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[Startup's Story #489] 薬剤師出身起業家のAIスタートアップ創業記

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[Startup's Story #489] 薬剤師出身起業家のAIスタートアップ創業記

「アメリカの薬剤師たちは当社のアプリを『ライフセーバー(命の恩人)』だと短く太く表現してくれる。韓国内の薬局や病院薬局の関係者は「夜勤をしないですむようにしてくれてありがとう」という口コミを残してくれている。何より最もやりがいを感じたフィードバックは、「単純業務、繰り返し業務が減り、患者ケアにもっと集中できるようになった」という内容のものだ。私たちがサービスを作った趣旨そのものだ。」 - Medilityパク・サンウ代表

AIベースの薬局デジタル転換スタートアップ「Medility(メディリティ)」は、人工知能を利用して薬局内の非効率を改善する企業である。代表的なサービスである錠剤計数アプリ「Pilleye(ピルアイ)」は、1度の撮影で最大1,000錠の錠剤を99.99%の精度で数えることができる。手ずから錠剤を数えていた医療サービス提供者の時間を130万時間以上節約したと評価されている。2021年度にローンチしたPilleyeは、今年7月現在、全世界225カ国で40万人以上の加入者を確保し、月間利用者は15万人を超えた。同社は成長性が認められ、複数のVCからプレAラウンドだけで56億ウォン(約6.1億円)規模の資金調達を行った。

薬剤師出身のパク・サンオン代表はなぜこの事業を始めたのだろうか。薬局において、錠剤を数えるというのは、どれだけ重要な作業なのだろうか。薬局にとってデジタル変革とはどんな意味を持つのか。パク代表に直接会って話を聞いた。

スタートアップ創業前、亀尾(クミ)とソウルで薬局を運営していた

大学で薬学を専攻し、慶尚北道亀尾(キョンサンブクド クミ)で同業者と共に薬局を運営していた。売上も順調に推移し、安定的な運営だったが、首都圏で働いてみたいという気持ちがあった。そこで、ソウルにある2階建ての薬局を一つ買収したのだが、内部の運営プロセスがかなり混乱しているのが見えてきた。人手は不足していなかったが、部署の位置や動線などの運営システムが非効率的だった。小児科の薬1つを製造して出すのに45分もかかっていた。1ヶ月間運営した後、営業利益を計算してみると、このままでは潰れると思った。

亀尾(クミ)で薬局を運営していた際、運営システムを作る役割を務めていたため、ソウルでも一度やってみようと考えた。内装を新しくし、2階にあった調剤室を1階に移し、スタッフの動線を考慮して器具も再配置した。機械自動化が可能な部分は全て自動化し、管理部分も不要と思われるものは省いた。その後、患者が薬を受け取るまでの時間が短くなり、営業利益も買収当時より10倍ほど上がった。

-薬局運営が順調だった中で、スタートアップの起業を試みている。きっかけや動機は?

「起業しようと思って、始めたことではなかった。以前から、薬局や薬剤師の無駄な反復業務を効率的に変えたいという思いが強くあった。特に錠剤のカウント作業が一番最初に解決すべき問題だと思っていた。スマートフォンで撮った人物写真は表情に関係なく、きちんと認識され、分類して保存までしてくれるのに、なぜ薬は識別できないのだろうかという疑問があった。アプリマーケットにカウントアプリはあったが、実際に使えるレベルではなかった。そこで自分が作ってみようと決意した。

そう思ったその日のうちにSoomgo(スムゴ)に、「AIでこういうものを開発したいのですが、基礎を教えてくれる方を探しています」と投稿した。幸いにも何人かの人がサポートしてくれて、そのうちの一人のAIエンジニアからPython(パイソン)を学び始めた。若い頃にC言語を勉強したことがあるためか、それなりに簡単に身に着けることができた。この仕事の原点だった。」

-学びながらのサービスのスタート、初期のサービスはどうやって作ったのか。 

「一人でやるより協業すれば、より良いサービスを作れると思った。そこで、私を教えてくれていたAIエンジニアに一緒に錠剤カウントソリューションを開発しようと提案し、彼も快く引き受けてくれた。エンジニアは開発だけに集中し、それ以外の仕事は私が担当した。PM(Product Manager)やPO(Product Owner)のような役割だった。初めてアプリが完成したときは、かなり感激だった。資料を準備して学習させるなど、様々な過程を経て結論を出せたことに大きなカタルシスを感じた。その経験が、今までこの仕事を続けている理由の一つだろう。」

-当時のアプリのカウント精度は満足できるレベルだったのだろうか?不満のあるものだったなら、どのように改善したのか、希望の結果はいつ出たのか?

「90.0%程度だったが、薬という特殊性を考えると、実のところ、意味のない数字だったと言える。そこでエンジニアと一緒に学習データを増やして上げられる精度を計算してみると、92-93%程度が最大値という結論になった。当時、薬剤師のコミュニティにアプリ開発記をアップしていたのだが、「99%になったら使える」という意見があった。個人的には95%程度あれば面倒な業務を軽減できるだろうと思っていたのだが、ユーザーの基準は思ったより高かった。この状態ではローンチできないと判断した。

代替案として、エンジニアがハードウェアに開発方向を変えようとした。精度が落ちる最大の理由は、写真を撮るときに周囲の環境や状況が様々すぎて、すべてに対応するのが難しいということだった。ハードウェアへ方向性を変えれば、制御された環境で錠剤の写真を撮ることができ、その状況でAIモデルを適用すれば99%以上の精度も狙えるという意見だった。しかし、ハードウェアは設計、製造、生産、量産、テスト、金型など様々な問題が伴うため、小さな企業がやるには時期尚早だと考えた。そこで、ソフトウェア的に錠剤カウントを極めるという部分にもう少し重きを置くことにした。

当時、結果を分析してみると、少数の錠剤カウントは非常に正確だった。そこで、錠剤の写真を複数のモデルにして学習させて予測すれば、大量の錠剤カウントの数値も高くなるだろうという仮説を立てた。実際に学習させてみると、精度が98.7%と飛躍的に向上した。まだプロダクトマーケットフィット(PMF)には達していないが、可能性が見えてきた。その後は繰り返し続けた。それでも例外的な状況は多く、様々なモデル方式をテストしながら着実に改善していった。

結局1年半ほどで99.2%の精度を出した。このニュースをコミュニティに投稿したところ、薬剤師が熱烈に歓迎してくれた。その後、口コミで急速にシェアされ、「Pilleye」というサービスと「Medility」というスタートアップが誕生した。社名のMedilityはMedicine(メディスン)とUtility(ユーリティ)の合成語である。」

-アイデアと実際の開発で実装するのは違うだろう。初期のサービス開発で最も苦労した点は何か?

「MedilityはFirst Mover(ファーストムーバー)と言える。それがメリットでもありデメリットでもあったが、まず最初に取り組んだ作業に、今やっていることが本当にうまくいくという保証がなかった。開始当時は、市場で通用するほどの精度が出るという確信がなかったので、問題が発生するたびに悩んだ。その都度、もう少しやれば上手くいくはずだという希望を持って続けた。」

Medility パク・サンオン代表©Platum

-スタートアップ起業をすると言った時、周りの反応はどうだっただろうか?安定した領域から、変数の多い領域に来たわけだが。

「熱烈に応援されることはなかった(笑)。私にとって、起業は自分の時間と労力を多く投入するものなので、十分にやってみる価値があった。ただ、時期的に長男が生まれて100日くらい経った頃だったというのがネックだったが、ありがたいことに妻が私を信じてくれて、やってみろと励ましてくれた。大きな力になった。」

-小さなスタートアップに優秀な人材が来るのは天運だ。チームビルディングはどのように行ったのか?

「初期に一緒にいたエンジニアは大きな会社に転職して、お互いの幸せを祈りながら違う道に進んだ。そこで、採用プラットフォームを通じて一緒に働くエンジニアを探したが、なかなか見つからなかった。それもそのはず、投資も受けていない小さなスタートアップに誰が簡単に来るだろうか。藁にもすがる思いで、よくアクセスするコミュニティサイトの匿名掲示板に求人情報を投稿したら、何人かの方から連絡があった。そうしてチームビルディングを行い、当時入社した人材の大半が今も一緒に働いている。特にそのうちの一人は現在、会社の中枢的な役割を担っている。ある意味、とんでもないほど幸運なチーム編成工程だった。」

-単に運が良いというだけではないはずだ。納得したからこそ、良い人材が入社したのだろう。

「投資家を説得するのも、チームメンバーを説得するのも同じだと思う。ベンチャーキャピタルは会社に金銭的な投資を行い、チームメンバーは時間を投資する。そのため、この事業に現実性があるのか、事業の未来はどうなのか、代表者はどんな人なのかをきちんと伝えなければならない。そのため、チームメンバー1人1人、採用のたびに本当に全力でIRを行った。このようなベースは今も続いている。」

-スタートアップは常に人手不足だ。だからといって無闇に採用することはできない。自分なりのHR基準があるか?

「印象深かった本として、エリック・シュミットが書いた「How Google Works」がある。その本の核は、「最高の人材を採用し、その人材が能力を発揮できる環境を作る」ということだった。Medilityもそのような基準で運営されている。

人材を採用する上で必ず守っているのは、絶対に妥協しないということだ。アーリーステージのスタートアップはエンジニア1人が惜しいので、ある程度機能適合性が合えば採用する。理解できる部分であり、それが現実的に正しいのかもしれない。しかし、当社は機能的にフィットしていても、企業文化と合っていなければあきらめる。」

-Medilityの企業文化とは?そして、会社にとって最高の人材とはどんな人材だろうか?スペシャリストがいるからといって、必ずしも良いチームとは限らない。

「Medilityは自律性が非常に高い会社である。どんな仕事をするか、何時間働くか、どこで働くかなどを自分で決める。仕事に集中できる環境を提供することが、会社ができる最高の福祉だと考えている。

ジュニアレベルであっても、自分のポジションで成長曲線が速い人が最高の人材である。スタートアップは会社が成長するにつれて、新しいことを学び続けなければならない。当社はそれを早く吸収できる人を最高の人材だと考えている。シニアレベルには機能的な部分では特に意見はない。ただし、周りのジュニア、ミドルレベルのエンジニアがうまく成長できるようにサポートし、周りに良い影響を与える人であること。

そして、自分で定めた目標を達成したことがある人であること。何かを本気で最後までやり遂げたことがある人は、問題解決能力があると考えている。スタートアップはプロサッカーチームと同じだ。プロサッカーでは試合中に監督がいちいち指示を出さず、状況に応じて選手が自分で動く。

Medilityには最高の人材が集まっていると自負している。特にチームメンバーが自分と職場を守るために、優秀な人材の採用に積極的に取り組んでいる。Medilityが良い会社であり続けるためには、人材が入って来続けなければならないと考えている。

最高の人材を採用し、文化を作る理由は、会社が成功しなければならないためだ。そのためには優れた製品がリリースされなければならない。良い製品をリリースするには高い製品能力が必要であり、最高の能力は最高レベルのチームメンバーと文化から生まれると考えている。スタートアップは成長が止まれば終わりだ。会社が成長し続けることができる原動力は人から生まれる。」

-従業員の人事評価はどのように行っているか、そして、従業員の報酬政策にはどのようなものがあるか?

「Medilityは個人OKR(Objectives and Key Results)を設定しない。組織の目標があるだけで、あとは各自でやっている。人事考課はなく、個人の能力が上がると処遇調整がある。報酬政策としては、他のアーリーステージのスタートアップと同様にストックオプションを付与している。レイタ―ステージに進んでも枯渇しないよう、ストックオプションのプールを明確に区分している。

従業員にストックオプションなどの報酬は必ず必要だ。しかし、これも1度2度経験すると刺激にならなくなってくるの仕方ない。自分が貢献し、作ったサービスが世の中に良い影響を与える経験をすることは、より大きなモチベーションになるだろう。Medilityの事業は、そのような動機付けと合致する部分がある。

私たちが神でない限り、欲しい人材だけを見つけることはできない。会社が見ることのできない死角的な部分は、同僚の評価のみで判断する。単純に一緒に働きたいかどうか、という従業員の意見だ。それがMedilityが引き続きレベルの高い組織文化を維持していく方法であり、実際にうまく機能している。」

-チームメンバーが成長するほど、代表の能力も成長しなければならない。CEOとしてどのような努力をしているか。そして、会社を運営する上で大変なことは何だろうか。

「力をつけていくために様々なルートで成長を図っている。スタートアップ起業前の私の経歴は、薬局を経営していた、というのが全てだった。そのため、多くの勉強が必要だと常に考えている。会社の成長に合わせて刻々と変化する代表の役割をあらかじめ予測し、能力を蓄えておくように努力している。特にエンジェル投資家、VCなどの優秀なアドバイザーから多くのことを学んでいる。」

-ビジネスストーリーを聞きたい。医療従事者にとって、『錠剤を正確に数える』というのはどのような意味をもつのか?どんなペインポイントがあるのか?

「Pilleyeは、薬に関連するあらゆる場所で必要なサービスだと思ってもらえればと思う。最も多く使用している顧客は韓国内外の薬剤師だ。そして最近では動物病院でも多く活用されている。一部の製薬会社ではQA(Quality assurance)をするために使用したり、仁川(インチョン)空港の税関で麻薬類の押収過程で利用されることもある。

薬局のペインポイントは、薬を数えるのに時間がかかること。この業界関係者でなければ、なぜ、薬を数えるの?と思うかもしれまないが、薬局では基本的な作業だ。1000錠の薬の瓶があるとする。そのボトルが開いていると、1錠2錠でも紛失する可能性があるので、正確に確認する必要がある。

処方箋を調剤するときにも必要だ。通常便秘薬のようなものは、6ヶ月分や1年分の処方箋を一度に受け取る。そうすると300錠ずつ必要になるのだが、大きな薬箱から必要な数だけ取り出し、1つずつ数えていく。単純だが、1粒でも間違っていてはいけないので、とても重要な作業だ。Pilleyeリリース以前は1つずつカウントするしか方法がなかった。

最初からAIを積極的に活用してサービス開発を行った。

サービスを企画した当時は、今よりもAIが普及していない時代で、性能も高くなかった。当時、複数の専門家から推薦された技術は、画像を処理するアルゴリズムである「オープンCV(OpenCV:Open Source Computer Vision)」だった。しかし、錠剤は横になっていたり、斜めに立っていたり、半分にカットされていることも多い。写真を撮る環境も、背景も様々である。白い机の上に錠剤を置いて写真を撮ることもあるし、黒い床で撮ることもあるし、電気が消えた環境で撮ることもある。特に白い板に白い錠剤があると、錠剤と床の境界線を見分けるのが本当に難しい。錠剤が透明の場合、床によって錠剤の色が変わることがある。そのため、オープンCVでは様々な状況に対応するのは難しいと考えた。現実的な学習が可能なAIで、解決していく他ない問題だった。」

-患者に処方される薬は、カウントが100%に近いほど正確でなければ意味がない。そのためにどのような部分を継続的に改善しているのだろうか?データセットのクオリティを重視しているように思うが。

「製品発売をするだけでは終わらない。サービスを開始してから2年8ヶ月ほど経つが、AIの学習は現在も進行形である。MLOps(Machine Learning Operation)も継続的に改善している。海外でサービスしていると、思いもよらない例外事項がどんどん出てくる。後処理によって継続的に潰していっている。」

-Pilleyeは韓国だけでなく、世界230カ国以上で活用されている。海外進出はどのようにアプローチしたのか?

「製品自体の使いやすさと効能があったからこそ可能だったと思う。錠剤を数えることは海外の薬局でも同じように存在する問題であり、当社のサービスがうまく機能したからこそ広まったのであろう。マーケットフィットが合わないのに、マーケティングだけで売上が上がったり、成功する、というのは神話のようなものだ。

製品を開発したとき、Reddit(レディット)や薬剤師コミュニティに製品を知らせる努力を行った。彼らの悩みを解決してくれるサービスであるため、すぐに広まった。初期から検索によく引っかかるようにSEO(Search engine optimization)にも気を配った。『Pill counting』や『Pill counting』で検索したときに一番上に表示されるようにしたかった。検索統計を見ると、Google検索や口コミを見てアクセスしてくる割合が98%である。コミュニティ、しっかり合ったマーケットフィット、検索順位を上げるなどのことが複合的にうまく機能した。

先日、台湾のMAU(Monthly Active Users)がとんでもなく上がった。10人レベルから1ヶ月で3千人まで上がった。それまで台湾に市場があることすら知らなかった。調べてみると、台湾の有名なインフルエンサー薬剤師が当社のサービス利用記をInstagramストーリーに継続的にアップしたことが発端だった。その薬剤師に感謝の気持ちを込めてDMを送った(笑)。」

-どの国で最も反応が良いか?そして、その理由は何だろうか?

「アメリカでの反応が一番良い。韓国は複数の錠剤をパウチに1回分ずつ包装してくれるのに対し、アメリカでは小さな筒に入れる方式が一般的である。在庫調査も韓国の薬局よりはるかに多い。

Pilleyeアプリ専用トレイを販売している。初期に試すことのできなかったハードウェアが最近リリースされたということだ。

デザイン特許も取得し、実際に薬局開業のプレゼントとして人気だという(笑)。現在、Pilleyeのアプリを薬剤師が多く使っているからこそできる試みだった。」

-運営している中で、本当に様々なことに遭遇されたと思うが、印象に残っているエピソードがあれば教えてほしい

「ユーザーと偶然会って話をする機会があった。病院薬局の勤めている方だったが、月に一度、在庫調査をする際には10人で10時間働かなければ終わらなかったという。しかし、当社のアプリを使った後、リソースが半分になったと話してくれた。以前は在庫調査がある日は夜勤になってしまっていたが、定時に退勤できるようになり、とても嬉しかったし、患者さんにもっと集中できるようになってありがたいと言われた。当社がこの事業を行っている目的はこれだ。」

去る8月17日、江南区駅三洞(カンナム区ヨクサム洞)のGoogleKoreaオフィスで行われた「Google 創G(創業+Google)プログラム5期メディアラウンドテーブル」で、Medility パク・サンウン代表(左から2番目)がパネラーとして質疑応答をしている様子。Medilityは創G5期選定企業である。©Platum

-Medilityは薬局業務のデジタル化を推進している。なぜ薬局にデジタル化が必要なのか?薬剤師の役割は今後どう変わるのだろうか?

「これまで薬剤師が行ってきた業務の多くは、単純で反復的なものだった。いわゆる雑務が2/3で、フロントに出て患者に対応する時間は1/3の割合である。そのため、単純反復業務をAIが代替すれば、かなりの人が職を失うという分析がある。

その意見は半分は正しく、半分間違っているという考えだ。第4次産業革命が起こり、デジタルヘルスケア領域が非常に急速に発展している。デジタルセラピューティクス、ウェアラブルデバイス、各種遺伝子測定検査が注目されている。しかし、すべての消費者が専門家の助けなしに、それらをうまく活用できるとは思えない。上手くやる人もいるだろうが、社会にはそういう人ばかりではない。薬剤師の助けを必要とする患者は多いだろう。

当社は薬剤師の能力は非常に優れていると考えている。これまで目立たなかったのは、社会に貢献する機会自体がなかったのと、裏方の仕事が多すぎたためである。単純な業務をなくせば、薬剤師はもっと価値のあることに時間を割くことができると思う。価値の低い業務はPilleyeのようなソリューションが解決し、薬剤師はヘルスケアの専門家としての患者のケアにもっと集中できるようになれば、社会にとってより有意義ではないだろうか。

日本とアメリカの薬剤師はヘルスケアの専門家として多くの活動をしている。アメリカの薬学部では、薬剤師の職能価値を「最もアクセスしやすいヘルスケア専門家」と教えている。例えば、アメリカでは、高齢の患者が複数の病院に行き、薬を飲む必要がある場合、処方介入を薬剤師が行う。医者がいちいち全部見ることは不可能であり、薬の専門家である薬剤師だからこそ直接行うことがでできる。日本の場合は、訪問が必要な患者がいれば、逆に薬剤師が訪問し、患者のケアをする方式をとっている。このように、先進国では薬剤師がヘルスケアの専門家としての役割を果たしている。韓国の薬剤師もこのような流れを汲んで準備する必要がある。」

-先日、56億ウォン(約6.1億円)規模の投資を終えた。プレAラウンドでは決して小さくない規模だ。経験者の立場から資金調達を準備しているスタートアップにアドバイスできることがあれば。

「IRというのは、ベンチャーキャピタルに共感を得て、欲しいものを手に入れる行為である。ならば、徹底的にその文法に従わなければならない。安易にアプローチすると、エネルギーだけ注ぎ込んで成果なく終わる可能性が高い。徹底的に彼らが好む文法の下で指標を見せなければならないし、その指標を作るために努力している根拠も示さなければならない。

VCは様々な側面からチームを測定する。しかし、結局本質はマルチプル回収にある。IRは、今後、会社やサービスがもっと大きくなり、近い将来にすごくうまくいくというストーリーラインを示すものだ。VCは、投資に対して10倍、100倍を稼げるかどうかを見極め、企業価値がその程度になるためにはどのようなトラクションが必要かを考える。そうなれば、スタートアップはそのトラクションに必要なマイルストーンを提示し、達成したことと後にできること、そして完成した形を示さなければならない。それを盛り込んだストーリーラインは誰が見ても納得できるものでなければならない。」

-短期的な会社の目標は何だろうか?そして、Medilityが描く事業の最終章はどんなものだろうか?

「薬剤師を悩ませる業務の中に、医薬品の包装検査というものがある。それを簡単にできるソリューションを作るために努力している。最終的な目標は、薬局業務のデジタル転換を私たちの手で実現することだ。GoogleのGoogleWorkspace(ワークスペース)やMicrosoftOffice(オフィス)のように、すべての薬剤師がMedilityのラインナップを使う画を思い描いている。」

-最後に残したい言葉や伝えたいことがあれば。この部分は必ず掲載する。

「それなら言いたいことがある。『妻よ、信じてくれてありがとう。愛してる!』」

Medility パク・サンオン代表©Platum



<画像=Medility パク・サンオン代表©Platum>


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