【特別寄稿】弁理士が見た創業の区分、そして忘れてはならないこと
【特別寄稿】弁理士が見た創業の区分、そして忘れてはならないこと
オム・ジョンハンBLTパートナー弁理士
本日は特別寄稿です。特許法人BLTのパートナーであるオム・ジョンハン弁理士は、2013年から2,000社を超えるスタートアップと働いた経験がある弁理士です。MARU(マル)180、創業振興院など様々なアクセラレーターでもメンターとして活動していました。
「20歳の時から創業を扱ってきました。大小のアイテムで何度も行いましたし、エンジェル投資も50回以上行いました。そうしているうちに、スタートアップが置かれた立場をよく理解するようになりました。スタートアップの本質に近づこうと努力してきました。
そうしてみると、自分がどのような創業をしているのか、特許を通じてどのように後発走者に障壁を築くべきかを分かっていない創業者が多いのです。そのため、残念に思っていました」
今日は、オム弁理士が弁理士の観点から創業者に伝えたい言葉を寄稿として準備しました。特に特許や著作権関連の問題がある創業者や企業には、役に立つかもしれません。
Slack(スラック)という革新的な企業の創業者であるスチュワート・バターフィールド(Stewart Butterfield)は40歳で創業し、Slackは開発後7年が経過してから急激な成長が始まった。
Slackはグループウェア企業よりも迅速に高度成長し、電子メールが支配していた業務用コミュニケーション市場の革新を追求し、フラットな企業文化で迅速な意思決定を下した。
コミュニケーションの効率性の向上を経験した企業たちはSlackに愛着を持ち始め、2020年にはSalesforce(セールスフォース)によって277億ドル(約3.3兆円)で買収された。
多くの人々が給料という麻薬を断ち切り、勇敢に創業に乗り出すが、いざ準備ができていない創業家たちは道を失って迷うこともある。彼らが迷ってしまう理由を見ると、自分が選んだ事業アイテムが正確にはどんな分野に属しているのかを知らないことが多い。
スタートアップの創業は文化創業、サービス創業、技術創業に分かれ、その事業的属性と知識財産権ポートフォリオ構成戦略が全く異なる。
「文化創業家」が技術に拘りすぎて、サービスを発売することができず、お金だけ使ってダメになるケースは非常に多い。 「技術創業家」が技術開発に集中するのではなく、営業だけに気を配り、結局技術や製品は作れず、人件費だけ使って終わることも多い。
「サービス創業家」は営業と職員管理に気を配らず、ビジネスモデルの特許を獲得することだけに集中し、結局、きちんとしたサービスを発売できず、挫折することが多い。
創業には「文化創業、サービス創業、技術創業」に代表される3つの分野があり、顧客タイプ、職員のマインド、準備しなければならない共同創業者、事業アイテム、重要な知識財産権などすべてが異なる。1つずつ見てみよう。
文化創業は著作権ビジネス
文化創業とは、コンテンツビジネス領域での創業をいう。詩、小説、美術、ミュージカル、音楽、映画、映像など、人間が思想や感情を表現した創作物に基づいて事業を展開することを指す。
Pororo(ポロロ)、PSY(サイ)、BTS、G-DRAGON、Larva(ラーバ)、Tobot(トボット)、ガールズグループのようなK-POP歌手から漫画キャラクターまで分野も多様だ。韓国や日本、アメリカ、イギリスなどが特にうまく行っているのがこの分野のビジネスだ。
中国も豊かな歴史とストーリーを持っているので、近いうちに文化創業分野の収入が多くなると期待される。中国について大きく考えていない国民も一部いるが、アヘン戦争以前の3,000年間世界トップの国家だったことを忘れてはならない。
エピソードも多く、それをお金にする方法もよく理解している人々だ。中国が技術的優位を得るようになれば、その後は文化的優位を取り戻そうとなるだろうし、アメリカのディズニー、ハリウッドなどの文化創業企業が中国でも発源することになるだろう。
やはり独特の文化コンテンツを持っている韓国は、文化創業家によるビジネスが国家収益のかなりの割合を持つことになるだろう。
文化創業に代弁されるコンテンツビジネスは著作権、商標権ビジネスとしても無防備である。著作権を中心に運営されるこの方面のビジネスは文化芸術の著作物保護のため、1886年にスイス・ベルンで締結した「ベルヌ(ベルン)条約」を基本ルールとして置いている。
国家間交流のルールも明らかであるため、国際的なコラボレーションや取引などが難しくない。したがって、容易にグローバル進出やコンテンツ輸出などの事業化が可能である。
最近ではデジタルでコンテンツを配信することが容易になり、YouTube、Netflix、Amazon、Youku、Spotifyなどのプラットフォームを通じ、大金を使うことなく、簡単かつ迅速に全世界を対象にコンテンツ販売を行うこともできる。
良いコンテンツを作るためには多くの投資をしなければならないという側面があるが、輸出は他の創業分野に比べてはるかに容易だ。例えば、2021年のNetflixを通じて公開された「イカゲーム」の成功は、オンラインを通じた文化創業のグローバル進出の可能性を見せた事例だといえる。
文化創業スタートアップはコンテンツがすべてだ。強力なコンテンツを作り、そのコンテンツを愛するファンを集めなければならない。ファンの忠誠心を引き上げることが文化創業ビジネスではかなり重要になる。
苦労して作ったコンテンツを強力な「著作権」で、商品に描かれたコンテンツを「デザイン権」で保護してこそ、お金を稼ぐことができる。ディズニーが良い先例になったことを我々はよく知っている。
コンテンツ生産とは、キャラクターを作ることだけを意味するのではなく、顧客に「楽しむ場所」を与えることを言う。 「世界観」と「アーティスト」が文化創業の核心コンテンツだ。
私たちがよく知る〈StarWars(スターウォーズ)〉や〈エヴァンゲリオン〉も世界観を提示しファンの参加を誘導したという点で、継続的にファンに楽しむ場所を提供した、と見ることができる。好調な文化創業企業が保有するコンテンツを見てみよう。
ファンを中心にファンたちが自らコンテンツを再拡散している。 最近、NFT(代替不可能トークン)やブロックチェーン技術を結合したアーティストプラットフォームが多く登場しているが、これらの文化創業者は過度に技術にのみ陥ってはならない。
そうした技術で「どんな文化」を作るかについて深く考えた後、NFT事業を始めるべきだ。文化創業の本質は、ファンが自社のコンテンツと恋に落ちるようにし、ファンと楽しく遊ぶこと(!)であるのを忘れてはならない。お金は後からついてくる。
サービスの創業は、現状を覆すつもりで
サービス創業は人々の欲求を解消する新しいサービスを作り、既存の古いサービスを革新するビジネスだ。
サービス創業では市場パイをどれだけ確保するかが重要なため、既存に存在していたサービス市場の状況を覆すほどの事業戦略でなければ規模の経済を達成することは難しい。
価格比較サービスである「danawa(ダナワ)」は、既存の電子製品流通の本山といわれていた龍山(ヨンサン)電子商店街(元暁(ウォンホ)商街、羅津(ナジン)商店街など)を覆す破壊的革新を行った。 「Baemin(配達の民族)」は既存のチラシ産業と電話番号案内産業そして注文食品配達産業などの状況を完全に変えた。
「Amazon」のコマースサービスは全世界のショッピングモールを覆し、AmazonのWebサービスはクラウド技術の新しい標準と呼ばれるほど既存のサーバー市場を「破壊的に革新」した。
サービス創業を準備するなら、既存のサービスで回っている市場を完全に覆すことを考えて事業を計画しなければならない。サービスマージンが小さく、市場規模が大きくない韓国は、既存の市場を完全に覆すサービスでない限り、営業利益を維持することは難しい。
アメリカ、中国などの巨大市場はニッチを占領するだけでもかなりの規模だが、それは韓国ではどうにもならない部分だ。代わりに技術創業のように長くかからず、輝くアイディアで迅速に事業的拡張が可能であるという長所がある。
サービス創業の主なモデルは、オフラインで行われたサービス産業をモバイルとインターネットにつなげて市場を拡大するO2O(Offline to Online)型のプラットフォームビジネスだ。サービスモデルから始めてもプラットフォームに進化し、低いマージンを打開する追加的収益モデルを作れば長期的生存が可能だ。
そして、ビジネスモデル特許(BM特許)と商標権ポートフォリオを正しく構築すれば、企業の収益モデル防御が可能である。ただし、技術的障壁が低いため、サービス創業でお金を稼いだ場合は、技術的障壁を積むことを常に念頭に置かなければならない。あまりに簡単であれば、チャンスは他の人にも行くということであるためである。
特許と技術は異なる
技術創業は技術的革新に関するビジネスだ。
1) より安くするか 2) より高価でも買いたいものを作り出すことが技術創業である。
Xiaomi(シャオミ)の場合、既存の市場で成功した製品と同様の品質を維持しながらも、より安くするということを上手く行うことで知られている。良いデザインと良い性能の製品を安く売る方式の技術創業に成功した企業といえる。反面、Appleは高価でも買いたくなる技術とデザイン、つまり「ユニークさ」がコアだ。
もし自社が既存市場に出ている企業の製品よりも安いか、ユニークさを提示できなければ、技術創業の成功の可能性は高くない。
技術創業企業であれば、既存の30万ウォン(約3万円)のカメラを10万ウォン(約1万円)で供給する技術を保有したり、既存の30万ウォン(約3万円)のカメラを50万ウォン(約5万円)に高めたり、顧客が買わざるを得なくなる「ユニークさ」を提供してこそ、市場で認められる。
最近、アクションカメラ領域で繰り広げられる技術戦争では、お金をより払っても買いたいレベルの製品として出てきている。
技術創業では、特許は核(Core)である。特許と技術は異なる。特許は技術の種となる「アイデア」を盛り込む器だ。良い弁理士に出会えば、後に競争者を制圧できる「良い特許」を確保することができる。大型特許法人を選択したからといって「良い弁理士」に出会えるわけではない。
創業者の事業領域をよく理解しながら、コミュニケーションが円滑である弁理士が良い弁理士である。最近では弁理士ではないにも関わらず、名義を借り、安い値段でオンラインで技術創業者を欺く人も多いので注意しなければならない。
B2B分野で「納品」をしなければならない企業も、B2C分野で「コピー」を防ぐべき企業もしっかりとした特許ポートフォリオを確保するのが企業経営の核心である。保険なしでも自動車を運転することはできるだろうが、事故が発生した時のリスクとダメージは凄いだろう。
技術創業企業の資金調達の過程でためらう必要もなく、海外輸出時にもIP(知識財産権)がない企業は事業進行に大きな困難を経験する他ない。技術創業の核心である 1) 価格を下げるノウハウ、 2) より高価でも買い機能、この両方はきちんとした特許を通じてのみ保護が可能だ。
最近発刊した本「技術創業36系」では、これまで見た、経営やマーケティング、あるいは創業過程などで技術創業者の不足を多く収めた。お金もたくさん飛んでいった。
時には2,000%の利回りも得た。 「技術創業36系」では私の直接的な経験を基に創業のA to Zを扱った。技術創業を対象としたが、文化創業、サービス創業など他の分野の創業者が得ることも多いだろう。
朝鮮日報のニュースレター、「ちょい事情通の記者(쫌아는기자들)」です。
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