NFTを購買しても所有者になれない?|法律
[CHOI&LEEの スタートアップ ×法]#2 NFTを購買しても所有者になれない?
前回はNFTについて紹介しましたが、今回はNFTに関連する様々な法的問題について紹介します。
NFTに最も密接に関連する法的用語は、大きく「所有権」と「知的財産権」です。「所有権」とは、特定の物を使用、受益及び処分できる権利をいいます(民法第211条)。「知的財産権」とは、人間の思想又は感情を表現した著作物(著作権法第2条第1項)から派生する権利をいいます。このような「知的財産権」の範疇(はんちゅう)には、「著作権」、「特許権」、「商標権」など、さまざまな権利が含まれます。
では、これらの法的権利とNFTはどのような関連があるのでしょうか?
まず、NFTの権利と物の権利は衝突する場合があります。
Twitter(ツイッター)の創設者ジャック・ドーシーは、自身初のツイートでNFTを発行してオークションにかけ、ブロックチェーン企業Bridge Oracle(ブリッジオラクル)の最高経営責任者(CEO)であるシナ・エスタビによって290万ドル(約3億5,500万円)で落札されました。このNFTをエスタビが再び競売にかけたことから、再度人々の注目を集めることになりました。
では、ジャック・ドーシーのツイッターのNFT購買者は、どのような権利を持つのでしょうか?NFT購買者は当該NFTの所有者となりますが、その物に対する「所有権」や「著作権」が自動的にNFT購買者に移転するわけではないため、NFTに対する「所有権」、「著作権」が、NFT発行の前提となった物に対する「所有権」や「著作権」と衝突する問題が生じることになります。
すなわち、ジャック・ドーシーのツイッターを競売にかけたエスタビはNFTの所有者ですが、ツイッター自体を所有しておらず、ツイッターの投稿文は依然ジャック・ドーシーとツイッター社が所有・管理しているのです。このように、NFT の所有者と NFT 発行の基になる物の所有者の権限が衝突する状況が発生するのです。
したがって、将来的にはNFTの購買者が、どのような法を根拠に、どの範囲まで物の所有者の権利と衝突しない方法でNFTを利用できるのか、NFT購買者を保護する法律を通じてNFT市場はさらに活性化していきます。
また、商標権や財産権が侵害される場合もあります。
NFTが導入されたことにより、企業のブランディングや売上などと密接に関係する「商標権」も、法的な論争を免れていません。NFTアーティストのメイソン・ロスチャイルド(Mason Rothschild)は、フランスの有名なファッションブランド、エルメスのシグネチャーバッグである「バーキンバッグ」をオマージュしたNFT商品「メタバーキンス」を発行し、ブロックチェーン技術を応用したプラットフォームETH(イーサリアム)を基盤とするNFT取引所で販売したことがあります。
この「メタバーキンス」は、最大200 ETH(約1,000万円)で取引されるなど、かなりの人気を得ました。これに対して、エルメスはバーキンバッグの知的財産権と商標権を侵害されたと主張。
結局エルメスはロスチャイルドを相手取り、知的財産権侵害でニューヨーク州南部地方裁判所に提訴しました。訴訟の主な内容は、メタバーキンスの発行停止、メタバーキンス・ドットコムの ドメイン譲渡、エルメス資産の販売を通じて得た利益に対する損害賠償請求などです。
このような事例は、新しい類型の創造物であるNFTと、既存の商標権や著作権などとの法的争いが複雑化し、逆行していることを示唆しています。裁判所がどのような判決を下すのか、関心を持って見守らなければなりません。
これ以外にも、依然、多様で複雑な法的争いが生じています。「特定金融取引情報の報告及び利用などに関する法律」(特定金融情報法)は、「仮想資産は、経済的価値を有するものとして電子的に取引又は移転することができる電子証明書(それに関する権利を含む)をいう」と規定しています。
したがって、NFTが仮想資産に該当するのか、これに加え、NFTがその特性、受益の創出方法によって、資本市場と金融投資業に関する法律(資本市場法)の適用を受けるのかなどが重要な問題になり得ます。万一、この法律が適用されれば、NFTに関連する事業において、申告義務を含むさまざまな法的義務を負う、規制上の問題が発生するのです。
急速に変化する技術と並行して様々な法的問題が生じている中、文化体育観光部が主管するNFT取引ガイドラインの制定推移を見守りつつ、様々な媒体を通じ、NFT関連の争いの推移を根気強く見ていく必要があるでしょう。次回は、法律、技術などの分野でNFTがもたらす肯定的な側面について見ていくことにします。
写真:新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)でアンタクト(非対面)文化が台頭し、メタバース(仮想世界)が新しいパラダイムとして浮上した。その結果、デジタル資産の知的財産権を証明する手段であるNFT(非代替性トークン)への関心も高まっている。
投稿:CHOI&LEE法律事務所ハン・ダウン弁護士
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