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自己株式の取扱説明書 | 会計法人MILESTONEのスタートアップCFO Case Study

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【会計法人MILESTONEのスタートアップCFO Case Study】自己株式の取扱説明書

ロシアのウクライナ侵攻により、世界情勢が騒々しい最近、株式市場も揺れていますが、このような変動が長引く中、流通やゲーム、証券会社など上場会社が自社株買いに積極的に出ているという記事が連日取り上げられています。

Eマートは、先月100株の自社株を取得すると発表し、Celltrion(セルトリオン)とCelltrion healthcare(セルトリオン・ヘルスケア)、Hanwha Solutions(ハンファソリューション)もそれぞれ50万、63万、60万の自社株を買い取る方針だそうです。果たして、このような自社株とはどういうもので、これらの自社株が上場法人だけでなくスタートアップのような非上場法人にも該当する事案かどうか、見てみましょう。


自己株式とは?

自己株式または自社株とは、文字通り会社が発行した株式を、自己財産で取得し、保有していることをいいます。株主が投資し発行した株式を買い戻す行為は、資本充実の原則に反するうえに、株式売買過程で株価操作を招く可能性があるため、商法では原則的に自己株式の買い入れを厳しく制限しています。


自己株式取得理由

それでは、会社はなぜこのような自己株式を取得するのでしょうか?

最初のケースは、株主利益の還元を実現するためです。上場企業の場合、自己株式を買い取り、市中に流通する株式の量を減らすことで、株価上昇の余地が発生します。

また、会社が株価を管理し、今後株価が上昇する余力があるとみなされる場合、株価に肯定的な影響を及ぼす可能性があります。また、会社となって買い入れた自己株式を、市場に戻すのではなく焼却すると、流通株式数が恒久的に減少し、一株当たりの価値が上昇する効果が発生することがあります。

ただし、スタートアップのような非上場株式の場合、上場株式のように場内で取引が頻繁に発生し、時価が形成される形ではないため、このような理由で自己株式を取得する可能性は低いでしょう。

2つ目のケースは、RCPS(償還可能転換優先株式)の返済があります。RCPSは、投資家が優先株買収する形で投資をするが、ある時点で普通株式に転換できる転換権と、一定利率を加えて投資元金を返済することができる償還権という安全装置を持つ投資方法です。

主にスタートアップなどベンチャー企業の投資誘致でよく使われる方法ですが、もし投資家が返済権を行使した場合、会社は投資家が保有している優先株を買い取る必要があるため、自己株式が発生することになります。

3つ目のケースは、従業員のストックオプションやインセンティブ支払いのため、自己株式を取得することがあります。スタートアップのような場合、核心人材を誘致し勤続させるのが会社成長の主な原動力です。

このために、会社の株式を低価格に買い取ることができるストックオプション、あるいは株式自体をインセンティブで支給する報酬制度を導入することもあります。

事実、事業の初期には、ストックオプションなどの制度的装置ではなく、代表取締役の保有持分を譲渡または贈与する個人間取引の形で、インセンティブを支給する場合も稀にあります。

ただし、このような場合、事前に約定した勤続期間を満たせず、中途退社するなどの事由が発生した場合、また個人間取引の形態で付与した株式を回収しなければならず、これによる相当な税金を負担しなければならない場合もあります。したがって、これらの税金リスクを減らすためには、自己株式を利用したインセンティブ制度も考慮する価値があるでしょう。


自己株式の取得要件

それでは、自己株式は会社が取得しようとすればいつでもいくらでも取得できるのでしょうか?前に記述したように、自己株式の取得は、商法で規定している一定の要件を備える必要があります。

最初の要件は、会社の配当可能利益が存在する必要があります。自己株式の取得は、本質的に会社の財産を株主に返却するもので、配当と特に変わらないため、資本充実の原則および会社債権者の利益保護のため、このような制限が存在するものです。

配当可能利益は、法人の資産総額から負債総額、資本金額、資本準備金と利益準備金の合計額などを差し引いて計算します。

商法に列挙された、会社の合併、営業譲渡、債権回収などの特定目的のための場合を除き、この規定はすべての自己株式取得に適用されます。

自己株式の取引に関する判断および責任は、最終的に取締役にあり、配当可能利益を超過し自己株式を取得した場合、取締役は会社に連帯し、その差額を賠償する責任を負うことになるため、会社は自己株式取得のための財源づくりにおいて、特に注意を払わなければなりません。

二つ目は商法で定める手順を遵守します。会社は、自己株式取得できる株式の種類および数、取得価額の総額の限度、1年を超えない範囲内で自己株式を取得できる期間等について、株主総会決議で定めた後、その他詳細については、取締役会決議で定め、自己株式取得に関するすべての事項を確定しなければなりません。

以後、会社は株主総会および取締役会で定められた通り、株主に自己株式取得の案内を行い、株主の譲渡申請を受けて自己株式譲渡契約書を作成し、それに応じて株式譲渡代金を株主に支給してこそ、自己株式取得が完了となります。

このように自己株式は、スタートアップのような非上場株式会社にはおそらく目にしないテーマかもしれませんが、会社が成長するにつれて投資や人材誘致の過程で、いつでも遭遇する可能性のある問題です。

ただし、取得要件および手続きは、法に従わなければならず、取得過程で株主に発生する可能性のある譲渡所得、あるいは配当所得に対するイシューなどを検討するためには、必ず専門家のアドバイスとともに進めなければなりません。


筆者紹介:会計法人Milestone

著者ブログ:会計法人Milestone公式ブログ


原文:https://platum.kr/archives/183137

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