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【そのとき投資】スマホ時代、低下し続ける読解力...これをエドテックで解決したら?

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【そのとき投資】スマホ時代、低下し続ける読解力...これをエドテックで解決したら?

KakaoVentures(カカオベンチャーズ)チャン・ウォンヨル首席 

@そのとき投資(私はその時、投資することを決めました)のコーナーでは、現場の投資審査役がなぜこのスタートアップに投資したのかを共有します。

エドテック(EduTech)は、ICTサービスが最も急速に浸透した分野である。エドテックスタートアップの大多数は、学生の成績向上に注力しており、基礎学力低下問題の解決に取り組むスタートアップはほとんどない。

KakaoVenturesは数多くのエドテックスタートアップに投資してきたが、その中でもArtificial Society(アーティフィシャル・ソサエティ)は、基礎学力の低下問題に持続的に関心を持っている企業である。

Artificial Societyは、学生の読解力問題を解決するためモバイルアプリ「lesser(レッサー)」を開発しており、KakaoVenturesは今年投資を行った。

最近は「深いお詫び」や「3日間」を理解できないという事件(共に言葉の意味を正しく理解していない人々により混乱が起きた事件)もあり、「実質識字率75%」という挑発的な見出しのニュースが報道されたりもした。

しかし、文部科学省と国立生涯教育推進機構が発表した「2021年成人識字率調査」によると、79.8%が日常生活に十分な識字能力を有しており、「深いお詫び」は主に使われている意味が置き換わった事によって起こった問題と見られる。

しかし、モバイル端末の普及が進んでおり、映像による情報習得が当たり前の状況の中で、識字率が落ち、長文が読めない人が増えていることもある程度事実である。

OECDの国際学力評価において、韓国の読解力ランクは2006年から、毎年下り坂を進んでいる。読解力教育への関心が高まり、国語私教育市場は、2015年の1兆8,000億ウォン(約1,850億円)から2021年の1兆9,300億ウォン(約1,980億円)へと急速に拡大しているが、その効果は見られていない。これは、実践的な読解力教育のためのプロセスが依然として改善されていないためである。

読解とは、まず目で文字を見て脳内の単語を認知する段階、認知したテキストから情報を把握して理解する段階、把握した情報から思考し推論する段階から成り立っている。これらのステップの最後の2つ、情報把握段階と推論段階は、教育市場に属する領域である。過去数十年にわたって蓄積されたコンテンツとノウハウのある市場として、教育は注力されている。

一方、最初のステップである認知は医学の領域に属する。1度に見ることができる視線の幅はどの程度か、視線の逆行が頻繁ではないか、読んだ言葉をどれだけ覚えて読むことができるかは、思考力ではなく、身体認知能力に属する。

幸いなことに、小児精神科ディスレクシアクリニックでは、認知能力を診断および治療するためのプログラムが整備されている。問題は、各機関ごとに診断プロセスが標準化されておらず、高価であり、アクセス性が低いということだ。

Artificial Societyは、他業界でも活発に利用されているデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)を通じて、これらの課題の解決に注力した。特に、診断が下されたら、治療のほとんどは投薬ではなく視聴覚トレーニングによるものであることを考えると、新しい領域は多く、市場を再構築できるだろうと考え、迅速に創業を決心した。


/Artificial Society提供    


自社開発のAIモデルと軽量化  

多くのエドテックスタートアップの中でも、Artificial Societyはより特別なチームだった。

まず、デジタルヘルスケア技術に基づき、すぐにエドテック市場に参入したという点がある。Artificial Societyによって開発されたモバイルサービスアプリLesserは、認知から思考まで、読解の全プロセスを診断し、向上をサポートする。医療技術を基盤として、デジタルトランスフォーメーションによって教育問題を解決しようとしているのだ。

読解は、単に国語教育を革新するだけでなく、文字を素早く把握し、読んだことを頭の中で整理する認知能力であるため、教育ではなく医学的な対処を必要とする領域だ。

特に、Artificial Societyが対象とする分野は、基本的な学習能力としての「読む」ことである。社会、数学、科学を勉強するときでも、「読むこと」は学習の最も重要な要素であるという事実に焦点を当てている。

2つ目は、スタートアップにとって最も重要な、成長速度を創出できるチームであることだった。Artificial Societyのキム・ギヨン代表は大学院卒業後、デジタルヘルスケアのスタートアップとの協力を通し、医療分野のデジタルトランスフォーメーションを目にし、その可能性を確かめた。

キム代表は、デジタル療法は医療市場だけでなく教育市場においても大きなニーズがあり、かなり迅速に普及するだろうと判断した。しかし、最初に出した製品、ディスクレシア検査ツールは大失敗だった。ディスレクシア検査の必要性と市場規模の問題だけでなく、認知検査への不信感が最も大きな問題だった。

よって、キム代表は認知検査に、昔から教育現場において認められている前提知識だけでなく、事実的理解と推論検査機能を追加で取り入れ使用者の拒否感を減らそうと試みた。さらに、各要素を向上させるためのプログラムは、難易度レベルを細分化した。

モバイルアプリ「lesser」は学校現場でもで使用されており、韓国語の読解だけでなく英語のコンテンツを入れ、英語読解アプリサービスも開発している。失敗をこれほど迅速かつ迅速に克服し、失敗に基づいてより良い製品を作りだすことは、Artificial Societyへの投資に大きな影響を与えた。

3つ目は、初期段階の企業でありながら、強力な研究開発を持っていることだ。ソウル大学教育部との読解力試験検証研究を通して学術論文を執筆、漢陽(ハニャン)大学病院から有効性検証についてのコンサルティングも受けている。

特に注目すべきは、AIモデルの開発、軽量化スキルである。キム代表はやはり独自に韓国のAIモデルを開発し、オープンソースとしてシェアした開発者であるだけでなく、Naver、Kakao、NC Softなどの大企業のAI開発者もこの取り組みに協力している。その結果、彼らは多数の有名学会で発表または受賞されるという栄誉を手にした。

特にモバイルでは、すべての人工知能(AI)がリアルタイムに動作するシステムを実装することに成功している。人工知能(AI)モデルを低レベルのコンピュータでも稼働させられるよう、ハードウェアを考慮して調整、軽量化を行い、既存のモデルを10倍以上高速化したことによるものだ。

さらに、同社はUnity(ユニティ)ベースのゲームを実装し、単一のモバイルアプリ内でさまざまな機能の実装を検証した。デジタルヘルスケアベースのエドテック企業だが、最も重要な研究開発能力を保有している企業なのだ。

2021年4月に設立され、今年で2年目を迎えるArtificial Societyは、アイトラッキングベースの読解力診断および向上サービスを基盤とし、自社の技術力を最大限に発揮できるデジタルヘルスケア分野を、チャンスの場と見ている。

「デジタル機器のさまざまな機能を通じてこれまで不可能だった学習能力を診断・向上させるプログラムの提供」を第一の目標として、このミッションに共感できる様々な能力を持ったチームメンバーを迎え入れ、サービス開発に没頭し、凄まじい成長スピードを見せているチームである。

人によって、自分にできる能力は異なる。しかし、その能力を最大限に活用できるようにすることも教育の重要な役割である。デジタルトランスフォーメーションを通じて教育エコシステムを変革することが期待されるArtificial Societyは、すべての学生が自分の可能性を最大限に引き出すことができる世界を夢見ている。

そして、その切実な夢が現実となり、もう識字率が多くの学生の障害にならない世界になることを願っている。



/media/ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)
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