収集以上にサービスを発展させることが難しいという課題を明確に持っている。
メタバース内でユーザーは直接ゲーム開発とストーリーテリングに参加し、流行コンテンツを競争的に供給し、それらをもとにコンテンツストリーミングキャラクターやアイテムの開発、オープンワールド内に関連仮想資産エコシステムを構築をするなど、既存コンテンツ産業の問題点を解決するだけではなく、好循環が発生する経済エコシステムを造ることができる。
グローバルメタバースプラットフォームとしてのポジションを取るために、新たな挑戦者であるメタバースプラットフォームと既存コンテンツ産業のビッグプレーヤーとの間にはすでに激しい競争が起きている。
現在の急務は3Dオープンワールドとコンテンツ制作環境を実現することだ。アメリカのみでなく韓国国内でも3D空間実装技術を保有した企業に対する買収競争が昨年から活発に行われている。
しかし、問題は3Dオープンワールドを実現した、その後である。クリエイターエコノミーは空間のみのメタバースには自然発生しない。クリエイターエコノミーを活性化するのに十分な数のクリエイターを導入する必要がある。
クリエイターが流入してくるためには、収益性が発生するのに十分なユーザートラフィックが前提としてなければならず、それほどのトラフィックを発生させるにはキラーコンテンツが必要である。キラーコンテンツを作るクリエイターがいないプラットフォームの「コールドスタート」(Cold Start)問題は思ったより深刻だ。
コンテンツ業界への深い理解とそれに基づいたメタバースプラットフォームの未来に対するVERSE WORKのインサイトは、私たちにとって2つ目の「Wow Point」だった。
画像提供/VERSE WORK
3ヶ月ごとに新しい「ワールド」を作成
VERSE WORKはメタバースコンテンツ制作スタジオである。前述のように、メタバースプラットフォームにはクリエイターが必要である。VERSE WORKは次の3分野のクリエイターを育成し、それを中心にコンテンツを制作している。
- 開発者型クリエイター:仮想空間と体験型コンテンツを企画・開発するスクリプター
- デザイナー型クリエイター:メタバースのキャラクター、アイテム、アニメーションを開発する3Dモデラー
- 演技者型クリエイター:メタバース動画コンテンツを企画し、出演するストリーマー
VERSE WORKが育成するクリエイターたちは、コンテンツ・ゲーム企画の専門家である各リーダーの指揮下でコンテンツを制作する。
開発者型・デザイナー型クリエイターは、ミニゲームとソーシャルサービスが可能な「ワールド」を製作する。
YouTubeコンテンツとハイパーカジュアルゲーム制作の経験があるPDを主軸に、各チーム当たり10人のUnity/LUA開発者がZEPETOとROBLOX内のワールドを3~4ヶ月に1個制作することを目標に制作を進めている。
VERSE WORKがこの4ヶ月で開発してローンチした「キャットホリック」は、ユーザー滞在時間トップの座を掴んで離さない「SLIME PARTY(スライムパーティー)」を初めて抜いたゲームとなった。
VERSE WORKは次期作として人気のNAVERウェブトゥーン「奇々怪々」IPを利用した「奇々怪々ワールド」を今年6月30日にローンチし、スーパーIPを活用したキラーメタバースコンテンツの供給に拍車をかけている。VERSE WORKの目標は今年10個のグローバル興行ワールドを作ることである。
演技者型クリエイターはメタバースと現実を行き来しながら動画コンテンツを制作する。VERSE WORKは、登録者23.8万人の「Pixid」、登録者10万人の「썰플리(ソルプルリ)」というYouTubeチャンネルを運営している。
Pixidは現実でのメタバース再現コンテンツとして大きく注目され、最高視聴回数570万回、ほとんどの映像で100万以上の視聴回数を達成し、「썰플리」チャンネルも立ち上げ3ヶ月で登録者10万を達成した。
VERSE WORKのYouTubeチャンネルでは、制作したワールドを活用したコンテンツが十分な初期視聴者プールを確保する役割を果たすと期待される。また、VERSE WORKはこのような力量をもとにTikTokでKコンテンツオリジナルプログラムの最初の製作会社に選定され、TikTokにも進出する予定だ。
VERSE WORKは、登録者107万人YouTuber「Mylynn(マイリン)」のバーチャルアバターである「イマリン」を製作し、彼を主人公としたZEPETOバラエティを企画した。VERSE WORKは今年の内に「バーチャルインフルエンサー選抜大会」を企画し、これを通じて選抜されたクリエイターを集中的に育成する計画である。VERSE WORKは今年中に第1号インフルエンサーをデビューさせることを目指している。
/VERSE WORK
VERSE WORKはソーシャルメディア上のメタバースコンテンツがユーザーをメタバースに流入させ、流入したユーザーがメタバースクリエイターとして活動する好循環の仕組みが生まれることを期待している。このサイクルを繰り返すほど、VERSE WORKが保有するIPの影響力も急速に強くなるだろう。
ディズニーのようなコンテンツ産業のメインプレイヤーがその当時最も有効なメディアを活用して興行IPを確保し、その後流行とフォーマットに合わせてIPを活用するように、VERSE WORKはメタバースという新しいプラットフォームを通じてグローバルIP保有企業へと成長することが期待される。
VERSE WORKの驚くべきコンテンツ企画力とメタバース産業のすべてのバリューチェーンをカバーするビジネスモデルが3つ目の「Wow Point」だった。
この6か月間メタバースを定義するためにVERSE WORKへの投資を検討していたが、今はむしろVERSE WORKがメタバースを定義していくと考えている。彼らの楽しいコンテンツに対するこだわり、市場への深い理解、優れたコンテンツ企画力、革新的なビジネスモデルなどを理由にVERSE WORKへの投資を決定した。
徹底的に楽しさにこだわるPD達のスタジオ、VERSE WORKがグローバルメタバースコンテンツスタジオへと成長する日を楽しみにしてみる。
朝鮮日報のニュースレター、「ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)」です。
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