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Headless、「コマース企業が使わざるを得ないサービスを作ります」|Startup's Story #470

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[Startup's Story #470] Headless、「コマース企業が使わざるを得ないサービスを作ります」

テック業界で日常的に使われる「フロントエンド(front-end)」、「バックエンド(back-end)」という用語がある。フロントエンドとは、ウェブサイト接続時に見るUI-UX画面のようなものを意味し、バックエンドは目に見えないビジネスロジックなどの情報が保存される部分のことを指す。フロントエンドの開発をする人をクライアント開発者、バックエンドの開発をする人をサーバー開発者とも呼ぶ。

近年、韓国内外で脚光を浴びる「ヘッドレスコマース(Headless Commerce)」は、フロントエンドとバックエンドを分離した概念だ。フロントエンドを「頭」に、バックエンドを「体」に例えたことに起因しているのだが、これが代表的に適用される産業がエコマース領域である。

既存のEコマースプラットフォームはフロントエンドとバックエンドが統合されたソリューションのみを提供するため、入店企業は市場状況に合わせた迅速な対応を行うのが難しかった。だから、頭を分離し、胴体を強調したヘッドレスコマースは有力な代替案として登場した。中小企業や個人販売者も消費者の傾向に合わせてUI・UXを変更でき、複数のチャンネルで集めたデータを分析して管理を行えるためだ。

ヘッドレスコマースが新しい流れとなったことから、関連企業も注目されている。NACEL(ナセル)、fabric(ファブリック)、Commercetools(コマースツールズ)などの海外ヘッドレスコマースプラットフォーム企業が昨年今年と大規模な投資を受けており、韓国国内でも黎明期を迎えている。

昨年8月に設立されたスタートアップ「Headless(ヘッドレス)」は、AIとグロスハッキングを活用した自社モールD2C(Direct to Customer)、SaaS(Software as a Service)ソリューション開発会社だ。

コマース企業が、D2Cの自社モールデータを簡単に最適化し、AI、RPA、MLを通じてショッピングチャンネルやマーケティングチャンネルへの自動広告ビーディングや入札まで行えるシステムを提供する。ビジネスの現状と製品別、商品別、チャンネル別リアルタイムコマース現状を把握し、意思決定をソリューションに反映させるグロスハッキング(growth hacking)も可能だ。

Headlessは技術力と成長の可能性を認められ、現代技術投資とD.CAMP(銀行権青年創業財団)から7億ウォン(約7,100万円)のシードラウンド資金調達を行った。シードラウンドとしては小さくない規模である。Headlessは設立1年にも満たない新企業であり、ナムグン・ジファン代表とソ・ドンウCTO、チェ・ジンウクCGOで創業チームを構成している。

ナムグン・ジファン代表はブランドコンサルタントキャリアに勤めた後、「Strong egg(ストロングエッグ)協同組合」という農業スタートアップに共同創業者として参加し、FM communications(エフエムコミュニケーションズ)ではVRプラットフォーム「WAVRP(ワープ)」という社内ベンチャーで新事業を担当した。

その後ファッション投資会社「SUPERHOLIC(スーパーホリック)」とメディアコマース「JJ Global(ジェイジェイグローバル)」で新事業をリードした。

チェ・ジンウクCGOはブランド品プラットフォームtren:be(トレンビー)とフィンテック企業でマーケティング総括を行い、ソ・ドンウCTOはtren:beのCTOとインドのフィンテック金融プラットフォーム開発に参加した生まれながらの開発者である。Headlessの共同創業者たちに話を聞いた。


Q.次世代コマースの核心技術としてHeadlessコマースが注目されている。なぜだと思うか。

バックエンドが重要な時代となった。これまでEコマースの中心は流通モールだったが、今は製品へと変化してきている。流通モールに入店してインプレッションする方式から、製品中心になってきたのだ。この状況の中でオンラインコマースを行おうとすれば、選択肢は2つである。

ポータルなどプラットフォーム内ストアを活用するか、D2C自社モールを活用するか。しかし、それぞれ問題がある。前者には、検索インプレッションが良好で便利であるという利点があるが、顧客データの分析と収集が困難である。

後者は顧客行動データ収集が可能でリターゲティングマーケティングが可能だが、既存のレガシーにより検索プラットフォームの発展速度に追従できず、開発者なしで運営するには限界がありインプレッションを増やすことが難しい。

そこで私たちはD2C自社モールを、消費者の目に多くふれ、顧客データ収集が可能で自動マーケティングが行えるようにする方法について考え、ヘッドレスコマースが代案になると判断した。しかし、既存のサービスを使用するには高い費用を払わなければなかった。巨大企業には可能だろうが、中小企業ブランドには高い関門だった。


Q.技術の流れを読めても、すべてで事業化を試みたわけではない。このアイテムで創業を始めたきっかけや動機は何か。

メディアコマースで新事業を行う際、企業の持続可能性について悩むことが多かった。市場は成長中であり、それで浮上した企業もいくつかあったが、大半の企業は準備ができていない状況だった。中小企業だけでなく上場企業でもデータパイプラインは整備されていなかった。

オンライン技術は急激に発展しているものの、運営や物流など人が直接しなければならないことは依然として多い。その収集、分析がきちんと行われていないせいで、データ損失がかなり多く出ているのも問題だと感じた。予算をかけて広告をしただけ売上が出るパフォーマンスマーケティングの時代もあったが、それも終わり行く時期であったため、企業とブランドの持続可能性について考えることが多かった。

中小企業とブランドが持続的に生き残るためには、適切な技術を取り入れることが必要だと感じた。特にブランド品プラットフォームtren:beの成長過程において、モチーフを見つけた。tren:beの主な成功要因は海外ブランドのデジタルトレンスフォーメーションを行ったことだった。

AIとマシンラーニング技術を活用し、販売およびマーケティング自動化を通じて売上の上昇を果たしたのだ。創業チームのそのような経験をベースに韓国のオンラインコマース市場を変えることができると考えた。


Q.Headlessのソリューションは具体的にどのように駆動するのか。

Headlessが提供するD2C SaaSソリューションはグロスハッキングとコマースが同時に可能である。外部モール、自社モールにおいて、ワンクリックで製品データ値が登録される。

バックエンドソリューションで製品管理ができ、マシンラーニングを通じて製品の属性値が分析され、API連動を通じて販売&マーケティングチャネル(NaverShopping、DaumShoppinghow、KakaoShopping、FacebookShopping、GoogleShopping)に表示される。利用者がリンクをクリックすれば自社モールへ進むことになり、顧客の行動データ収集が可能で、機械学習を通じて顧客ニーズに合った製品属性をリアルタイムで更新することができる。

同じ製品でもAIを通じて属性とキーワードを多様にできれば、顧客のニーズに合った属性が含まれた商品を持続的に作り出してインプレッションを増やすことができる。いわゆるロングテール法則を活用したものだが、インプレッションの極大化及び転換率の上昇を引き出せる。マーケティングもAIを通じて自動で進められ、効率的な費用で自動ビーディングや入札まで進めることができる。

検索を通じ、流入した品質の高いユーザーのパラメータをもとにリターゲティングも可能で、ブランド製品の客層と最もフィットする新規顧客を持続的に確保することができる。製品デジタル原簿をもとにバックエンドですべてが管理できるシステムだ。


Q.技術のことをよくわかっていなくても、ソリューションを使う分には問題がないと理解して良いか。

古いEコマースプラットフォーム構造では、検索プラットフォームの速度に合わせることができない。たとえば、ポータルで特定の製品を検索すると、昔はショッピングモールへと誘導されたが、現在は製品が表示され、属性が追加され続ける。検索プラットフォームは、ユーザーに合わせてパーソナライズした製品データをさらに取り入れようとしている。属性値がなければインプレッションがうまくされない状態になってきているのだ。

また、消費者がクリックして流通モールなどのプラットフォームに進むと、顧客データは彼らが所有する。ブランド会社の立場としては、悩む部分だ。消費者が検索をした際、プラットフォームにアクセスするようになれば、顧客も奪われ、手数料も払わなければならない。

多くのブランド会社が流通モールを通じて売上を出しているが、純利益はそう多くないケースもかなりある。一般のブランド会社が持続的に成長するためには自分だけのパワーを持たなければならないが、競争力が優位になれるような強みをずっと流通会社に渡している状況なのだ。流通会社から出なければ、売上も大きくならない。

各ブランド会社と中小企業が自らの力を育てながら成長するには、結局B2Cの基盤を作らなければならない。顧客を受け入れることができる基盤として、結局B2C自社モールをするしかない。我々はそのような問題を解決している。今年4月にローンチしたSaaS「Catalog(カタログ)」がはじめの一歩である。


Q.ポータルやEコマースプラットフォームから抜け出そうとしているブランドの立場では必要なソリューションだ。実際の導入事例など、成果を聞かせてほしい。

私たちと協力する企業に、年間売上高160億ウォン(約16億4,000万円)を超える企業がある。同社はオンラインへの転換のために5-6人ほどのチームを作り、既存のオンラインコマース方式で複数のプラットフォームに入店した。ところがインプレッション広告を行えば売上が増え、広告をやめると売上が落ちる状態が続いた。プラットフォームの手数料が高いため、商品が売れてもマイナスになることもしばしばだった。

そのため、私たちと手をとり昨年10月にベータサービスをローンチした。コンサルティングも共に行い、流通会社を切り、アクセスに際し検索されるキーワードすべてをD2C自社モールへと移動させる作業を行った。そうして今年3月基準で自社モールの売上が16倍まで増えた。

以前は自社モールの売上比重は15~20%程度の企業だったため、自社モールの売上比重が非常に高まったということだ。また、業務協力を行って3か月で集めたユーザー数は過去1年の新規会員数より多い。実際の所、流通会社が力を得た背景には顧客がいる。顧客を流通会社に引き渡さずにブランドが保有し続けられるようにし、引き続きリテンションが起こるように力を合わせている。


Q.ヘッドレスソリューションを導入すると、効果が最も大きくなるのはどの産業領域だろうか。

ファッション業界だ。私たちのソリューションは、属性値が多ければ多いほど効果を現わす。例えば、「パンツ」であれば、ジーンズでも、ベルボトムでも、ブーツカットでも良い。一つの製品にいろいろな属性値がつくと、それらを全てインプレッションとして確保することができる。また商品数が多ければ多いほど良い。属性値も多くなり、当社の技術を取り入れた効果を目でより確実に見ることができるからだ。


Q.直接会った企業関係者の反応はどうか。

すぐにでも必要なサービスであるためMDは歓迎してくれた。実のところ、MDは不安定である。売上が落ちれば当たり前にストレスを感じ、売上が上がっても明確な理由を見つけるのが難しくて困ることが多い。別々に分かれているものをまとめてこそ、基準が生まれるが、容易ではない。私たちがそのような部分について提案を行い、どのように判断すべきかについての基準を提示すると、反応が大きい。


Q.韓国内にもヘッドレスコマースソリューションがないわけではない。ただしスタートアップやSME(中小企業、小公商人)が活用するには価格などの障壁がある。

まず、CatalogというSaaSサービスをローンチしてBM(ビジネスモデル)検証を行っている。6月くらいには、ある程度終了すると見ている。それがまとまれば、スタートアップや中小企業が使うことのできる合理的な価格帯で提供できるだろう。使いたいサービスを選んで使えるようにし、サービスを増やすたびにさらに課金する方式を検討している。


Q.ヘッドレスコマースを活用している企業としていない企業の違いはなんだろうか。

すでに、大きな格差を生み出しながら、競争は始まっている。大企業は各自の方策を設け、デジタルトランスフォーメーションを実行に移しているが、SME側は多く不足している。このような状況では格差はさらに大きくなっていく他なく、最終的には生存を左右する問題になる。

Eコマース領域だけでなくコマースはすべてがそうであると思う。店に行って物を買うにしても、フォースというデジタル化された装置がデータを算出する。それをデジタル化してビジネスに繋げてこそ、勝算がある。技術によって解決可能な部分は技術で解決し、企業はビジネスの本質にもっと集中しなければならない。

ブランドをどのように見せて、顧客が集まったときにどんなサービスと製品を提供するかについて悩むべきである。それについて、データを見てリアルタイムで方向性を提供するのがヘッドレスコマースだと思う。


Q.CatalogというSaaSをローンチし、Webビルダーサービスも考案中だと聞いた。

バックエンドに製品の原本さえうまく構築されていれば、Webビルダーを作る作業はそれほど難しくない。そこで、製品の原簿をできるだけ積み重ねてリリースしようと準備している。


Q.会社の最終目標はオムニチャネルデータプラットフォームだ。

今後メタバースプラットフォームができたとき、そこに商品、製品を入れなければならないのに、どのように入れるのか、データ収集はどうするのか分からないという問題が生じるだろう。ヘッドレスソリューションを通せば、すぐにデータを連動することができる。それが私たちが考えるオムニチャンネルだ。

すべての製品から生まれるデータをどのように拡張するか、という悩みの決算である。オンラインコマースだけでなく、コマース側で起こるすべてのデータを収集することを目標としている、

私たちは、企業がきちんとしたコマースを行うのを手助けするソリューションを提供しようとしている。そのニーズを解決できれば、まったく新しい領域に行くことができるだろう。フィーチャーフォンからスマートフォンに変わっていった時代、KakaoがKakaoTalkをどのように説明したのかを考える。

ヘッドレスソリューションは、KakaoTalkのように企業が使わざるを得ないサービスになるだろう。結局のところ、企業には売上が出るようにすることが最も重要であり、私たちのソリューションはそれを手助けする。定着すれば、さまざまなものへと繋ぐことができるだろう。KakaoTalkがタクシーなど多様なサービスと連結しているように。

企業がデジタルトレンスフォーメーションをうまく行えるように支える、Headlessという支援軍がバックエンドにいるということを覚えておいてほしい。製品販売者、ブランドが持続的に成長できるサービスを作り出すだろう。



写真:(左から)Headlessチェ・ジンウクCGO、ナムグン・ジファン代表、ソ・ドンウCTOⓒPlatum

原文:https://platum.kr/archives/185878

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Platum

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