韓国スタートアップは今、「人・人・人」|ニュースから読み解く「韓国IT・スタートアップ業界トレンド」
ニュースから読み解く「韓国IT・スタートアップ業界トレンド」では、今、韓国のIT・スタートアップ業界では何が起きているのか、何がホットなのかを「いっき見」できるようにKORIT編集部がまとめるコーナーです。関連する過去の記事や、会社の記事に飛べるようになっているので、気になった情報は元記事からさらに詳しい情報をキャッチしてみてください!
韓国スタートアップは今、「人・人・人」
韓国のIT・スタートアップ業界の5月、6月のニュースは、「人」にまつわる話題が目立っていました。
特に、エンジニア不足問題や、スケールアップのためのCレベル人材の取り合いに関する話題が相次いでいました。日本でも同じように問題視されている「IT人材不足」に韓国企業はどのような策を講じているのか、2カ月のニュースと共にまとめていきます。
そして次回も人にまつわる韓国スタートアップの話が続きます。次回は「コロナで変化した働き方のその後」「韓国・HRテック最前線」について最新ニュースと共にお届けします。
「IT人材不足問題」
公開採用中心だった韓国採用市場がIT業界を中心に随時採用に変わった上、前例のない開発者不足現象が起きている
人材獲得競争に参入したスタートアップの破格の行動は尋常ではない。「開発者1人が事業の成否を分けることもあり、死活問題となっている」というのが業界の話
開発者の求人難が深刻化し、人件費も上昇する中、海外市場に目を向けている
日本でも昨今、IT人材不足についてたびたび取り上げられていますよね。日本は2030年に79万人のIT人材不足に陥ると経産省が発表しています。
韓国でもIT人材不足は深刻のようで、特にスタートアップでは優秀なIT人材が事業の成功に大きな影響を与えるだけに、各企業は、IT人材確保に工夫を凝らしています。
この解決策として、韓国のニュースでは「海外人材の積極採用」に加え、「人材確保のための保証制度の拡充」の話題が相次ぎました。「人材確保のための保証制度の拡充」とはつまり、「福利厚生の充実化」です。
これまでになかった異例の福利厚生制度を打ち出し人材確保に乗り出しています。韓国スタートアップの紹介と共に各企業の福利厚生制度について見ていきます。休暇拡充や自由な働き方だけではない、異例の制度が打ち出されています!(※ここで紹介する制度は一部です)
※リンクのある会社名をクリックすると、会社の関連記事を見ることができます!
①通話音声をテキストにするアプリ「VITO」を運営中のAIスタートアップ「returnzero」
- 無制限の休暇使用が可能
- 出退勤時間と勤務形態自由
- 円滑な在宅勤務のための設備支援
②韓国内トップのオンライン医療プラットフォーム「dr.now」
- 入社時、前職比較で最大150%の年俸引き上げ
- 最大1億ウォン(約1,000万円)相当のストックオプションを付与
- 社員家族のオンライン診療費用を全額支援
③税務申告・還付サービス「サム・チョム・サム」を運営する「JOBIS&Villains」
- ワーケーション制度
- リフレッシュ支援金303万ウォン(約31万5,000円)を支援
④日韓インフルエンサーがセレクトするファッションECのスタートアップ「BRANDI」
- 新規のキャリア開発者にストックオプション1億ウォン(約1,019万円)支給
- サイニングボーナスで1億ウォンを支給
⑤ペット専用ECを運営する「PET FRIENDS」
- ペットと一緒に出勤可能
- 提携する動物病院での割引やペットの慶弔休暇支援
⑥金融商品おすすめサービスを展開するフィンテックスタートアップ「Finda」
- 人材を推薦した人と実際に入社した人ににそれぞれ1,000万ウォン(約100万円)のボーナスを5年分割して支給
⑦ブランド品ECプラットフォームのスタートアップ「MUSTIT」
- シニアクラスのキャリア開発者に1億ウォン(約1,019万円) のサイニングボーナスまたは2億ウォン(約2,039万円)のストックオプションを付与
今や、大きく成長したスタートアップの中には大企業並みの待遇を受けることができるため、大企業を辞めてスタートアップにジョインする例も増えてきているようです。
実際に求職している人の70%以上がスタートアップでの就職を視野に入れているというデータも出てきており、「多様で異色の福利厚生」もひとつの理由として挙げられています。IT職以外でもスタートアップへの就職を前向きに考えている方が増えてきているようです。
📰「IT人材不足」関連ニュースを見る
「Cレべルの人材の取り合い」
有名企業での勤務経験を持つ人材の専門知識と経験を企業成長に拍車をかけている
韓国だけでなく海外有数の企業で活躍した核心人事たちのスタートアップ合流のニュース
技術競争が激化するにつれてCTOの役職を新設する企業が増えている
スタートアップのスケールアップのためにCレベル*人材の取り合いが起きているというニュースも目立ちました。
*Cレベルの人材:経営幹部レベルである、Chief Executive Officer (CEO=最高経営責任者) 、Chief Operating Officer(COO=最高執行責任者)などを指し、経営を司っているレベルのことを言う 。
スケールアップを予定するスタートアップは、既存サービスの高度化のために、韓国内外のビックテック企業で活躍した人材を登用し、彼らの知識・経験を糧に企業を成長させるという動きが活発になっています。
それでは、どんな例があるのでしょうか。
①年内IPOを目前にする食品EC「Market Kurly」
🦄ユニコーン企業
元Kakao技術理事職リュ・ヒョンギュ氏をCTOとして登用➡️CTO役職を新設。今後ローンチされるサービスに向け技術高度化を図る。
🦄ユニコーン企業
元Googleソフトウェアエンジニアのチョ・ソンジン氏をCTOとして登用 ➡️Google Koreaでのエンジニア経験から、安定的なサービス運営を実現し、技術高度化のスピードを上げる方針。
③あなたに合った記事をおすすめしてくれるアプリサービス「Dable」
元NAVERエンジニアのチャン・ジョンホ氏をCTOとして登用➡️NAVERで日本の検索市場進出のためのシステム開発を担当し、数十億件のWeb文書を収集・処理する大規模なシステムを実現した人物。
🦄ユニコーン企業
元Googleのイ・ジュニョン氏をエンジニアリング副代表として登用➡️サムスン電子とYahoo Koreaを経て、韓国人で初めてGoogleの米国本社に入社したエンジニア。 今後同社をグローバルビッグテック企業レベルに引き上げるためにジョイン。
元Goldman Sachsのキム・ナムジン氏をCISO(情報保護最高責任者) として登用➡️KakaoPay、プレIPOを調達中のユニコーン企業「Toss」、coupang、野村証券など韓国内外の大企業出身者。ユーザー保護のためのサービスセキュリティを強化していく計画。
特にCTOの役職は、ユニコーン企業を目指すスタートアップにとっては必須の役職となっているようで、これまで技術に関する役職を設けていなかったファッション、ランドリー、物流分野のスタートアップも相次いでCTOのポジションを新設しました。
また、約4割のCEOが組織の成功のために最も重要なCレベルの役員として、CTOと、最高情報管理責任者(CIO)を選んだというデータもあります。
📰「Cレベル人材」関連ニュースを見る
次回は、コロナによって変わった働き方を韓国ではどう捉えているのかについて、また、日本でも急拡大中のHRテック市場、韓国ではどんなサービスが展開されているのか、現地・韓国のニュースと共にお届けいたします!
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