知っておきたい「NFT」(1/4):法的性格とライフサイクル|法律
NFTの法的性格及びNFTのlifecycleに関与する主体別主要争点
最近、国内のNFT(Non-Fungible Token)プロジェクトの事業領域が音楽、美術、ゲーム、スポーツ、エンターテイ メント及びメタバースなど際限なく拡大しています。
代替不可能なトークンであるNFTは、ブロックチェーン技術を活用して固有のID(token ID)が付与されるので、「代替不可能性(Non-Fungible)」という核心的な特性を持ち、その特性によって原資産の「原本性(Originality)」を 証明するのが容易です。また、NFTを利用すれば、相対的に偽造・変造が困難なブロックチェーンに特定のNFTの 所有者情報及び取引内訳等を記録することができるようになります。
これにより、全世界で様々な実物または非実物原資産に関連するNFTがminting(発行)及び流通され、NFTに 関連する金融商品も発売されており、各国政府は暗号資産(virtual asset)に続き業界で厄介な問題となっているNFTに対する規制の必要性や方向性を検討しています。
したがって、弊事務所では、NFTに関連する主なイシューを4回にわたってご案内する予定です。第1編では、NFT の法的性格及びNFTのlifecycleに関与する主体別主要争点を概観し、第2編から第4編までは、知的財産権、 ゲーム、税務に関する法的争点についてご説明する予定です。業務にご参考いただければ幸いです。
Ⅰ.NFTの法的性格
NFTの法的性格を検討するためには、まずNFTが特定金融取引情報の報告及び利用等に関する法律(以下 「特定金融情報法」)上の暗号資産に該当するか、それとも資本市場と金融投資業に関する法律(以下「資本 市場法」)による証券に該当するかについての検討が必要です。
1.NFTの暗号資産性
特定金融情報法は、暗号資産を「経済的価値を持つものであって、電子的に取引または移転すること ができる電子的証票」と広く定義しているため、同法で定める一定の例外事由に該当しない限り、NFT が同法上の暗号資産に該当するとみる可能性があります(特定金融情報法第2条第3号) ¹。
一方、国際マネーロンダリング防止機構であるFATF(Financial Action Task Force)が2021年10月28日に発 刊した暗号資産事業者に対するリスクベースアプローチに関するガイダンス改訂案では、NFTは一般的 には暗号資産に該当しないが、支払決済(Payment)または投資(Investment)目的で使用される場合 には別様にみることができるという可能性を示唆し、個別のNFTの実際の機能を考慮しなければならないと記述しており、金融委員会もNFTが暗号資産に該当するかどうかは個別に判断する必要があるとい う立場であるとみられます。
現行の特定金融情報法上、NFTが暗号資産に該当するかどうかを判断するためには、特定金融情報 法の趣旨とその規定、NFTに内在する権利、契約、用途、NFTの販売目的やマーケティングの内容、 NFTの取得目的、他の金融関連法令の適用可能性等を総合的に考慮して検討する必要があります。
2.NFTの証券性
NFTの場合、資本市場法上の証券の6類型のうち、特に投資契約証券に該当するかどうかが問題になり得ます。投資契約証券は、特定の投資家がその投資家と他人(他の投資家を含む)間の共同事業に 金銭等を投資して、主に他人が遂行した共同事業の結果による損益の帰属を受ける契約上の権利が 表示されているものを意味しますが、原資産に対する所有権等の権利を彫刻化したfractional NFT(いわゆるf-NFT)の場合、共同事業要件を満たすかどうかが特に問題になり得ます。
資本市場法上の投資契約証券について検討すると、比較法的な面で米国連邦最高裁判所のSEC v. W.J. Howey Co.、328 U.S. 293 (1946)判決でInvestment Contractを判断した基準であるHowey Testと米国の証券取引委員会(SEC)の2019年4月の「Framework for “Investment Contract” Analysis of Digital Assets」(以下「SEC Framework」)を参考にする場合が多いです。資本市場法 上の投資契約証券の場合、「損益の帰属を受ける契約上の権利」を要件とする反面、Howey Test及 びSEC Frameworkでは「他人の努力によってもたらされる利益を得るのが合理的に期待される場合」を 要件としているため²、Howey Testの基準を参考にする場合は、資本市場法上の投資契約証券との 差異点を綿密に検討する必要があります。
Howey Testを適用する場合、NFTの法的性格だけでなくマーケティング、販売・流通過程に対する発行者等の関与、流通取引市場の存在等により、証券と判 断される可能性が高くなり得るという特徴があります。 マスコミの報道によれば、金融委員会は2021年6月頃から証券型トークンに対する資本市場法の適用 基準を検討しており、2021年11月23日に政務委員会に提出した報告書に暗号資産規制の観点で NFTに対する暫定的な規制の可能性に関する内容が含まれていたため、今後、規制当局がNFTの法 的性格に対する判断基準を提示するかモニタリングする必要があります。 NFTが準拠法上、証券や暗号資産または金融商品等に該当すると判断されれば、関連法令上遵守 すべき規制により事業を営むことが困難になり得るので、事前に法律リスクを点検し、NFTプロジェクトの 構造を規制に適合するように設計する必要があります。
3.外国におけるNFTの法的性格の規定に関する傾向
海外の主要国においてもNFTが既存の金融関連法制上どのように分類されるか検討しています。米国では、NFTが連邦法上のcommodityまたは証券に該当するか、個別の州法による暗号資産またはMoney Transmissionに該当するかが議論されていますが、少なくともf-NFTは証券に該当する可能性 が高いと議論されています。
暗号資産に関連して最も積極的に事業が運営されているシンガポールでは、security token、payment tokenまたは、utility tokenに該当するかが主に争点となるものとみられます。 一方、European CommissionのRegulation on Markets in Cryptoassets(MiCA)案によれば、固有性(unique)及び代替不可能な(not fungible)性格を有するNFT発行者にはホワイトペーパーの発 行義務等は適用されませんが、固有性(unique)が認められないf-NFTを発行する場合にはMiCAの適 用を受ける可能性があるとみています。
英国でもNFTが証券または金融商品(financial instrument)に 該当するかどうかが問題となっており、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は2021年4月26日、NFTガ イドラインを発表してNFTが暗号資産、有価証券、前払式支払手段等に該当するかどうかを判断するための参考基準を提示しました。中国の場合、中央集権型のNFT取引所で法定貨幣である人民元でのみNFTを購入できるようにしており、現在のところNFTを暗号資産と同様に規制していないものとみられますが、今後、規制当局でAML/CFTの危険性を考慮して規制を強化するか見守る必要があります。
Ⅱ.NFTのLife cycle及び主体による争点
以下では、金融規制の観点に限定してNFTの発行(minting)、流通、保管等の段階に分けて国内法的な観点による主な法的争点を検討します。下記の争点に加えて、NFTプロジェクトが様々な国と関連している場合、現地法上の規制と共に韓国の外国為替取引法上の争点を検討する必要があり、付加通信事業申告義務等を 点検してみることができます。
- (発行) NFT発行者の立場では、NFTが証券に該当し、資本市場法上の証券の発行等に関する規制が適用されるかどうかが問題となり、NFTを国内で発行する場合、具体的な事実関係を検討して政府のICO禁止 の傾向に反しないよう留意する必要があり、仮想資産業圏法案で議論されている暗号資産発行者に対する 規制導入の有無を検討する必要がある点、ご参考下さい。
- (販売・流通) NFT取引所や販売プラットフォーム業者は、暗号資産または証券に該当するNFTの取引を仲介したり売り渡す場合、それぞれ暗号資産事業者申告や投資売買・仲介業認可なく営業行為をしたものとみたり、資本市場法上の無許可市場開設行為と判断されれば、刑事処罰を受ける可能性があります。また、 暗号資産を取り扱わないことを前提に暗号資産事業者申告をしていないNFT取引所や販売業者は、通信販売(仲介)業者に該当する可能性があります。NFTの売買仲介においてその代価の精算を代行する場合、 電子金融取引法上の電子支払決済代行業登録または事実関係により外国為替取引法によるその他専門 外国為替業務の登録義務が問題になり得ます。
- (保存・保管・管理) NFTの保存・保管・管理業者は、暗号資産事業者申告義務を判断するために、FATF の2021年10月のガイダンスと金融情報分析院及び金融監督院の暗号資産事業者申告マニュアルを総合的 に検討する必要があり、一方、NFTウォレットが分散型ウォレットにみえても、具体的な事実関係をみて暗号 資産事業者申告が必要な主体があるか点検する必要があります。 一方、NFTを利用したNFT担保暗号資産貸付サービスやNFTの価値評価、投資相談サービス等が発売されて いますが、国内でNFTと連携する金融サービスを提供しようとする場合、暗号資産に対して規律する特定金融情 報法に加えて、個別の金融法による争点と規制当局の政策動向を確認しなければなりません。
¹NFT の場合、NFT ごとに minting の対象となる原本に関連して固有の価値を有するという点で既存のビットコインなど代 替可能な同質的な暗号資産とは差があり、minting の対象となる原本を創作した creator に対する補償の可能性を考慮 して芸術・文化・コンテンツ産業の振興のために政策的に既存の暗号資産とは別様にみなければならないという見解もあります。
²「where profits are reasonably expected to be derived from the efforts of others 」
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